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拼多多が黒字化。アリババの不安が現実に。アリババが拼多多の黒字化を恐れる理由

2021年Q4で拼多多の黒字が3期連続となり、安定経営の段階に入ったことが確実となった。アリババはこの事態を最も恐れていた。淘宝網の販売業者が拼多多に流れ、淘宝網内での競争が緩和されることにより、アリババの収益力が低下をするからだと捜狐が報じた。

 

拼多多が3期連続で黒字化を達成

ソーシャルEC「拼多多」(ピンドードー)の2021年の財務報告書が公開され、多くの人が驚いた。2021年Q4は営業収入272.31億元と伸ばしながら、純利益も66.195億元となったからだ。これで3四半期連続で黒字となり、いよいよ拼多多の黒字運営が確実となってきた。

この黒字化により、研究開発費も大きく伸びている。2021年の研究開発費は89.926億元となり、昨年から30%増となっている。

拼多多はこれまで「100億補助」などの大型キャンペーンを行い、大量の資金を投入し、売上と利用者数を獲得するという戦略をとってきた。それが2021年に入り、このような大型キャンペーンが鳴りを潜め、メディアやSNSを賑わす機会は減ったものの、キャンペーン費用を支出しない分、しっかりと黒字化を達成するようになった。売上と利用者数拡大をねらう戦略から、利益を確保する戦略に転換をした。

▲拼多多の営業収入と純利益。2021年Q2から黒字化をし、3期連続の黒字となった。拼多多は安定経営の段階に入った。

 

拼多多の安定経営を恐れるアリババ

この事態を最も恐れているのはアリババだと言われる。アリババにとって、拼多多が「100億補助」などの大型キャンペーンを行っても怖くはない。拼多多の利用者が8億人を突破し、淘宝網タオバオ)の利用者を超えても怖くはない。しかし、拼多多が黒字化をすることだけが怖いと言われていた。その不安が現実になった。

 

販売業者の流出をアリババを恐れている

なぜ、アリババは拼多多の黒字化を最も恐れるのか。派手なキャンペーンで消費者を惹きつけている間は、アリババは何も怖くない。黒字化ができなければ、いずれキャンペーンも息切れをして、売上は低下をし始め、利用者も離れていくからだ。

しかし、黒字化をしたとなると話は違う。堅実な運営ができるということになり、販売業者がタオバオから拼多多に移っていく可能性があるからだ。

アリババはこの可能性を警戒して、2020年3月から「淘特」(タオター、淘宝特価版)をスタートさせている。拼多多と同じように、農産品や激安日用品を販売するECで、タオバオから拼多多に移行しようとする出品業者を逃さないための受け皿とするのが目的だ。

では、なぜアリババは販売業者の流出を恐れるのか。

▲左が拼多多、右が淘特。見た目もそっくりで、販売されている商品の価格帯もそっくりになっている。

 

タオバオ内の過当競争がアリババの収益力の源泉

アリババのEC「タオバオ」は、出店料、販売手数料とも無料だ。これにより、多くの販売業者が参加をして、タオバオはどんな商品でもあるオンラインバザールとして成功をした。しかし、これだけではアリババは1円も儲からない。そこで、アリババは有償のプロモーションを行う。出品業者がお金を払って、タオバオ内に広告を出したり、キャンペーンに参加をしたり、検索順位を上げてもらう。これがタオバオの収益源になっている。

出品業者がなぜこのような費用を払うかと言うと、それはタオバオ内が出品業者の激しい競争状態にあるからだ。タオバオに参加をしてただ商品を出品しただけでは、よほど目立つ商品でもない限り売れない。検索をしても下位にしか表示されず、広告も出さなければ、消費者から存在を認知してもらうことができない。この過剰な競争状態にあることが、プロモーション費用を支出することにつながり、それがアリババの強力な収入源となっている。

しかし、出品業者が拼多多に流れ、タオバオの競争状態が緩和をされると、出品業者のアリババに対する支出圧力は弱くなる。アリババはこれを恐れている。

 

ECビジネスは公域流量から私域流量へと移り始めている

ネットサービスは、極論をすればトラフィックの奪い合いだ。多くのトラフィックを集めた人が勝つようにできている。アリババは、出店料、販売手数料を無料にするという手法で、大量の出品業者を集め、それが「なんでも売っている」状態を生み出し、多くの消費者を惹きつけ、大量のトラフィックを獲得することに成功した。

アリババの仕事は、この獲得した大量のトラフィックを販売業者に分配をすることだ。ここがお金になる。アリババはそれで急成長をしてきた。

出品業者から見て、このような分配をしてもらう他人のトラフィックは、「公域流量」(パブリックトラフィック)と呼ばれる。検索エンジンからの流入なども公域流量だ。今まで、中小の販売業者は、自分でトラフィックを獲得する力がないため、このような公域流量に頼ってビジネスをせざるを得なかった。

しかし、今では、中小販売業者でも自分でトラフィックを獲得することが可能になっている。SNSとショートムービーの活用だ。独自の情報を発信し、消費者を惹きつけることで、ダイレクトにトラフィックを集めることが可能になっている。このような自分で集めるトラフィックは「私域流量」(プライベートトラフィック)と呼ばれる。

拼多多はSNSで消費者自身が共同購入を誘うという私域流量に基づいたECになっている。SNSやショートムービーに発信をして、自力で私域流量を集めてビジネスを進める販売業者も現れている。

つまり、アリババの公域流量分配型のビジネスモデルが金属疲労を起こし始めているのだ。拼多多が黒字化をして、経営が安定すると、ますます販売業者が安心をして拼多多に流れる可能性が生まれている。アリババにとって、最も恐れている事態が始まろうとしている。