2021年6月の新エネルギー車販売台数は、予想通り、宏光MINI EV、テスラモデル3、モデルYの順位となった。これを都市の規模別に見ると、地方都市での宏光MINI EVの健闘が目立つ。EVは地方にまで広がり始めていると第一電動網が報じた。
個人市場がリードする新エネルギー者の好調さ
中国の新エネルギー車販売が好調だ。上海では、2021年6月の販売数が20524台となり、昨年同時期から44.5%増となった。2万台を突破するのは3月に続いて、今年2度目になる。深圳では14827台となり、31.5%増。北京では14654台となり79.3%増、広州、杭州を抜いて、新エネルギー車販売数で第3の都市となった。
中国全体の2021年6月の新エネルギー車販売数は21.8万台、22.8%増。その中で電気自動車(EV)は17.9万台、プラグインハイブリッドが3.8万台。また、個人向けが16.7万台、法人向けが5.1万台となり、新エネルギー車市場は、個人市場が牽引していることが明確になってきた。
メーカー別ではBYD、車種では宏光MINI EVとテスラモデル3
メーカーごとの販売台数で1位になったのはBYD。次が、宏光MINI EVが大ヒットとなっている上汽通用五菱、以下テスラ、広汽乗用車、上汽乗用車と続く。
車種別では、相変わらず宏光MINI EVが強い。3万元(約49万円)という低価格ながら街乗りにはじゅうぶんという性能が受け、ロングヒットになっている。また、若い世代では、魔改造をして楽しむという流行も起きている。
もうひとつの軸になっているのがテスラモデル3、モデルYだ。自動運転に対応し、キビキビとした動きのテスラは高価格帯ながら売れている。2021年の3月から5月にかけて、ブレーキ問題が世間の耳目を集め、販売数が落ち込んでいたが、6月からは以前とほぼ同じ水準に戻している。
「ガソリン車の代替」ではないことが好調の理由
つまり、多くの人が、EVを「ガソリン車の代わり」ではなく、新しい乗り物として受け入れていることがわかる。ガソリン車には「都市内と高速道路」「街乗りと遠出」というオールマイティーな能力を要求する。しかし、EVに同じオールマイティーを求めることは難しい。そこで、自分の自動車の使い方を考え、街乗り主体であれば遠出はあきらめ、小型EVを購入し、遠出をするときはレンタカーや高鉄の利用を考える。
テスラは、反応が俊敏で、EVのスポーツカーだ。キビキビとした運転を楽しみたい人や、自動運転などのデバイスとしての機能に興味がある人が購入をしている。ちょうど、電話とSNSが主体の使い方の人は小型のスマートフォンを選び、ゲームや動画を楽しみたい人は大型のスマートフォンを選ぶような使い分けが、EVの世界でも起きようとしている。スマホにPCと同じような大画面、物理キーボードを求める人はいない。スマホがPCの代替ではなく別物であるように、EVもガソリン車の代替ではなく、別物として受け入れられ始めている。
大都市ではテスラ、地方都市では五菱
都市の規模別に売れている車種を見ると、そのことがはっきりとする。大都市である一線都市(上海、北京、深圳、広州)などではテスラが圧倒的に強く、地方都市である二線都市以下では、代歩車とも呼ばれる宏光MINI EVが圧倒的に強い。
大都市は交通渋滞がいまだに大きな問題で、地下鉄も発達していることから、移動手段としての車の存在感は小さくなっている。地下鉄が最も早く確実に移動ができ、地下鉄の駅から離れたと場所には、スマホでタクシーやライドシェアを呼ぶか、シェアリング自転車で対応できる。何より、駐車場不足は深刻で、下手に車で出かけると、止める場所を探して右往左往することも珍しくない。そのため、大都市では移動のために車を買うのではなく、楽しみのために車を買う。また、それだけの経済力を持っている人も多い。
一方、地方都市では、地下鉄の発達も不十分であるために車の移動に頼る部分が大きい。多くの地方都市では、電動バイク、電動自転車も売れているが、二輪車の場合は雨や夏冬の天候に耐えなけれなければならない。このような層が低価格の代歩車である小型EVを購入している。宏光MINI EVのエントリーモデルは、暖房のみで冷房がついていないが、そこを気にしない人も多い。
地方都市、中所得者層に波及し始めたEV
特に注目をしていただきたいのが、地方都市でも大都市と変わらない台数が売れ始めているということだ。つまり、EVの販売数上昇の多くは、地方都市のこれまで車を持てなかった人たちがEVに乗り始めているということにある。EVだけでなく、自動車という乗り物が中国全土に広がり始めている。