中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

すごすぎる中国版レゴの世界。コミック、アニメ、映画、伝統建築から宇宙船まで

中国版レゴとも言えるブロック積み木、大人積み木の販売が好調だ。玩具業界の新しい世代の経営者たちが、オリジナルブロック積み木の開発を進め、消費者に歓迎をされている。レゴの上陸から始まった中国ブロック積み木は、海外に輸出される製品にまで育ってきたと媒体が報じた。

 

玩具の都、広東省汕頭市澄海区

ブロック積み木がにわかにブームになっている。天猫の6月18日を中心にしたセール期間の予約販売で、積み木が昨年の2倍の売れ行きを示している。販売されている積み木の半分以上は、広東省汕頭市澄海区の玩具業者のものだ。

澄海は「玩具の都」とも呼ばれる。澄海は90年代に玩具生産が盛んとなり、海外のバイヤーが訪れては人形を中心とした玩具を買い付け、それぞれの国で販売をするようになっていった。また、レゴなどの世界的なブロック積み木ブランドの受託生産も始まっていった。

いわゆる他の製造業でも起きていた「世界の工場」となっていったが、そのような製造業者が代替わりをし、85后(85年以降生まれ、30代)が社長となると、独自の製品を開発するようになっていった。

▲拼奇(Pantasy)が発売している鉄腕アトムのブロック積み木。もはや積み木の領域を超えている。

 

2代目、3代目社長がオリジナル製品開発へ

その最初と言われるのが、1994年に誕生した啓蒙(チーモンhttp://qmjm.com/)だ。設立したのは、現在の社長の父親だが、独自の玩具を開発することが目的で、現在は100人以上の開発者がいる。

また、2003年に創業した森宝積木(センバオ、SEMBO、https://semboblock.com/web/dist/#/)の創業者も玩具業の3代目だ。

このような澄海の玩具業者の子どもたち、孫たちがオリジナルのブロック積み木を開発するようになり、現在のブロック積み木ブームの中心となっている。

▲啓蒙のKeeppleyブランドのブロック積み木。宇宙ブームに乗ってヒット商品となった。

▲森宝積木の空母「山東」のブロック積み木。コロナ禍で自宅時間が多くなったこともあり、複雑で精巧なブロック積み木が売れている。

 

国潮ブームとコロナ禍で成人積み木の市場を確立

このブロック積み木ブームの追い風になっているのが、2018年頃からブームになっている国潮だ。国産品を見直そう、中国文化を見直そうというもので、啓蒙は新たにKeeppleyというブランドを設立し、中国宇宙船や中国コミック、アニメのIPを活用したブロック積み木を開発し、天猫旗艦店で月商100万元を超えるようになった。

この成功により、成年積み木と呼ぶべきジャンルが認知をされ、多くの同業者が成年向け積み木を開発し、ECで販売をするようになった。登場したブロック積み木ブランドは100を超えると言われている。

さらに、2020年の新型コロナの感染拡大で、自宅で過ごす時間が多くなり、多くの人が自宅で楽しめる趣味として積み木に注目をした。

▲香港の街並みを再現した森宝積木のブロック積み木。つくる楽しみと飾る楽しみの両方が楽しめる。

ほぞ継ぎ技術が使われる中国ブロック

このような中国のブロック積み木は2012年頃から中国市場に入ってきたレゴがベースになっている。しかし、レゴが接続部分はシンプルであるのに対して、中国積み木は接続部分が複雑だ。中国建築のほぞ継ぎ加工の技術が使われている。また、完成した姿は中国の伝統文化にまつわるものが多く、つくる楽しみと飾る楽しみの両方が楽しめる。

中国の100均ショップである「名創優品」(MINISO)から生まれた玩具セレクトショップ「TOP TOY」では、80后、90后をターゲットにした懐かし家電シリーズのブロック積み木をヒットさせている。レトロなテレビや冷蔵庫、洗濯機といった家電製品と当時の生活を組み合わせたものだ。

▲Keeppleyの故宮のブロック積み木。中国の伝統文化を再現したブロック積み木の売れ行きが好調だ。

▲100円均一ショップ「メイソウ」の玩具ブランドTOPTOYが発売している懐かしの家電シリーズ。中年に受けている。

 

レゴと競争をする中国ブロック積み木

このような中国積み木のライバルとなっているのが2012年に中国市場に入ってきたレゴだ。レゴは現在でも、幼い子どもたちの間では定番の積み木となっている。しかし、レゴは価格が高く、どの家庭でも買い与えることができるものではない。一方で、中国積み木は価格が手頃であり、表現の緻密さではレゴを上回るようになっている。これにより、子どもの頃、レゴで遊んだ人たちが成長をして、子どもの頃を思い出して、中国積み木を楽しむようになっている。

また、IPとの提携も中国積み木の強みとなっている。映画、アニメ、コミックと提携し、その積み木を開発することはレゴでも中国積み木でも盛んに行われているが、そのスピードがまったく違う。例えば、森宝積木は、映画「流転の地球」の積み木を発売しているが、IPとの契約を獲得してから45日後には販売を開始している。レゴも同じ映画のIPを獲得したが、玩具が発売されたのはIP獲得から1年後のことだった。

▲森宝積木の映画「流転の地球」シリーズ。契約獲得後45日後には最初の製品が発売になっている。同じく契約を獲得をしたレゴが製品を発売したのは1年後のことだった。

▲拼奇が映画「武林外伝」に登場する宿屋を再現したブロック積み木。中国伝統文化に題をとったもの、IPと連携したものが売れている。

 

海外文化を独自アレンジで市場を拡大する

中国でブームとなり、現在もブームが続いている盲盒(マンフー、ブラインドボックス)の起源は日本であり、積み木の起源もレゴであり、中国が生み出したものではない。しかし、外来の文化を中国風にアレンジをして、大きな市場を獲得している。

中国積み木はすでに海外での販売も始まっているが、現在は、中国文化に興味のある人たちの間で売れているだけだ。玩具の都「澄海」は、次はグローバルで通用する玩具の開発に挑戦をすることになる。

▲Keepleyの旗艦店。玩具が大きな市場に育ってきている。

▲啓蒙が発売している射出成形機のブロック積み木。プラスティック加工に使われる工作機器だが、本物のメーカーのZHAFIRと契約し、精密に再現をしている。