インドの人口が中国を抜き世界一となった。今後、経済的にも成長することが予測され、中国にとっても大きなライバルとなることは確実だ。中国人は、インドの3つの強みを警戒している。それは、ジェネリック医薬品、映画、IT産業だと林軽吟が報じた。
インドが人口で中国を抜く
2023年4月、インドの人口が中国を上回り、インドは世界で最も人口の多い国となった。すでに人口ボーナス期に入り、経済も成長していくことが明らかで、中国でもインド経済に注目をする人が多くなっている。中国はすでに安定成長に入っているため、経済で中国がインドに抜かされることもあるのではないかと見られるようになっているからだ。
PwCが2050年の経済規模を予測したレポート「The World in 2050」(https://www.pwc.com/gx/en/research-insights/economy/the-world-in-2050.html)でも、2050年の経済大国は、中国、インド、米国、インドネシア、ブラジルという順位になっている(購買力平価ベースのGDP)。
一人っ子政策により人口ボーナス期が早く終わった中国
しかし、中国人にはひとつの懸念がある。それはインドの現在の状況は、中国の改革開放が始まった1978年の状況によく似ているが、異なる点がいくつかある。当時の中国はひとりっ子政策に代表される人口抑制策をとっていたことだ。そのため、人口ボーナス期が早く終わってしまった。
一方、インドはそのような人口抑制策をとっていないため、人口ボーナス期が長く続くと見られている。インドの成長期に中国は安定成長期、あるいは衰退期に入る可能性もあり、中国とインドの関係にも大きな変化が生まれることが懸念されている。
インドの強みその1:ジェネリック医薬品
しかも、人口以外に、インドには評価すべきことが3つあるという。
ひとつはジェネリック医薬品だ。インドでは海外の医薬品を模倣して、ジェネリック医薬品を製造する産業が盛んだ。その中には、当然ながら、知的財産権を無視したようなものもある。
しかし、インドのジェネリック医薬品は、低価格であり、しかも近年は品質も向上してきている。インドの地方の生活環境は劣悪な地域もあり、多くの人が病気に苦しんでいるが、貧困のため、病院に行くこともできず、医薬品すら手に入れることができない人々がいる。ジェネリック医薬品は、このような人たちに福音となった。各国も人道的な見地から、知的財産権の問題を強く言えない状況があった。
現在は、インド政府がジェネリック医薬品に関する協定を各国と結ぶようになり、インドの医薬品製造産業は急速に整頓され、規模を拡大している。すでにアジア圏では、医薬品を買いにインドに行く人が珍しくなくなっている。
この分野では、すでに中国と同等か超えている部分もあり、中国のジェネリック医薬品業界でも無視できないという見方が広がっている。
インドの強みその2:映画産業
2つ目は、映画、テレビドラマ産業だ。いわゆる「ボリウッド映画」で、国も後押しをし、国内に娯楽を提供するだけでなく、海外に輸出をして外貨を稼ぐ戦略産業として位置づけている。
中国も「流浪する地球」「三体」などのSF映画の分野で、海外輸出を始めているが、世界の娯楽産業に対する影響力という点ではインドに劣っており、中国も映画、ドラマの海外展開を加速する必要があるという。
インドの強みその3:IT産業
3つ目はIT産業だ。科学技術分野ではインドはまだ中国に追いついていないが、産業応用が中心となるIT分野では、中国と同等か、部分的には中国を凌駕していると考えるべきだという。
中国の場合は、国際関係の問題から、IT産業の市場は国内か東南アジアに限られてしまうが、インドの場合はグローバルに展開ができている。幼い時から、准公用語とも言える英語に慣れているという点も大きい。
すでに優れた人材を生み出していて、米国の主要テック企業のCEOはインド人が多くなっている。シリコンバレーで働くエンジニアも、米国人、中国人に次いでインド人が多くなっている。インドのIT産業はまだ体制に問題があるため、海外に留学をした優れた人材が海外に留まり、そのままテック企業に就職をする傾向があるが、インドのIT産業が成長するとともに、このような人材がインドに帰国をする例が増えていくことになる。その時、インドのIT産業は大きく発展をすることになる。中国にとっては、強力なライバルになることは確定的だ。
中国はこれまで巨大な国内市場と、東南アジアに影響力を持つことで発展をしてきた。しかし、インドがもうひとつの極に成長をすると、中国は非常に難しい立場に追い込まれることになる。インドとは国境紛争など政治面ではさまざまな課題があるが、産業面では友好的な関係を築き、フェアな競争をして、互いに高め合う環境をつくっておくことが何よりも重要だとしている。