インターネットの大変革となる可能性が高いウェブ3。そのすべての始まりは、ナカモト・サトシのブロックチェーンだが、そのブロックチェーンには先駆的提案であるb-moneyがあった。その提案者であるダイ・ウェイも正体不明だと品玩が報じた。
ウェブ3の起点となった謎の人物、ナカモト・サトシ
この数年、話題になっているインターネットの大きな変革「ウェブ3」。その始まりがナカモト・サトシの考案したブロックチェーンであることは疑いがない。名前は日本人的だが、そもそも日本人であるかどうかもわかっていない(英語の表現が完全なネイティブであるため、人種がどうあれ、英語圏で育った人であると推定されている)。
所属する教育機関や研究機関の権威により評価されるのではなく、そのアイディアのみが評価をされ、多くの人に受け入れられ、世界を変えようとしている。
https://bitcoin.org/bitcoin.pdf
ナカモト・サトシの先駆者である謎の中国人
しかし、そのナカモト・サトシも画期的な発想を突然思いついたわけではない。先駆者がいる。先駆者はダイ・ウェイという中国風の名前の人物だが、こちらも正体が不明だ。ダイ・ウェイは、ナカモト・サトシよりも早くb-moneyというアイディアを提出し、この中でPoW(Proof of Work)、公開鍵暗号による台帳システムなどを提案している。
ナカモト・サトシはビットコインの論文を公開する前に、ダイ・ウェイにメールを送っている。論文の引用文献にダイ・ウェイのb-moneyに関する文章を引用したいのだが、公開年月日がわからないので教えてほしいという内容のものだ。その中で、ナカモト・サトシはこう書いている。
「あなたのb-moneyに関するページに興味を持ちました。あなたの発想を完全に動作するシステムに拡張する論文の公開の準備をしています」。
ナカモト・サトシの論文「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System」にはこうしてダイ・ウェイの文章が引用文献として掲載されている。
顔を隠した共同創業者ダイ・ウェイ
ダイ・ウェイも正体は誰なのかわかっていない。しかし、ワシントン大学の計算機学科を卒業し、マイクロソフトに入社、その後、セキュアなクライアントソフトを開発したbitviseの共同創業者になっていることはわかっている。bitviseのサイトの創業者の紹介者ページ(https://www.bitvise.com/about-us)にダイ・ウェイの名が見えるからだ。
ところが、他の主要メンバーについては顔写真があるのに、ダイ・ウェイには顔写真が掲載されていない。このため、中国人なのかどうかすら確定していない。ネットにはダイ・ウェイの顔写真が出回っているが、ほとんどは同姓同名の中国人の生物学者かシェアリング自転車ofoの創業者の顔写真が誤って使われている。
また、C++の暗号化ライブラリ「Crypto++」の作者としても名前が挙げられているが、これも名前があるだけで正体はわかっていない。
ナカモト・サトシとダイ・ウェイ同一人物説まで
このような事情から、Bitcoin.comには、ダイ・ウェイがナカモト・サトシと同一人物ではないかと論じる記事(https://news.bitcoin.com/many-facts-wei-dai-being-satoshi/)が掲載されている。それなりの説得力はあるものの、ほんとうにそうなのかどうかは確定をしていない。
ウェブ3時代を切り開いたブロックチェーンのアイディアは、インターネットの進化史にとって、ウェブの考案と同じぐらいに重要なものになることはほぼ間違いない。それがナカモト・サトシという正体不明の人物により提案をされたものであり、ナカモト・サトシはダイ・ウェイという正体不明の人物により触発をされたというのは、いかにもサイバースペース時代らしいできごとだ。その人が所属する機関や身分の権威により評価されるのではなく、純粋にアイディアの素晴らしさで評価をされる。そういう時代になっている。
暗号資産の単位として使われるsatoshi、wei
ビットコインでは、その名称が単位になっていて、1ビットコイン、2ビットコインと数える。しかし、円に対する銭、ドルに対するセントのように、ビットコインよりも小さい単位も用意されている。これはこの世界を切り開いた人物に敬意を表してsatoshiという単位が採用されている。同様に、イーサリアムでは小さな単位として、ダイ・ウェイに敬意を表してweiが使われている。
新時代を切り開く元になった2人の正体不明の人物。その正体が明らかになる日はやってくるのだろうか。多くの人が、永遠に正体不明であってほしいと考えている。