深圳通と滙頂科技が共同で、UWBを活用した「通るだけで決済ができる」改札のコンセプトモデルを発表した。タッチをする必要すらなく、通るだけで決済が可能になる。UWBはAppleのAirTagでも活用され、今後対応製品が登場してくることになると移動支付網が報じた。
改札をノータッチで通過できるUWB決済システム
深圳の交通カード運営会社「深圳通」と、滙頂科技(ホイディン、GOODiX、https://www.goodix.com/zh)は、UWB(Ultra Wide Band)を利用した改札システムの研究展示を行なった。スマートフォンなどを携帯していれば、タッチなどすることなく、改札をそのまま通り抜けることができるようになる。高速道路のETCのような感覚だ。このような通るだけで決済ができる方式は、無感決済と呼ばれている。UWBを利用した改札システムのモデル提示は中国初となる。
2021年に開催された北京国際都市軌道交通展覧会では、深圳通とスマホメーカーvivoが共同して、UWBを利用しデジタル人民元で乗車料金を決済する改札システムのコンセプト展示を行なっている。GOODiXのシステムは、実際に運用することも可能なレベルで、無感決済対応の改札の登場がより現実的なものになった。
iPhoneにも搭載されているUWB
UWBはBluetoothなどと同じ近接無線通信技術のひとつ。高速、大容量の通信ができるだけでなく、レーダーのように対象物との距離を測定したり、対象物の形状を把握することができる。到達距離は100mから200mと長く、誤差数cmでの距離を測定が可能になっている。
すでにiPhoneにはUWBのチップが搭載をされており、さまざまな活用が始まっている。例えば、携帯品につけて置き忘れてもiPhoneで場所を知ることができるAirTagにも使われている。BluetoothによりAirTagまでの大まかな距離を測定し、最終的にはUWBを使い数cmレベルでの距離測定を行い、利用者にAirTagの場所を教える。
また、iPhone同士でデータをワイヤレスで簡単にやり取りができるAirDropでもUWBが活用され、iPhoneを向けている方向にいるユーザーが送受信相手の候補として優先表示されるため、誤った相手に送ってしまったり、未知の人から不快なデータを送りつけられるということも避けられるようになっている。
さらに期待をされているのが、高速、大容量通信を活かして、Bluetoothでは難しかった決済などの素早い処理だ。改札を通るだけで決済ができる、近づくだけで鍵を開けることができるなどの仕組みが登場することが期待されている。
スマホでも標準搭載になりつつあるUWB
アップルはすでにUWBの活用を始めており、サムスン、小米(シャオミ)、OPPOなども応用を始めている。特にシャオミは、スマホを家電製品に向けてリモコンとして利用できるソリューション「一指連」を開発し、対応機器の販売を始めている。
▲シャオミが進めている一指連のデモ映像。スマホを家電の方向に向けることで、複数の家電のリモコンとして利用ができる。
地下鉄の改札が目指す無感決済の本命UWB
地下鉄の改札は、NFCカードによるタッチ、QRコードによるスキャンなどの方式が使われてきたが、理想とするのは「通るだけで決済される」無感決済だ。これを実現する方法として顔認証決済によるシステムも考案されてきた。遠方から顔認証を始め、改札を通過する時までに決済処理を終えることで、疑似的に無感決済を実現するものだ。
しかし、混雑をする実際の改札での運用には大きな課題があり、2020年の新型コロナ感染拡大によるマスク着用で、顔認証を基にしたソリューションの開発は止まってしまっている。
この状況の中で、UWBは無感決済の本命技術として注目をされている。