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タピオカブームは完全終了。コロナ禍で経営に苦しむ中国茶カフェチェーン

コロナ禍により、人気だった中国茶カフェチェーンが軒並み経営が苦しくなっている。消費者心理が、ブランドからコストパフォーマンスを求めるようになり、どのチェーンも店舗面積の縮小、販売価格の値下げに踏み切り、競争力を高めようとしていると南都週刊が報じた。

 

コロナ禍によって経営が苦しくなった中国茶カフェ

「喜茶」(シーチャー、HEY TEA)、「奈雪的茶」(ナーシュエ)、「茶顔悦色」(チャーイエンユエスー)、「楽楽茶」(ラーラーチャー)といった、コロナ禍前に流行した中国茶カフェが、いずれも苦しんでいる。

茶顔悦色は2021年末に87店舗を閉店して、給料の一部カットを行った。コロナ禍期間、毎月2000万元の赤字であったことが原因だ。

奈雪的茶も2021年の損失が1.35億元から1.65億元になるという見通しを発表し、投資による成長段階でもあったことから2018年から3年連続で赤字となった。

喜茶は大規模なリストラを行い、全従業員の30%を解雇する。さらに、商品の大幅な値下げに踏み切った。年内に価格を調整し、29元以上のメニューをなくし、60%以上のメニューを15元から25元の価格帯に収める。

さらに、楽楽茶は広州市の店舗を閉鎖することを発表し、これで楽楽茶は華南地区から完全に撤退をすることになる。喜茶は楽楽茶を買収する計画を進めていたが、これも中断となった。

2017年から中国茶をアレンジした中国茶カフェが人気となり、店舗によっては3時間、4時間待ちの行列ができるほどのブームとなった。しかし、2021年はどのチェーンも値下げとリストラに踏み切っている。好調だったブームを一転させたのは新型コロナの感染拡大だ。

▲喜茶のドリンク。クリームチーズとフルーツが入った中国茶で、味わいも見た目もそれまでにない斬新なものであったことから爆発的な人気となった。

▲2017年からコロナ禍前までは、中国茶カフェが大人気となり、喜茶には4時間、5時間待ちの行列ができるのが当たり前の状況が生まれた。

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出店ペースが過剰になっていた奈雪的茶

王さん(仮名)は、マクドナルド、奈雪的茶の店長を務め、現在はレモンティーチェーンの店長を務めている。王さんは次のように状況を説明する。

2019年に奈雪的茶の店長をしていた時は、新製品の投入は意外に多くありませんでした。人気の商品が長く売れたからです。奈雪的茶の人気商品は、チーズストロベリーティーで、2019年5月1日には私の店でも500杯が売れ、広州万菱匯店では700杯以上が売れました。

奈雪的茶は品質管理に厳しいチェーンで、店長の評価も店舗業績よりもQSCの達成度が重要視されていたほどでした。品質上の問題を起こすと、その月は報奨金の半分がカットされ、翌月には減給、その翌月には配置転換となります。

当時はものすごい勢いで新店舗を展開していたため、新店舗の出店が、既存店の売上にも大きく影響しました。本部は店舗数を多くして市場シェアを取ろうとしているため、カニバリズムが起こり、一店舗あたりの売上は下がってしまうのです。

▲奈雪的茶では、スイーツの販売に力を入れている。店内での客単価を上げるだけでなく、パッケージ販売による売上もねらっている。

 

原価率が非常に低い中国茶ドリンク

私はさまざまな飲食チェーンで働いてきましたが、中国茶カフェは最も参入しやすいビジネスだと感じています。利益率が非常に高い商品なのです。85%から90%にもなります。中国茶の原材料は安く、あとはパッケージぐらいしかお金がかかりません。調理も誰でもできる簡単さで、見た目と味がネットで評判になり、価格さえ適切であれば、面白いように儲かるビジネスなのです。

決め手になるのは人気商品の開発で、独自の供給元、独自の原材料を見つけることができれば大きな商機に恵まれます。

 

消費者の関心はブランドから価格へ

この仕事に関わってきて、コロナ禍により消費者の心理が大きく変化したことを感じます。以前はブランドを重視しましたが、現在は価格を重視するようになっています。以前は健康や生活の質を重視しましたが、現在はコストパフォーマンスを重視するようになっています。そのため、安くて美味しいチェーンに消費者が流れています。奈雪的茶や喜茶などの高級志向のチェーンも10元台の低価格商品を発売し、生き残りを図るようになっています。

中国茶ドリンクを中価格帯で販売し、若い世代の間で人気となった茶顔悦色も、大量閉店に踏み切っている。

 

サードプレイス感覚が欠けている中国茶カフェ

ジェームズさん(仮名)は、以前はスターバックスの店長を務め、某中国茶カフェの店長となった。

現在私が務めている中国茶カフェチェーンは、スターバックスを目標にしてサードプレイスを構築しようとしてきました。しかし、スターバックスのサードプレイスは他のチェーンとは大きな違いがあります。それは顧客とつながるということです。コーヒーの試飲会やドリップ教室などをたびたび開催して、リピーターをつくり、顧客の粘性を高める活動をしてきました。

現在私がいる中国茶カフェでは、顧客に快適な空間を提供し、質の高い接客はしていますが、顧客とつながるというスターバックスのような視点はありません。私がスターバックスにいた頃は、58元、68元という価格で提供をしていました(現在は30元程度)。それはコーヒーを販売しているだけでなく、コーヒー文化も販売しているという自負があったからです。コーヒーを通じて、コーヒー文化を楽しんでもらう。それがサードプレイスでした。中国茶カフェにはこの感覚はありません。

スターバックスの上海の高級業態「リザーブ・ロースタリー」。焙煎工場が併設され、焙煎したてのコーヒーを楽しむことができる。コーヒー教室なども随時開催され、コーヒーのテーマパークとなっている。

 

店舗面積の縮小と低価格競争

中国茶カフェは、大型店舗を増やすことに力を入れました。しかし、大型店舗は赤字幅も大きくなります。大型店の展開が難しくなり、標準店舗をPro店舗と名称を改め、面積を縮小して、コストを下げるようになっています。それでも、以前の売上を上回る店舗が現れ、この傾向が進んでいます。

この中国茶カフェチェーンは、いまだに黒字化ができていません。コロナ禍の影響も大きいですが、大きな要因は出店ペースが早すぎて、投資金額が膨らんでいたことです。今年になって、コストを抑えたPro店への転換を始めたことで、年内には黒字転換が望める状況になるのではないかと思います。

もうすぐ中国茶カフェにとっては掻き入れ時の夏がやってきますが、問題は週に1回は私たちのカフェにきてくれたとしても、残りの6回はより低価格のチェーンに行ってしまうのではないかという不安です。今年の中国茶カフェ業界は、低価格競争が厳しくなりそうです。

 

初期投資が小さい地方都市で成功する中国茶カフェ

温朔さんは、中国茶業界で10年働き、桂林の中国茶ブランド「茶満久伴」を創業した。

大学2年生の時、「大卡司」(ダーカースー)、「快楽檸檬」(ハッピーレモン)などのドリンクチェーンに注目をしました。それで2012年にある中国茶カフェのチェーンのフランチャイズに加盟をし、2016年には杭州市で自分の中国茶カフェを開業しました。2018年からは「19TEA」で2年働き、現在は自分の中国茶ブランド「茶満久伴」を創業しました。

桂林の1号店は2021年6月に開店をしました。出店コストも人件費も抑えられ、すでに黒字化をしています。6ヶ月から8ヶ月で初期投資を回収することができました。

地方都市の店舗はコストが抑えられるため、経営のプレッシャーは低いため、すぐに2店目を開業し、3月からは3店目の開店準備に入っています。それが終われば、4店目の開店準備に入ります。

▲桂林で温朔さんが創業した中国茶カフェ「茶満久伴」。地方都市では初期投資が小さく済むので、中国茶カフェはまだじゅうぶんにビジネスになる。ただし、高価格帯の中国茶ドリンクは売れないため、価格帯の調整が必要になる。

▲茶満久伴のテイクアウトセット。地方都市でも、グッズのデザインに気を使い、ブランドのイメージを形成することが成功につながるという。

 

タピオカミルクティーのブームは終わった

桂林では、大手の中国茶カフェチェーンがあまり進出してきていません。奈雪的茶、喜茶の店舗は少なく、激安ドリンクチェーン「蜜雪氷城」が人気です。大手チェーンは価格が高すぎて、三線、四線都市ではあまり競争力がないのです。

中国茶カフェにとって重要なのは、やはり商品そのもので、その商品をブランドの文化といかに調和をさせるかがかぎりになります。商品の名称、パッケージ、サービスなど、すべてが商品と調和をしていることで、ブランドが浸透し、リピートしてもらえるようになります。

コロナ前のような過剰な中国茶カフェブームはもうこないと思います。あの頃は、大手チェーンには長い行列ができ、無数の新規参入カフェが出現しました。コロナ禍により、損を出すべきチェーンは損を出し、業界が整理をされ、私としては業界の発展にとってよかったのではないかと思います。タピオカミルクティーのブーム以降、業界人はみな浮かれていました。それがコロナ禍により、地に足が着くようになったと思います。

▲地方で圧倒的な強さを誇る蜜雪氷城。ソフトクリームは3元、レモン水は4元という安さで、学生が学校帰りによる店になっている。地方都市を中心にすでに2万店を突破している。

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