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1時間で10万本の電話。人工知能がPCR検査を勧めて、全員検査

中国でも変異種による新型コロナの感染拡大が散発的に起きている。その対処法は、全員PCR検査、早期隔離だ。これで市中感染という最悪の時代を防げている。その全員PCR検査に貢献しているのが、人工知能による検査のすすめの電話だと21世紀経済報道が報じた。

 

5月下旬に変異種が感染拡大をした広州市

新型コロナの感染を抑え込んでいた中国で、再び、変異種が拡大をした。広州市では、5月下旬に国外から持ち込まれた変異種が広がる事態となり、1ヶ月間で200人弱の新規感染者が確認された。

広東省疾病予防管理センターでは、デルタ株は、潜伏期間が非常に短く、感染速度が速いという声明を出し、全国の緊急対応チームが広東省に入り、仮設のPCR検査センターを設置、感染者が出た地区は封鎖をし、225万人の住民全員にPCR検査を実施するという対応をした。また、対象地区以外の住民にもPCR検査を受けるよう呼びかけた。

さらに、広州市政府は、広州市外に移動する人には、健康コードの提示と72時間以内のPCR検査陰性証明書の所持を義務づけた。

このような対応の結果、6月に入ってからは、新規感染者はすべてPCR検査により発見されており、市中感染は起きていないと判断、6月下旬には新規感染者、重症患者ともゼロになり、制限の緩和が始まっている。

 

全員PCR検査、早期隔離で市中感染を防ぐ

ポイントは、感染拡大初期に全員検査をすることで、他の都市でも1人でも新規感染者が発見された場合は、その地区を数日間封鎖し、大量の人員を投入して、住民全員をPCR検査、感染者を炙り出し、入院隔離、検査チームに余力が生まれたところで、周辺地区の希望者にPCR検査をするという「早期大量検査・即時隔離」の手法で、感染を拡大させない作戦をとっている。

 

PCR検査を促す電話がかかってくる

この時期、市民に対して不思議な電話がかかってきたという。

(女性)「こんにちは、こちらは海珠区の疾病予防指揮部です。広州市の予防措置により、お時間をいただけないでしょうか。いくつかの質問にお答えください。まず、あなたは海珠区にお住まいですか?」

(市民)「はい、そうです」

(女性)「この3日間の間にPCR検査はお受けになりましたか?」

(市民)「受けていないですね」

(女性)「わかりました。では、地域が指定する検査会場にいかれてPCR検査を受けてください。お時間をいただきありがとうございます。あなたの健康を願っております。失礼いたします」。

 

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▲科大訊飛による電話ロボット「小飛」のデモ。人間の応答を理解し、質問に対する答えを自動集計する機能がある。

 

電話1本でも効果は大きい。1時間で10万本をかける人工知能

要は、PCR検査を勧める電話にすぎないが、効果は大きいのだという。PCR検査は1度受ければいいというものではなく、検査後に感染をすることもあるので、定期的に受ける必要がある。それはやはり、普通の人にとっては面倒くさい。それが電話で促されることで多くの人が検査に協力をするようになる。

この36秒で終わる電話は、人がかけているのではなく、人工知能による合成音声がかけている。相手の返答を理解して、異なるシナリオに分岐する。このシステムは、科大訊飛(カーダーシュンフェイ、iFLEYTEK)が開発をしたスマート医療支援電話ロボットだ。

本来はスクリーニング検査や治療後の状態確認に使うものだ。医師がシナリオを作成し、人工知能がそれに沿って指定された患者全員に電話をし、返答を理解して、自動集計するというものだ。

科大訊飛は、21世紀経済報道の取材に応えた。「人が電話業務を行うと、1日8時間で100通話が限界です。しかし、私たちの電話ロボットでは、最高で、1時間で10万本の電話がかけられます」。電話に出ず、回答が得られなかった場合は、時間をおいて電話を再びかける機能もある。

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▲科大訊飛による電話ロボットの利用での活用イメージ。医師がアンケートなどのシナリオを作成すると、小飛がリストに従って電話をかけ、回答を理解し、自動集計される。健康調査などに利用される。

 

30都市で利用される電話ロボット

広州市では、この電話ロボットを使って、感染が拡大していた6月3日までに3.56万人に電話をかけ、80%の人に電話連絡をすることができたという。

この科大訊飛のシステムは、北京市安徽省浙江省吉林省湖北省などの30以上の省市で採用され、すでに8000万人以上に電話連絡をし、結果の集計をした実績がある。

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▲小飛を利用する医師のイメージ。コロナ禍は中国の経済に大きな打撃を与えたが、さまざまな分野でのリモート技術が普及をした。医療でもリモート医療の時代になろうとしている。