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中国排斥のインドで、シャオミのスマートフォンが売れる理由

インドが国内産業保護のために、中国製品の排斥を始めている。アプリの使用禁止、関税の引き上げ、輸入基準の厳格化、海外からの投資の許可制などで、国内産業が成長する空間を確保しようとしている。しかし、その中でもシャオミのスマートフォンはインド市場で最も売れているスマホになっている。その理由は現地化戦略にあると股権商業之道が報じた。

 

中国製品排斥を進めるインド政府

中国製品排斥が続くインド。6月29日には、インド政府は、Tik Tokを含む中国製アプリ59種類を使用禁止にした。国境での中印衝突がきっかけになっているが、このような「中国アプリ排除」は以前からたびたび行われている。理由はさまざまだが、その根底にあるのは国内産業の保護だと見られている。

インドには、中国の電子製品、日用品が大量に流入し、投資も盛んに行われている。このままでは、中国企業がインドで支配的になり、インド企業が成長する空間が奪われてしまう。4月には、隣接国からの投資は政府の許可を義務付ける規制が施行された。あくまでも隣接国からの投資だが、中国を標的にしていることは明らかだ。

 

中国排斥の中で売れているシャオミのスマホ

しかし、その中で、小米(シャオミ)のスマートフォンは売れている。調査会社CounterPointのデータによると、シャオミは2017年第4四半期にシェアでサムスンを抜き、以来、インド市場でのトップシェアを維持している。この統計に出てくるvivo、Realme、OPPO、ファーウェイはすべて中国メーカーで、インド地元のMicromaxは2019年から「その他」に含まれてしまい、市場シェアリストから名前が消えている。

インドは、中国の次に「ミーファン」の多い国であるともいわれる。なぜ、シャオミは中国企業であるのに、インドで歓迎されているのだろうか。

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▲シャオミは、2017Q4で、インド市場トップのサムスンを抜き、それ以来、インドで最も売れているスマホの地位を保ち続けている。政府は中国製品を排除しようとしているが、現地生産化を進めることでシェアを維持している。

Counterpointのデータより作成(https://www.counterpointresearch.com/india-smartphone-share/)。

 

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▲シャオミのスマホは、2017年後半より、インド市場でのトップの地位を保ち続けている。

 

シャオミが進める現地化策。シャオミは準国産

その理由は、シャオミがインド進出にあたって現地化戦略をとったことにある。インド政府の意向に耳を傾け、中国から輸出をするのではなく、インド向け製品はインド国内で製造する方針をとった。

シャオミはその方針を広告にも活かし、中国製品ボイコットの声が高まると「Made in India」「Mi from India」のコピーを使うようになっている。シャオミによると、75%の部品もインド製造のもので、それをインド国内で組み立てた製品であると説明されている。

シャオミは現地法人を設立した時も、少数の中国人は派遣されているものの、原則的に現地のインド人を雇用している。インド人が多く働く会社が、インドの工場で作ったスマートフォンであることから、多くのインド人が「準国産品」と考えているのだという。

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▲インドのシャオミショップにはテック好きの若者が集まる。現地生産を進めるシャオミのスマホは、彼らにすると「準国産」に映るのだという。

 

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▲インドのモディ首相と会談するシャオミの雷軍CEO。シャオミはインド政府と協調しながら、現地生産を進めている。

 

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▲インドのシャオミショップのオープンセレモニーに参加する雷軍CEO。シャオミにとって、インド市場はスマホスマートテレビなどで重要な市場になっている。

 

他企業も進めるインド現地化戦略

インドでは、シャオミのスマートテレビも好調に売れている。多くの中国企業が、インドでのビジネスに苦戦をする中で、好調を維持しているシャオミの雷軍(レイ・ジュン)CEOの手腕に注目が集まっている。

インド政府は、電子製品などの輸入の基準厳格化、関税引き上げを進めていて、海外企業は輸入する形式ではビジネスが成立しづらい環境になりつつある。そのため、インド向け製品はインドで生産するというシャオミの地産地消戦略が有効になっている。

アップルも、EMSのホンハイのインド工場の運営が暗礁に乗り上げていたが、再びインド工場での生産に再チャレンジしようとしている。インド向けiPhoneをインド工場で生産し、関税や輸入のコストを削減するのが狙いだ。

インドでは、今後も、このような現地生産化を進める企業が増えていくと見られている。