小米が新卒者5000人の大量採用計画を明らかにして話題になっている。雷軍CEOは、経営者の高齢化を防ぐために、若い世代を大量採用して、その中から30歳で経営層に入る人材を育てるのだという。雷軍は今後中国で深刻な問題になる高齢化社会にいち早く手を打ったと中欧商業評論が報じた。
シャオミが新卒者5000人を採用へ
小米(シャオミ)の創業者である雷軍(レイ・ジュン)CEOは、WeChatの公式アカウントで、2021年の新卒者リクルート活動を始めることを告知した。このリクルート活動は、小米が創業して11年で最大の規模となり、5000人を採用する計画であるという。これは2020年末の小米従業員数の23%にも相当する。さらに、この中から10年以内に、30歳で役員になる人材を育てたいとしている。
▲小米を創業した雷軍。そのプレゼンテーションの姿から「中国のスティーブ・ジョブズ」と呼ばれたが、お手本にしているのは無印良品だった。製品コンセプトだけでなく、製造方法や販売方法まで研究し、それを電子機器、電化製品に応用している。
テック企業の課題は、若い経営者を育てること
中国発展基金会によると、中国の高齢化率(65歳以上の人口比)は、2035年に22.3%になると予測され、高齢者化社会の基準である20%を超え、中国は完全な高齢化社会に突入する。
労働人口が減少をするのも大きな問題だが、雷軍が問題にしているのは、企業のリーダーも高齢化をしてしまうということだ。どんな人間であっても、年齢が高くなれば保守的になる。保守的なリーダーでは、企業の発展はない。小米を長期にわたって発展させていくには、若い世代のリーダーを今から育成しておくことが急務だと雷軍は考えているという。
▲日本の社長の平均年齢は年々上昇傾向にある。「後継者が見つからない」という社長が65%にものぼっている。「特別企画:全国社長年齢分析」(帝国データバンク)より引用。
進む経営者の高齢化
フォーブズの中国CEOランキングの上位50人の平均年齢は54歳。中国のテック業界では、創業者の55歳というのはひとつの転換点になっている。2019年にアリババの創業者、馬雲(マー・ユイン、ジャック・マー)が引退をしたことが大きく影響している。つまり、この数年で、中国のテック企業では、創業者の引退が相次ぐことになる。
これは90年代の日本と状況がよく似ている。1990年の日本の高齢化率は12.1%で、日本の主要企業の社長の平均年齢も54歳だった。しかし、社長の世代交代率はわずか5%弱で、その後、社長の平均年齢は上昇し続け、2021年現在は60.1歳にまで上昇している。さらに、社長の交代率も低下をし、2021年現在は3.8%になっている。それでも65%の社長が「後継者が見つからない」と悩んでいる。
よく「老害」という言葉が使われるが、社長の年齢が高くなり、老化により適切な判断ができなくなるということよりも、リーダーの交代が進まず、20年前、30年前に活躍をした人がリーダーになっていることが問題の本質だ。本人は進歩的で最先端の手を打っているつもりでも、それは世界標準から見れば10年前に対応済みのことになってしまっている。
▲社長の交代率も減少傾向にある。雷軍は、高齢化に関しては中国の30年後が日本の今だと考え、今から若いリーダーを育成する準備を始めている。「特別企画:全国社長年齢分析」(帝国データバンク)より引用。
日本に学んだ雷軍は、リーダーの若返りを図っている
雷軍は日本企業のことをよく研究している。2010年に小米が発売した「小米1」は当時のiPhoneと性能は遜色がなく、価格は1/2ということから爆発的な人気となり、発表会でもスティーブ・ジョブズばりのプレゼンを披露したことから、「中国のスティーブ・ジョブズ」と呼ばれるようになった。
しかし、雷軍がお手本にしていたのは、無印良品を運営している良品計画だった。「創業した時の想いは、中国の製造業を変えたいということでした。中国人の国産品に対するイメージを変えたいということでした。中国の高いものづくり能力をどう活かせば、世界でトップクラスの製品が作れるか。それを考えていました」。
無印良品は、すべての製品でデザインの統一性があり、システマティックに品質の高い製品が製造できる仕組みを構築していくる。雷軍はここを学び、それを電子機器に応用をしてきた。
高齢化、労働人口の減少という点では、現在の中国は1990年の日本の状態になっている。中国は30年後の未来を現在の日本に見ていることになる。それが、小米の大量採用につながり、若い経営層を育成し、半ば強引に企業リーダーを世代交代させていくべきだという雷軍の発想につながっている。