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中国を中心にしたアジアのテック最新事情

ホンダの牙城バイク王国ベトナムでも、バイクの電動シフトが始まる。日中メーカーの競争が激化

ベトナムのバイク市場の8割はホンダが占めている。しかし、そこに中国企業電動バイクでシェアを取り始めている。ベトナムもバイクの電動シフトを初めており、電動バイクの領域で日本メーカーと中国メーカーの競争が始まっていると正解局が封じた。

 

バイク王国のベトナム

ベトナムバイク王国だ。「恋人はいなくても生きていけるが、バイクがなければ生きていけない」とまで言われるほどで、人口は1億人であるのに、バイクの保有量は4500万台を超えている。成人では、2人に1台以上がある計算になる。ベトナムの国土の3/4は山地丘陵であり、都市部は道路が狭いため、自動車よりも小回りの効くバイクが好まれる。

ベトナムバイク王国。保有台数は成人2人に1台以上になる。道路が狭いため、バイクの方が使い勝手がいいのだ。

 

中国バイクvs日本バイクの攻防

ベトナムのバイク市場は、日本メーカー、特にホンダの牙城とも言えるものだった。日系ブランドで市場の98%を占めていた。ところが、1999年に中国企業が進出を始め、一気に市場のシェアを奪っていった。

中国バイクは、日本のバイクと比べても品質や性能で見劣りはせず、それでいて価格は半分ほどなので、あっという間に市場に浸透をした。中国バイクのシェアは80%にまで高まった。

しかし、中国バイクはここから自滅の道をたどる。今度は中国バイク同士での競争が激化をし、多くの中国企業ベトナム国内に生産拠点をつくり、過剰な低価格戦略が始まった。しかし、それは必然的に品質低下を招き、もともと安かった中国バイクの価格は2年ほどでさらに半分以下になった。

これは安価なバイクを求めているベトナムの消費者も許容ができない品質低下ぶりだった。これにより「中国のバイクは安いけど、壊れる、危ない」という評判が広がり、次第に日本バイクへの回帰が始まった。

赤字覚悟でシェアを取りにいっていた中国バイクは、経営が維持できず、次々と撤退を始めた。結局、残ったのは安心できる日本バイクだった。

現在、人気のバイクブランドは「ホンダ」「ヤマハ」「台湾三陽」「スズキ」「ピアッジオ」となっている。特に強いのはホンダで、シェアは80%を超えている。

▲バイクは価格が安いため、若い世代は自動車よりもバイクを購入する人が多い。

 

中国は電動バイクで再挑戦

ところが、2023年、状況が少し変わってきた。再び、中国企業の進出が始まったのだ。2023年、バイクの販売台数は278万台と前年比で17.9%も下落をした。ホンダも19.8%減と厳しい状況になっている。

一方、伸びているのが中国「雅迪」(Yadea、https://www.yadea.com.cn/)、ベトナム「VinFast」(https://vinfastauto.com/en/)などの電動バイクだ。電動バイクは全体のまだ1/10以下だが、バイク全体の販売が下落する中で、各社30%程度の増加を示している。

▲雅迪は電動バイクの生産工場をベトナムに建設し、本腰を入れてベトナム市場に参入した。

▲雅迪の販売店電動バイクは、まだバイク全体の1/10程度の割合だが、燃料バイクに対する優位性が高く、今後一気に普及をしていく可能性がある。

 

ベトナムバイクも電動シフトが始まっている

2021年に開催された「第26回気候変動枠組み条約締結国会議」(COP26)で、ベトナムも2050年までにカーボンニュートラルを実現することを約束した。この時までに、すべての自動車とバイクをグリーン電力またはCO2を排出しないゼロエミッション燃料に変えるという内容だ。

また、その前段階として、ホーチミン市では2025年、ハノイ市では2030年に、燃料バイクの市内への乗り入れを禁止するという目標を掲げた。つまり、今、都市部の人がバイクを買うのであれば電動バイクを買うしかないのだ。

電動バイクは価格、維持費などが圧倒的に安くなる。また、現在、運転免許書が不要であるという点も大きい。このため、一気に電動バイクが普及すると見られる。単位:万ドン。

電動バイクは、航続距離と充電時間にまだ課題が残るため、計画に使われる配達系の企業での採用が中心になっている。写真はベトナム郵政が導入したホンダの電動バイク「Benly e」。

ベトナム企業のVinFast製の電動バイク「Evo」。地元企業も電動バイクに参入し、日中ベトナムの三つ巴の競争が始まっている。

 

電動バイクで日本と中国の競争が始まっている

電動バイクの欠点は航続距離だ。満充電で100kmから200kmであり、充電には3時間以上かかる。市内を走行するのであればじゅうぶんな距離であり、寝ている間に充電をするのであれば問題はないが、郊外を長距離走る場合には充電スポットの位置を確かめるなど工夫が必要になる。

しかし、それ以外のコストは圧倒的に電動バイクが安くなる。このことから、電動バイクを選ぶ人が増え始めている。

ホンダ、ヤマハ電動バイクの発売を進めている。ホンダはベトナム市場では、郵便や宅配などの商用電動バイクを発売している。ヤマハもすでに電動バイク「Neo’s」をベトナムで発売している。

電動バイクは、ベトナム市場で、中国系と日系の激しい競争が起こりそうだ。