車載ナビ、スマホナビでもARナビが普及をし始めている。実際の風景を撮影し、その上に走行車線などをオーバーラップ表示してくれるというものだ。阿喵汽車が各種ARナビを試用し、その長所と短所を紹介する動画を公開した。
車載ナビ、スマホナビもARナビへ
中国の車載カーナビ、スマートフォンのナビアプリの多くが「ARナビ」に対応するようになっている。ARナビは、カメラで実際の道路状況を撮影し、ナビラインを現実の風景にオーバーラップして表示をしてくれるというもの。車線レベルの粒度でナビラインを表示してくれ、さらに他車や歩行者、障害物なども認識をし、接近しすぎた場合は警告をしてくれる。
初心者にとってはわかりやすい。さらにテクノロジー感もあるためにARナビを使う人が増えている。
ARナビの3つの長所と3つの短所
ARナビにはさまざまなメリットがあるが、問題点もある。自動車関連のレビュー動画を投稿している配信主「阿喵汽車」が、ARナビの長所と短所について紹介している。
ARナビの長所1:わかりやすい
実際の風景に走るべき車線が表示されるので何よりもわかりやすい。右左折するための車線変更も指示をされ、右左折する道も実際の風景にオーバーラップされて表示されるので間違えることはほとんどなくなる。特に、地図を読むのが苦手な人にとってはこれ以上わかりやすい表現はない。
ARナビの長所2:正確な定位
GPSなどの衛星を用いた測位システムは万能ではない。高いビルに囲まれた通り、トンネルの中では衛星を捕捉することができなくなり、測位の精度が落ちてしまい、不正確になる。多くのナビシステムでは、それまでの移動情報から推定をして現在地を表示することになる。しかし、トンネルの中で分岐がある場合などでは、正確に分岐点を通知できなくなることもある。また、車線誘導などのナビは効かなくなる。
ARナビは、撮影している風景と高精度地図とのマッチングを行うため、衛星が補足できない場所でも正確に現在地を示すことができる。
ARナビの長所3:高架と下道を判別
衛星測位システムでも難しいのが、同じ道路の高架を走っているのか、下道を走っているのかの判別だ。衛星測位システムは3Dであり、高度も測位するすることが可能だが、高架道路が走っているような場所では衛星が捕捉しづらく、高架道路を走っているのに下道を走っている想定でルート案内をしてしまうことがある。
これもARナビでは実際の風景とのマッチングを行うので、正確に現在地を表示してくれる。複雑なインターチェンジなどでも、安心をしてARナビの指示を信頼することができる。
ARナビの短所1:ルートの全体像がわかりづらい
ARナビは、直近のルート案内には強いが、ルートの全体像がつかみづらいのが難点だ。2D地図であれば、地図を縮小、または全体を表示などの操作をすることで、ルート全体を簡単に表示し、現在、ルートのどの辺まで進んでいるのかがわかる。多くのARナビが、2D地図も表示するようになっているが、現在地付近の地図のみであり、ルート全体が把握しづらい。
ARナビの短所2:画面を注視しがちになる
ARナビは、視覚情報が中心であるナビシステムであるため、画面を注視する時間が長くなる。特に、交差点など複雑な道路状況の時に注視時間が長くなり、場合によっては危険なことがある。阿喵汽車は、いったん路肩に停車をさせ、ナビをじっくりと見て確かめてから再発車するということがあるという。
一般的なナビに慣れてくると、画面というのはほとんど見ずに、音声だけに頼って、それを補う程度に画面を確認するという使い方になってくる。このような使い方では、2D地図であってもARナビであっても使い勝手はあまり変わらなくなる。阿喵汽車は、ARナビの長所を活かすのであれば、フロントグラスにプロジェクションしてAR表示するようなシステムが必要だと提案している。
ARナビの短所3:演算の負担が重すぎる
これは時間とともに解決される問題だが、現状ではARナビの演算がデバイスにとって重すぎる。スマホのARナビでは、発熱をし、低スペックの機種では過熱をして、アプリが停止することもあったという。また、車載機でも画面にタッチするとかなり熱くなっているのがわかる。ARナビの演算を考慮したスペックの車載ナビ、スマホの登場が望まれる。
理想はフロントグラスへ投影するARナビ
問題はまだまだ多いものの、ARナビという表現の仕方がわかりやすいことは間違いない。すでにフロントグラスに投影をして、カメラ経由ではなく、実際の風景にナビラインを投影するシステムも登場してきている。その多くは、運転席の天井部分にプロジェクターを設置し、運転手の顔を撮影するカメラの2つを取り付け、運転手の頭の位置を見て、ナビラインが正確に現実の風景に重なるように投影をしてくれる。
カーナビは、このようなARナビで音声操作ができるというのが標準スタイルになっていく可能性がある。