中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

インドネシアで苦戦をするアリババ。発想力で抵抗する地元系スタートアップ

まぐまぐ!」でメルマガ「知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード」を発行しています。

明日、vol. 069が発行になります。

 

今回は、インドネシアのEC事情についてご紹介します。

中国のテックやビジネスをご紹介するメルマガで、なんでインドネシアなのか?と不思議に思われる方もいるかと思います。しかし、インドネシアは、今中国で最も注目されている海外市場なのです。

中国のサービスには、優れたもの、先端のもの、オリジナリティーの高いものがたくさんありますが、実は巨大なガラパゴスになっていて、海外に出て行くものは多くありません。例外は、TikTokぐらいですが、これも中国版の「抖音」(ドウイン)と海外版であるTikTokを分けてリリースしています。今ではよく知られるようになりましたが、少し前まではTikTokが北京にあるバイトダンスが開発したものだということを知らずに使っていた人が大半でした。

スマホゲームの世界は、AppStore、GooglePlayという国際的に流通する仕組みが整っているため、中国製ゲームも、それと知らずに世界中で遊ばれている例はありますが、生活系サービスとなると、ほとんど例はありません。

意外にも、中国のテック企業は海外進出が苦手という日本企業と同じ弱点を持っています。もちろん、国内市場が巨大であるため、海外に目が向かいづらいということはあるかと思います。

 

しかし東南アジアは別です。東南アジアには、華人(地元国籍の中国人)も多く、中国文化は東南アジアの文化に大きな影響を与えているため、感覚的に共通するものがあります。

一方で、中国の人口ボーナス期はもはや終わりました。若い世代の人口が増加をしている状態が人口ボーナス期で、この時期は、日本の高度経済成長の時期がそうであったように、当たり前のビジネスを展開するだけで、年々成長していけるという時期です。市場が自然に拡大をしていくのですから、企業の業績も上がっていきます。

ところが、中国ではこの人口ボーナス期は終わり、若い世代の人口が減少をする人口オーナス期に突入しました。こうなると、当たり前の企業活動をしていたら、市場が縮小していくのですから、企業業績は悪化をしていくことになります。

そこで、海外市場に進出をして補う必要があり、人口ボーナス期を迎えている東南アジアが注目されているのです。

f:id:tamakino:20210424125159p:plain

▲中国の人口ピラミッド。50歳前後のボリューム層が中国の経済成長を支えていた。現在の30代前半のボリューム層が50歳になると、中国の消費需要は大きく下がることになる。PopulationPyramid.netより引用。

 

アリババはすでに2016年に、シンガポールを拠点として東南アジア各国でECサービスを展開するLazada(ラザダ、https://www.alibaba.co.jp/service/lazada/)を買収して、ECサービスを展開しています。ラザダでは、中国と同じように11月11日には、大規模な割引セールを行います。

また、Tokopedia(トコぺディア、https://www.tokopedia.com)には、アリババとソフトバンクが投資をしています。一方、Shopee(ショッピー、https://shopee.com)には、テンセントが投資をして、競い合っています。さらに、地元系のBukalapak(ブカラパック、https://www.bukalapak.com)も有力です。さらに、ここにバイトダンスがTikTokを使ったECサービスをこの4月から始めています。

このように東南アジアでは、アリババとテンセントを中心にした投資と技術支援が盛んで、それに地元系企業が対抗をしているという形になっています。

これは、20年前に中国で起きていたことと似ています。アマゾンとeBayが、中国のECサービスを買収する形で中国市場に参入し、それに対抗したのが創業直後のアリババでした。アリババは、米国の巨人を辛抱強く跳ね除け、最終的に中国のECサービスを支配しました。

それが、今度は東南アジアのECサービスを支配しようとして、地元系サービスに抵抗をされています。

 

この主戦場になっているのがインドネシアです。インドネシアを制するものは、東南アジアを制するとまで言われます。本社は、環境の整っているシンガポールに置き、ビジネスはインドネシアで行う。それが東南アジアビジネスの基本形になっています。

なぜ、インドネシアかというと、市場として魅力がありすぎるからです。あまりにも理想的な消費市場で、ここ20年ほどは、アジアではインドネシア市場が重要視される時代が続くことになるのは間違いありません。

ひとつは人口が2.7億人もいるということです。それだけではありません。インドネシアの奇跡は、人口の半分が30歳以下という若い国なのです。おそらく、インドネシアの人に少子高齢化などと言っても、理解できなくてキョトンとされることでしょう。若者が多いので、新しいテクノロジーやサービスに対する受け入れも早く、現役世代なので消費もする。市民の平均月収も2.5万円程度になってきました。まだまだ購買力が強いとは言えませんが、東南アジアは現在でも経済成長中です。成長することは間違いのない市場なのです。

一定以上の購買力のある人口規模を見た有効消費者数で言えば、インドネシアはすでに日本よりも大きな市場になっているかも知れません。何しろ、30歳以下が1.3億人もいて、日本の人口よりも多いのです。

f:id:tamakino:20210424125205p:plain

f:id:tamakino:20210424125201p:plain

インドネシアと日本の人口ピラミッド。対比をすると、インドネシア市場の魅力がよくわかる。人口の半分が30歳以下という奇跡のような国。PopulationPyramid.netより引用。

 

ところが、まだまだ製造業は弱く、国内でじゅうぶんな量と品質の製品を製造することができません。つまり、中国企業にとっては、中国製品を売り込むチャンスなのです。

また、金融関係も面白い特徴があります。銀行口座を持つ人がまだ少ないのです。世界銀行の統計によると、15歳以上の銀行口座保有率は48.9%でしかありません。その一方で、スマートフォン保有率は65%程度と、日本よりもわずかですが高くなっています(日本は20代、30代はほぼ100%に近いが、50代以降の保有率が極端に小さい)。

こう並べると、アリババが目をつける理由が、お読みになられている方にはピンとくるのではないでしょうか。アリペイそのものであるかどうかは別にして、スマホ決済を普及させ、そこでECを始めとしたさまざまな新小売サービスを展開していくことができます。

アリババはその事業ドメインから、インドネシアに目をつけないということはあり得ません。インドネシアを足掛かりに、東南アジア全域にアリババのサービスを広げようとしています。

 

ところが、インドネシアというのは、若い国であるために、思ったよりイノベーションが起こる国でした。地元のEC企業、テック企業が強く、アリババも思わぬ苦戦をしているのです。

アリババの創業者、馬雲(マー・ユイン、ジャック・マー)は、信頼の厚いポン蕾(ポン・レイ)をラザダのCEOとして送り込みますが、そうとうな苦労をしたようです。その理由を一言で言えば、中国流を押しつけたため現地スタッフの反発を招いたということです。その隙に地元サービスが躍進をしてしまいました。まさに、日本企業の海外進出失敗のパターンと同じです。

東南アジアは経済や技術のレベルも低いと舐めてかかると、痛い目に会うという典型例です。少し事情は違いますが、ライドシェアのウーバーも東南アジア発のグラブに対抗することができず、結局撤退をしています。巨人アマゾンもインドネシアではサービスが提供できていません。

インドネシアは、東南アジアでいちばん魅力的な市場ですが、最も攻略が難しい市場になっているのです。

今回は、どのようにして中国企業が、インドネシア市場を攻略しようとしているのか、そして、インドネシア市場攻略のどこに難しさがあるのかをご紹介します。

 

続きはメルマガでお読みいただけます。

 

毎週月曜日発行で、月額は税込み550円となりますが、最初の月は無料です。月の途中で購読登録をしても、その月のメルマガすべてが届きます。無料期間だけでもお試しください。

 

今月発行したのは、以下のメルマガです。

vol.066:ネットの中心はテキストからショートムービーへ。始まりつつある大変化

vol.067:ビジネスとして成立をし始めたeスポーツ。老舗企業も注目する新たなコンテンツ産業

vol.068:私域流量を集め、直販ライブコマースで成功する。TikTok、快手の新しいECスタイル

 

登録はこちらから。

https://www.mag2.com/m/0001690218.html