北京地下鉄の大興機場線が掌紋決済対応の改札を導入した。空港連絡線であるため、大きな荷物を持っている人が多い。そこでカードやスマホを取り出すのには不便があった。これからは手のひらをかざすだけで改札を通れるようになると北京日報が報じた。
QRコードの先へ
QRコードで決済ができるスマートフォン決済「支付宝」(ジーフーバオ、AliPay)「微信支付」(ウェイシン、WeChat Pay)が、QRコードを離れ、NFCなどの他の通信方法の模索を始めている。
アリペイ、WeChatペイは、QRコードを採用したことで、2017年前後に一気に普及をすることができた。商店側では、カメラ付きスマホあるいはスキャナーという手軽な設備で対応することができたからだ。さらには、消費者側がQRコードを読み取る方式も用意され、これであれば商店側は紙に印刷をしたQRコードを用意するだけ対応できる(確認、管理をするためにPCまたはスマホは必要)。この手軽さにより、屋台でもスマホ決済に簡単に対応ができることができ、中国は一気にキャッシュレス決済社会に突入した。
再び動き始めた生体認証
QRコード決済の最大の難点は、決済に手間がかかるということだ。消費者側はスマホを取り出して、アプリを起動して、QRコードを表示するか、スキャンをしなければならない。客数が少ない個人商店、個人飲食店ではそれでも問題は起こらないものの、客数の多い大型スーパー、地下鉄などでは、よりスムースな決済方法が求められていた。
ひとつの方向が、NFC(Near Field Communication)で、多くの都市の地下鉄やバスなどで採用されている。スマホをタッチするだけで決済ができる。また、深圳地下鉄ではUWB(Ultra Wide Band)を利用した改札の研究開発を行なっている。これであれば、スマートフォンを携帯していればタッチなどの操作は不要で通過するだけで決済が可能になる。
一方、もうひとつの方向が生体認証だ。2019年にはアリペイ、WeChatペイともに顔認証決済を推進し、専用端末を実質無料で配布するなど普及に努めたが、その後、コロナ禍が起き、多くの人がマスクスするようになってしまったため、普及が止まってしまった。この顔認証を含めた生体認証決済が再び動き始めている。
手をかざすだけの手のひら決済
北京地下鉄の大興機場線は、北京市内の草橋駅から大興空港までを22分で結ぶ空港線だ。途中に大興新城という駅はあるが、北京市内と空港を直結している地下鉄だ。料金は通常の地下鉄と異なっており、普通車両が35元、ビジネス車両が50元となっている。
つまり、市内の中心部からは草橋駅でいったん改札の外に出て、チケットを買い直さなければならない。従来通り、交通カード(+スマホNFC)、QRコード決済、顔認証でも改札から入って乗ることができるが、大興機場線では掌紋決済が採用された。手のひらの紋と静脈パターンで個人を認識して決済をするもので、登録をしておけば、改札に手をかざすだけで乗車することができる。
手をかざせば地下鉄に乗れる
チケット販売機では、掌紋を登録する装置が用意され、「北京地下鉄掌紋乗車」WeChatミニプログラムを使って、ここで自分の掌紋を登録する。これは1回しておけば、後は必要がなくなり、直接改札に向かうことができる。
改札機には、NFC、掌紋、QRコードの3種類の読み取り装置が用意され、掌紋決済の場合は手のひらをかざすだけで改札のゲートが開き、乗車をすることができる。また、スマートフォンには料金が引き落とされたことを知らせる通知がくる。
空港線特有の事情を考えた手のひら決済
掌紋決済乗車は、利用者から好評だ。空港線であるために、多くの人が大きな荷物を持っている。その状態で、スマホを取り出して、アプリを開いてという操作は意外に時間がかかる。しかも、多くの人がその操作を改札の直前でする傾向があるために、改札が渋滞をすることもあった。それが手をかざすだけであるために、改札の渋滞が解消されることが期待される。
手のひらの画像情報は、登録後データ化をされ、画像そのものは廃棄されるか、匿名化される仕組みになっている。中国は長い間、決済にQRコードを利用してきたが、他の手法への模索が始まっている。