昨年の夏、ヒットゲーム「原神」が多数の企業とのコラボを行った。原神は課金圧の低いゲームでそれがヒットの要因のひとつにもなった。そのため、収益性を高めるために企業コラボが必要になっていると鈦媒体が報じた。
企業コラボが連発されるヒットゲーム「原神」
米哈游(miHoYo、ミホヨ)のヒットゲーム「原神」が企業とのコラボを進めている。しかし、その頻度が半端がない。特に夏は、3か月の間に13社とのコラボキャンペーンを展開した。
特に多くの人が驚いたのが、9月16日のキャンペーンで、同じ日に招商銀行、キャデラック、アリペイと3つもの企業とのコラボキャンペーンが行われた。ネットでは、「原神は、招商銀行に口座をつくり、それにアリペイを紐付け、キャデラックを買わそうとしている」と揶揄された。
ゲームの中に生活があり、企業コラボがしやすい
なぜ、原神は企業とのコラボが多いのか、その理由はゲームの中で生活が再現されているからだ。
原神は、アクションRPGで、ゲームの中で現実と同じ生活が行われる。キャラクターたちは、街に行き、食事をとり、買い物をし、服を着替える。乗り物にも乗る。ゲームの中で生活の要素が再現をされているため、生活関連の企業とコラボがしやすい。
衣食住行の人間の基本行動の中で、住を除いて、衣食行のすべてでコラボが行われている。住に関しても、ホテルやマンションなどのコラボが行われても不思議ではない。
海外でも、シンガポール、クアラルンプール、マレーシア、マニラ、フィリピンなどの観光名所、ニューヨークのクイーンズセンター、ロンドンのウォータルー駅などでコラボが行われている。
ウォータルー駅では、原神の中に登場するワープポイントのオブジェが設置をされ、旅行を促すキャンペーンが行われた。
課金圧を低くし、企業コラボで収益を得るモデル
なぜ、原神はここまで多くの企業とコラボをするのだろうか。一部のファンからは、金儲け主義との批判の声も上がっている。
しかし、原神は元々課金圧の低いゲームで、いっさい課金をしなくてもそこそこ遊べる。一般的なRPGでは、課金をしないとキャラクターの成長が遅くなり、なかなか先に進めないが、原神では課金をしなくてもバトルの仕組みを理解したり、操作に慣れることで先に進むことができる。これが「課金を強制しない誠実さ」と「自分の腕前で突破をする達成感」をもたらしている。
これにより、原神は人気ゲームとなり、SensorTowerの推定によると、発売後2年で264億元(約5200億円)を稼ぎ出した。これは東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドの2021年の営業収入2757億円に匹敵する。
しかし、それは発売後2年経ってもダウンロードランキング上位に入り、累計ダウンロード数が1億1500万件以上という利用者数の多さによるもので、投資効果として考えると、収益はモバイルゲームの中でも中程度でしかない。原神よりも広がりの小さなゲームでも、ガチャなどを多様して課金圧を高めたゲームの方が、営業収入/人は高く、投資効果の高いゲームがいくらでもある。
そのため、原神は、最初から、企業とのコラボをして、収益を補うビジネスモデルになっていた。それがゲームのヒットにより、大量のコラボ案件が生まれているということになる。
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企業コラボはゲームの社会的地位も向上させる
miHoYoがどう考えているかはわからないが、ゲームファンの間では、原神は「オタクは世界を救う」の企業スローガンを遂行するために企業コラボを次々と行っているのだと主張する人がいる。
中国ではゲームのメディアとしての地位が非常に低い。一昨年の2021年8月には国営メディア「新華社」傘下の経済参考報が「精神アヘンが数千億元の市場に成長」という記事を掲載し、ゲームを電子薬物として批判をした。そして、ゲームの内容審査が厳格化をされ、さらにオンラインゲームは未成年は週末数時間程度でしか遊べないようにする規制が行われた。
ゲームは、時間の無駄であるばかりでなく、未成年には学業の妨げとなり、社会人には経済活動の妨げになると見られている。
miHoYoは、ゲーム開発ではなくアニメ制作をするために創業された。それがゲームに転換をしたのは、ゲームがACGN(アニメ、コミック、ゲーム、ノベル)を統合した総合コンテンツだということに気がついたからだ。
miHoYoはゲームというコンテンツの地位を高めるために、企業コラボを行い、実体経済にゲームが役に立つことを証明し、ゲームの地位を高めようとしているのだとゲームファンの間では語られている。
事実、原神とコラボをした企業は、キャンペーンにより投資効果をはるかに上回る利益を得ており、原神は実体経済に確実に影響を与えつつある。ゲームファンたちの主張も、あながち間違えとは言えないレベルの影響を持ち始めている。