中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

デジタル時代に徹底した逆張り戦略で成長するスーパー「永輝」

ECサイトの普及で、既存スーパーは軒並み売上を落とし、戦略転換を迫られている。その中で、国内系の「永輝スーパー」は、デジタル化も遅いのに、一人急成長をしている。その秘密は、徹底した逆張り戦略にあったと引力資訊が報じた。

 

スーパー冬の時代に、一人気を吐く「永輝」

中国の各スーパーは冬の時代を迎えている。ウォルマート、カルフール、台湾系のRT-MARTが軒並み売上を落とし、郊外大型店から都心小型店に戦略転換を図っている中、国内系のスーパー「永輝スーパー」(ヨンホイ)は、60店舗の新規開業を計画するなど絶好調だ。

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▲永輝の入り口は、正直パッとしない。いかにも中国っぽい感じで、中は青物市場のような感覚だ。それでも安心できる食品を手ごろな価格で購入できると、地元民を惹きつけている。

 

スーパー不振の原因はECサイトの普及

スーパーの売上が落ちているのは、間違いなくECサイトの影響だ。日用品のほとんどは宅配をしてくれ、しかも、常にどこかのECサイトがクーポンやセールなどのキャンペーンをやっていて、スーパーよりも安く買える。わざわざスーパーに買い物に行くという人が減るのも仕方のないところがある。

どこまで本当かどうかはわからないが、中国の家庭で大量に消費されるのは食用油で、これをスーパーに買いに行くのが以前は苦労だったという。重たく持ち帰りが大変な食用油がきっかけになって、日用品をECサイトで買う習慣が定着したという人もいる。

 

 

大量新規出店で絶好調の「永輝」

ところが1995年に設立された永輝スーパーは、ECサイトの出現にも影響されず、2010年には上場をした。2017年にはなんと332店舗を新規開店し、合計806店舗となり、売上は585.91億元(約1兆円)、昨年と比べて19.01%増。

今年は、高級業態のBravo店を135店舗、グローサラント業態(スーパー+レストラン+宅配)の「超級物種」を100店舗、コンビニ業態の永輝生活を1000店舗開業する計画で、ECサイトに押されるどころではなく、飛躍の年になっている。

この絶好調ぶりはどこから来るのか?

 

他スーパーと差別化をするために行った徹底した逆張り戦略

永輝が創立したのは、カルフールやウォルマートが中国に1号店を出店するのとほぼ同時期だった。特に、ウォルマートとドイツ系のメトロとの競争は厳しく、伸び悩んでいた。

そこで永輝がとったのが、他スーパーと差別化を図るために、徹底した逆張り戦略だった。カルフールが郊外に大型店を出店し、週末に家族が車でくることを想定するなら、永輝は都心や住宅地に中型店を出店し、平日の昼間に主婦(中国では子ども夫婦の家に親が同居をし、家事育児を親世代が引き受けることが多い)、平日の夕方に通勤族が歩いてこれるようにする。

カルフールが、食品以外にも、日用雑貨、衣料、家電製品を扱い、百貨店化していくのであれば、永輝は生鮮食品だけに特化する。

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▲永輝の売り場は、包装がほとんどなくむき出しで陳列されている。この方式が、消費者に安全な食品であるという信頼感を与えている。

 

衣料、雑貨を扱わないことで、ECサイトの影響を受けずに済んだ

この食品に特化する戦略は大きな賭けだった。なぜなら、衣料や雑貨、家電製品は、食品に比べて利幅が大きく、長期在庫が可能で、商品ロスも少ない。多くのスーパーが、経営を安定させるために、このような商品を扱った。

しかし、ECサイトにとっても、このメリットは同じだった。利幅が大きく、大量在庫ができ、商品ロスが少ない。そのため、ECサイトの中心的な商品となり、クーポンやセールなどの攻勢をかけていった。既存スーパーは、ここでECサイトに売上を奪われてしまった。

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▲超級物種は、グローサラント。スーパー、レストランがあり、近隣への30分配送を行う。アリババの「フーマフレッシュ」に対抗する店舗だ。

 

食品に特化したことが生き残りの鍵となった

一方、永輝は食品だけに特化していたので、必死だった。直接農村に買い付けにいき、流通を整え、価格を安くした。食品で勝負するしかないからだ。

食品は、ECサイトが最も扱いづらい商品なので、永輝はECサイトの影響を受けずに済んでいる。これがデジタル時代に生き残る鍵となった。

また、歩いてこれるスーパーを目指したため、都心、住宅地を中心に出店していたことも幸いした。消費者は、遠くのスーパーに車や地下鉄でいくなら、ECサイトで買ってしまおうと考える。でも、歩いていける近所であったり、通勤経路にあるのであれば、スーパーで買い物をするのだ。

ウォルマート、カルフールは、ここに気づいて、都心小型店の出店を始めているが、永輝は奇しくも、ずっと前からECサイト時代に対応した戦略をとっていたことになる。

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▲Bravoは高級食品を扱うスーパー。富裕層や都市生活者を取り込む。

 

デジタル化しなくてもデジタル時代は生き残れる

永輝のデジタル対応は早いとは言えない。ようやく昨年から、ECサイト「京東」と協業して、グローサラント業態の「超級物種」を始めたところだ。アリババのフーマフレッシュに対抗する店舗だ。

それでも、既存スーパーの中では唯一成長をしている。差別化をするために逆張りをしながら、自分たちの立ち位置を模索し続けてきた結果だ。このデジタル時代に、市場感覚のアナログスーパーが成長をしている。この事例に学ぶべきことは多い。

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▲永輝生活は、コンビニ店舗。24時間営業で、都心を中心に展開する予定だ。

 

 

中国ファミリーマートが24時間宅配。夜間は来店売上を上回る

中国ファミリーマートが主要都市で、外売サービス「ウーラマ」と提携して、24時間宅配サービスを始めた。すでに夜間は、来店の売上よりも宅配売上の方が上回っていると南方plusが報じた。

 

配達代行が本質の外売サービス

中国で急速に普及した外売サービス。出前の配達サービスだが、一般の出前と異なるのは、提携レストランに料理を受け取りにいき、配達をしてくれる点だ。そのため、多くの料理店が外売に対応し、スマートフォンからほとんどの料理店の料理を出前注文できるようになった。以前は自分で買いにいく必要があったので、わずか10元(約170円)程度で持ってきてくれるのだから、誰もが便利に感じ、急速に普及をした。

ビジネス的にも、外売は将来性がある。料理店が運営するのではなく、独立したサービスであり、本質は「配達代行」だ。なので、料理に限定する必要はない。スーパー、コンビニの買い物代行、モバイルバッテリー、雨傘などのシェアリング商品(レンタル)、クリーニング、日用品などあらゆる「宅配」に対応することができる。

さまざまな商品を扱うことで、配達効率はあがっていくので、まだまだ成長空間が存分に残されている。

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▲料理を配達してくれる外売サービス「ウーラマ」。現在は料理だけではなく、コンビニやスーパーの商品なども手がけるようになり、配達代行サービスとして生活に定着しつつある。

 

配達料85円で、コンビニの商品も

今年3月、ウーラマはファミリーマートと提携をして、北京、上海、杭州成都、深圳、広州、東莞、蘇州、無錫の9都市で、コンビニの商品の24時間配送を始めた。20元(約340円)以上の購入で配送に対応し、配達料は5元(約85円)。最短30分で自宅に配達してくれる。

ファミリーマートは、2015年から上海でウーラマによる配達の試験運用を重ねていた。それが今年3月に9都市に正式展開し、5月は前月の2.5倍の注文を受けている。

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▲ウーラマの配達員が注文された商品をファミリーマートで受け取り、配達する。すでに深夜帯では、来店売上よりも宅配売上の方が多いという。

 

深夜帯にも売上が立つようになった

ファミリーマートの担当責任者が南方plusの取材に応えた。「ウーラマと提携して大きく変わったのが、店舗の夜間の売り上げです」。夜9時から深夜2時の間のウーラマによる宅配売上は、全体の13.6%にもなり、同じ時間帯の来店客売上をはるかに超えている。「スーパーはだいたい10時頃に営業終了するので、そこからの売上が大きくなります。スーパーに比べて、コンビニは商品のピックアップも早いので、配送時間全体も短くなります」。

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ファミリーマートは、外売サービス「ウーラマ」と提携をして、24時間宅配サービスを始めた。

 

売れるのは飲料とアイス、ポテチ

ウーラマによると、深夜に売れているのもの、水、コーラ、烏竜茶、アイス、ポテトチップだそうだ。

現在、決済システムの連携ができてなく、ファミリーマート側で商品をピックアップした後、ウーラマの配達員がレジで決済をしている。ウーラマとファミリーマートはこの決済システムを連携させる開発にすでに入っている。

ライバルである美団外売は国内系コンビニを中心に同様の配達サービスを始めている。中国では、コンビニの商品は24時間いつでも宅配してもらうことが当たり前になりそうだ。

 

中国IT企業の勤続年数は3年以下。福利厚生で離職は食い止められるか

中国人は転職を繰り返すのが当たり前で、元々勤続年数は長くない。そのため、IT企業は長く勤めてもらうために、住宅資金を無利子で貸し付けるなど福利厚生を充実させ始めているとHR実名倶楽部が報じた。

 

アリババの平均勤続年数はわずか2.47年

アリババのジャック・マー会長は「4倍の給料を提示しても、アリババの社員を引き抜ことはできない」と豪語したことがある。それだけアリババは社員に対して福利厚生を厚く行い、社員もアリババを信頼して働いてくれているという意味だ。しかし、アリババの平均勤続年数は、わずか2.47年でしかない。これはどういうことだろうか。

この2.47年という数字は、日本人から見ると、とても短く感じてしまうが、中国のIT企業の中ではかなり長い方になる。IT系で長いのは、携帯電話キャリア中国聯通、中国移動、中国電信でそれぞれ4年以上、携帯電話メーカーのファーウェイが4年となっている。しかし、純粋なIT企業になると3年以下というのが一般的だ。あのシャオミーも1.72年にすぎず、シェアリング自転車のofo、Mobikeになると1年以下だ。

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▲中国IT企業の平均勤続年数。携帯電話キャリア、メーカーは比較的長め。いわゆるIT御三家のBATは2年+。それ以外のIT企業は2年以下。シェアリング自転車企業に至っては1年以下だ。さすがに1年以下というのは短すぎるのではないか。

 

無利息住宅ローンで離職を食い止める

そのため、各IT企業とも、福利厚生プログラムを導入して、勤続年数を伸ばす施策を打っている。

テンセントは10億元(約170億円)の資金を投入して、安居計画を2011年から実行している。勤続3年以上になると、住宅購入資金を最高50万元(約850万円)まで無利息で借りられるプログラムだ。

アリババも同様のプログラムを実施していて、それはiHome計画と呼ばれている。30万元(約500万円)までの住宅資金を無利息で借りられるプログラムだ。さらに、アリババは杭州市の本社近くに380戸のマンションを建設し、相場の6割程度で社員に販売をしている。

また、iHelp、iHopeと呼ばれるプログラムも実行していて、家族が重大な病気にかかった場合に、一定額の支援金を支払うものだ。

百度、ファーウェイ、シャオミーなども規模は違っても同様の福利厚生プログラムを行っていて、勤続年数を少しでも伸ばそうとしている。

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▲アリババが建設をした杭州市の専用マンション。380戸が入居でき、相場の6割程度の価格で購入できる。もちろん、アリババ提供の無利子ローンも利用できる。

 

社内の食堂、ジム、カフェも、離職を食い止めるため

しかし、勤続年数は長ければいいというものではない。社員が失望をして転職するというネガティブな離職は避けなければならないが、起業するために辞職するなどのポジティブな離職は大歓迎だからだ。事業内容が有望で、資本関係を結べるのであれば、それは理想的な離職であると言える。

また、勤続年数が短いということはそれだけ新陳代謝が行われているということでもある。

各IT企業は、ネガティブな離職を減らすために、一種、サービス業のように福利厚生を考え始めている。無料の食堂、無料のジム、無料のプール、無料のカフェといった設備を備えるのも、ネガティブな離職を減らすためのひとつの方法だ。

いまや企業は、一種のサービス業になっている。優秀な顧客=社員を集め、リピーターになってもらうために、あの手この手を講じているのだ。

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▲アリババ本社内のジム。

 

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▲アリババ本社内にある図書館。各企業ともまるでサービス業のように、このような施設の充実を競い合っている。

 

シリコンバレー企業も勤続年数は3年前後

シリコンバレーのIT企業も勤続年数は決して長くない。シスコシステムズ、オラクルといったBtoB企業はさすがに7年以上になるが、アップルで5年、グーグルは3.2年、フェイスブックは2.5年にすぎず、中国IT企業とあまり変わらない。ウーバーに至っては1.8年と、中国IT企業よりも短いくらいだ。

一方で、日本はどうかというと、勤続年数ランキング500社の中に、IT系企業はほとんど見当たらなかったが、それでも無理やり関係ありそうな企業を拾って見ると、NECソニージャパンディスプレイが18年以上になっている。

勤続年数の評価は難しい。長ければいいというものではないし、短いからだめということでもない。長ければ安定をし、短ければ新陳代謝が進む。要は優秀な人には長く勤めてもらい、そうでない人には早々と離職していただくということなのだが、それは簡単にできることではない。

どの国の企業も、優秀な人材の確保には頭を悩ませているようだ。

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▲米国IT企業の平均勤続年数。いわゆるシリコンバレー企業は3年ぐらいの感覚。アップルは比較的長めになっている。ビジネスインサイダー記事(http://www.businessinsider.com/average-employee-tenure-retention-at-top-tech-companies-2018-4)より作成

 

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▲日本企業の平均勤続年数。上位500社のリストだが、IT企業らしいIT企業はほとんどランクされていない。中でもIT寄りの企業を拾って見ると、いずれも18年以上となった。東洋経済の記事(https://toyokeizai.net/articles/-/172342)より作成。

 

出前は空を飛ぶ。渋滞しててもドローン利用で最短20分で配達

出前配達サービス「餓了么」が、上海市でドローンによる出前料理の配達を始めた。現在試験運用中だが、実際の注文をさばいている。本格運用が始まると、配達員の移動距離は15%に激減すると新華網が報じた。

 

上海で、出前料理のドローン配送始まる

外売=出前配達サービス「餓了么」(ウーラマ、お腹すいたよね?の意味)が、上海市でドローンによる出前料理の配達を始めた。現在、試験運用中ではあるものの、すでに実際の注文を取り、従来最短30分配送であったものが、20分程度に短縮できている。

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▲ウーラマが開発したドローン。ドローンだけで配送をするのではなく、ドローンと人を組み合わせて、効率的な配達を実現している。

 

工業団地地区に17の飛行ルートを設定

と言っても、利用者宅にドローンが配達するわけではない。上海市金山工業園区域58キロ平米の地域に、17のドローン飛行ルートを設定。約100軒のレストランと、配送拠点をドローンで結ぶ。レストランには専用の収納ボックスを置いておき、注文が入ると、この収納ボックスに料理を入れる。ドローンがやってくるので、箱を載せると、配送拠点まで運ぶ。配送拠点には、配達員が待ち受けていて、従来通りバイクで配送するというものだ。

飛行ルートは最長で3.5km、最短で1.5km。平均で2.2kmであるという。

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▲ドローンは、レストランから配送拠点まで料理を運ぶ。配送拠点からは従来通り配達員が運ぶ。これで、配達員の配達移動距離は従来の15%に激減するという。

 

ドローン+人で効率的な配達を実現

金山工業園は、上海市の西南の外れ、杭州湾に面した工業団地地区。企業の本社や工場などが多く、一般の住宅は少ない。このような地域であれば、万が一墜落などの事故が起きても影響が少ない。

また、工業団地内は企業社屋や工場ばかりで、レストランがある繁華街とは離れている。そのため、外売サービスを利用する人が多く、配達員はレストランがある繁華街と工業団地を何度も往復しなければならなかった。遅れるわけにはいかないので、配達員は猛スピードでバイクを走らせる。その無謀な運転が問題になっていた。

ここにドローンを導入することで、配達員の負担を減らす狙いがある。

 

配達員の移動距離は15%に激減

料理の受け取りをドローンが担当し、利用者への配達は従来通り人間が行う。しかし、注文をしたスマートフォンの画面には、配達員の名前が個人名でなく、なぜか「無人機配達員」と表示される。利用者から「ドローンじゃなくて、人間が届けにきたけど」という問い合わせが顧客センターに数件あったという。

ウーラマ側では、システム上の問題であり、早急に修正をしたいとしている。また、ウーラマによると、このドローン配送が本格運用をすれば、全配送ルート距離の70%がドローンによるものになり、往復回数が減るので、1人の配達員が1日に走る距離は15%に激減するという。

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▲ある利用者がウーラマで出前を注文したら、配達員の名前のところに「ドローン配達員05」と表示された。従来はこれをタップすると、配達員に直接電話ができる。「どうやって連絡したらいいんだ」と顧客センターに何件かの問い合わせがあったという。ウーラマ側では、システム上の問題であり、最終的に配達を担当する配達員の名前が出るように早急に修正したいとしている。

 

管理センターと事故保険で万が一の事故に対応

試験運用中は、各飛行ルートとも3往復から4往復に制限をしている。この試験運用期間に問題点を洗い出す予定だ。

ドローンの動きは、センターの監視員がリモート管理をし、万が一の事故の場合には、すぐに適切処置が取れるようにしている。また、保険会社と共同し、墜落などによる物的被害、人的被害も保障できる体制を整えている。

 

労働集約企業から技術集約企業へ

ウーラマの康嘉運営官は、解放日報の取材に応えた。「このドローン配送ルートの運用は、ウーラマの未来物流戦略の重要な第一歩になります。私たちは、労働集約企業から、技術集約企業に進化をします。従来は最短30分配送でしたが、ドローンを活用することで、20分配送時代がやってきます」。

ウーラマでは、この他、配達ロボットの試験も始めている。これは主にオフィスビルの中で配達をするロボットで、エレベーターに自分で乗る機能も研究されている。ウーラマでは、年内にこのロボットを500のオフィスビルで運用を始めたいとしている。

今年中に、ドローンが料理を受け取り、人間が配達し、ビル内はロボットが届けるという体制が完成するかもしれない。

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▲ウーラマが開発した配達ロボット「万小餓」(ワンシャオウー)。オフィスビルの中で、配達を行う。配達員は、ロビーなどでこのロボットに配達をするだけでよくなる。

 

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▲万小餓は、エレベーターにも自分で乗ることができ、上層階の部屋にも配達をしてくれる。

 

 

日本人が中国で作った炊飯器が日本に逆上陸?

中国のスマートフォンメーカー「シャオミー」は、数々の家電製品も開発、販売している。その中の圧力IH炊飯器は、元三洋電機の日本人エンジニアが開発をした。この炊飯器「米家」が日本でも販売され、中国で話題になっていると水素科技が報じた。

 

シャオミーの炊飯器は、2年で100万台突破

中国スマートフォンメーカー「小米(シャオミー)」。雷軍CEOは、スティーブ・ジョブズのような出で立ちで、製品発表をすることから、「中国のスティーブ・ジョブズ」ともかつては呼ばれた。

そのシャオミーは、現在、家電製品を次々と開発している。そのうちの、炊飯器「米家圧力IH炊飯器」が、発売2年で100万台を売った。ただし、この数はそう大きいものとは言えず、まだまだ一部のファンが買っているというのが実情だ。なぜなら、日本国内の出荷台数は年間600万台程度であり、中国の出荷台数は年間5000万台程度だからだ。

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▲中は、日本製炊飯器と同じ感覚。鉄釜は7層からなっていて、かなりの工夫がされているという。

 

日本製品を超えることに特別な思いがある中国人

この「米家」炊飯器に、中国人は特別な思い入れがあるようだ。なぜなら、記事の中には、「以前は中国人が日本に炊飯器を買いに行ったが、今や日本人が中国に炊飯器を買いにくる」という記述がある。確かに、面白がって「米家」炊飯器を買う日本人もいるかもしれないが、それはかなり珍しいことではないかと思う。

また、日本旅行をしたある人が、日本で「米家」炊飯器が販売されているのを目撃して、写真をウエイボーにあげ、「中国では999元(約1万7000円)のものが、日本では2万4000円以上もしている。日本人は、多くお金を出しても中国の炊飯器を欲しがる」というメッセージをつけ、これがかなり拡散をした。

さらに、「米家」炊飯器を作ったのは、圧力IH炊飯器を発明した日本人なのだというコメントも見え、いろいろ、明らかな嘘というわけではないにしても、白髪三千丈的な過剰表現が多く、それだけ中国人にとって、「日本の炊飯器を超えた」ということが自尊心をくすぐっているのだと思われる。

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日本旅行をした人が、「日本でも米家炊飯器が販売されていた!」とウェイボーに投稿して話題になった写真。日本米に適合するようにしてきたら、日本でも売れてしまうのではないだろうか。

 

米家の開発責任者は「おどり炊き」のヒット開発者

「米家」炊飯器が日本の炊飯器を超えたかどうかは、微妙なところだが、公平に見て、じゅうぶん日本製と肩を並べるところまできていると言うべきだ。少なくとも、「粗悪な中国製」というイメージはどこにもない。

まず、開発責任者となったのが、元三洋電機関連会社出身の内藤毅氏。この方は、苦戦をしていた三洋電機の炊飯器部門で、「おどり炊き」という新しい方式を開発し、それを鳥取三洋で製造し、ヒット商品にした人物だ。覚えている方も多いと思うが、鳥取三洋は当時、おどり炊き炊飯器やau用のストレートケータイ「インフォバー」、ポータブルカーナビ「ゴリラ」などの尖った製品を開発し、「三洋電機がなくなっても、鳥取三洋は別会社として生き残れる」と言われていた企業だ。現在でも、三洋電機とは別に三洋テクノソリューションズ鳥取として、ヒット商品を開発、製造している。

「おどり炊き」は最初のIH炊飯器で、その意味では、内藤毅氏を「圧力IH炊飯器の発明者」と表現するのはあながち間違いとは言えない。雑誌「通販生活」などで取り上げられヒット商品となり、料理のプロに愛好されるという優れた製品だった。

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▲開発責任者の内藤毅氏を紹介した雷軍CEOのウェイボーメッセージ。「優れた炊飯器を開発して、日本に売る」と宣言している。

 

機能はアプリに、デザインはシンプルに

確実に日本製品を超えているのが、デザインとインタフェースだ。白一色の外観であり、日本の炊飯器にありがちなごちゃごちゃした液晶表示がほとんどない。LED時刻表示などは、カバー下に埋め込まれ、スイッチを入れた時だけ表示される。通常は、何も表示されない白い箱になる。

日本市場は「多機能なほど売れる」状況が続いていて、多くの炊飯器が「玄米」「炊き込みご飯」「おかゆ」「おこげ」などといった機能を、液晶にでかでかと表示をする。売り場で機能を消費者にアピールするために、デザインを犠牲にしているのだ。

さらに、シャオミーらしく、専用アプリから炊飯や予約などの操作ができる。米家はケーキ、ヨーグルト、蒸し煮などが作れる機能もあるが、それはアプリに入れてしまい、本体デザインはあくまでシンプルにしている。

デザインとIoT連携。この点では、悲しいことだが、日本製品よりも優れていると言わざるを得ない。

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▲非常にシンプルなデザイン。炊飯中に、時刻と炊飯の進行を示すリングのLEDが点灯する。ご自宅の日本製炊飯器とぜひ比べていただきたい。

 

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▲シャオミーの家電は、スマートフォンで操作できるのが当たり前になっている。様々な機能は専用アプリに入れてしまうので、本体デザインをシンプルにできる。

 

どんどん安くなる本体価格

肝心の炊飯機能については、評価のしようがない。内藤毅氏が開発を担当しているので、レベルは高いと思うが、当然ながら中国のお米に適合するようにしているはずなので、そのまま日本のお米を炊いた場合は実力を発揮できないところもあるはずだ。「米家」炊飯器は価格999元(約1万7000円)、後に599元(約1万円)と399元(約6800円)の2種類を追加販売している。炊飯容量を小さくしているが、先行している機種と性能、品質は同じ。量産効果により価格を下げられたのだとシャオミーは言っている。雷軍CEOも、シャオミーはハードウェアでは5%以上の利益を出さないようにしているので、時間とともに価格を下げていくと公言している。

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エンジニアは、お金よりもやりがいを求めている

内藤毅氏自身も、インタビューの中で「中国の開発者のレベルは高い」と言っており、しかもデザインと品質のチェックに関しては、明らかに日本よりも厳しいという。

日本の優秀なエンジニアが、中国で仕事をする時代になろうとしている。本気で考え、優秀なエンジニアに「やっぱり日本で仕事をした方がいい」と言わせるようにしないと、取り返しのつかない事態になる。エンジニアたちは、高い報酬に目がくらんで中国に行っているのではない。思い切った仕事をさせてくれるから、やりがいを求めて中国に渡るのだ。

内藤毅氏は、シャオミーに誘われた時、こう答えたという。「優れたエンジニアは、永遠に優れた製品を作り続けたいと願うものなのです」。

 

出前はつらいよ。外売配達員が業務内容を公開

中国の都市部で生活に定着している外売サービス。レストランの出前代行だ。この配達員は、地方出身者が多く、仕事は忙しくつらい。その外売配達員のA外売小黄人が、業務アプリの内容を公開して話題になっている。

 

ほとんどのレストランが対応している外売サービス

中国のレストランのほとんどは、「お持ち帰り」に以前から対応している。食事をした時に、食べきれないものを包んで持って帰るというのはごく自然な習慣だ。中華料理の多くは火が通してある料理で、冷めても温め直せば美味しく食べられる。そのため、多めに注文して、翌日の朝食や昼食用に持って帰ることもある。

このような習慣があったため、外売サービスは一気に広がった。スマートフォンアプリから注文をして、お持ち帰り用の料理を作ってもらい、それを配達員が取りに行って、自宅まで配送してくれる。出前というよりは、受け取り代行サービスだ。

そのため、ほとんどの料理店がこの外売に対応している。また、マクドナルド、ケンタッキーなどのファーストフードも対応をしている。アプリの中から、ほとんどの料理を注文することができるのだ。

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▲急ぐ外売配達員。大都市だけでなく、地方都市まで外売サービスが普及をし、出前を利用するのが当たり前になっている。

 

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▲外売サービス「美団外売」アプリ。近所のほとんどのレストラン、チェーン店の料理が注文できる。この店は配達料が8元(約130円)だった。配達料は、ピークの時間帯、距離、店によって異なるが、10元を少し下回るぐらいが相場。

 

利用客の評価がすべて。それでサービスの質を維持する

配送は最短30分。配送料は、距離や時間帯、料理店にもよるが、1回の注文で10元(約170円)弱というのが相場だ。配達員はこのうちの6元から7元程度が自分の収入となり、残りが外売サービスを提供している企業の収入となる。

この外売サービスの特徴が、利用者が配達員を評価できる仕組みがあるという点だ。この評価が低くなると、報酬が下げられたり、場合によっては一定期間仕事ができなくなる。

極めて中国的なのが、低い評価=クレームの場合でも、内容は問わないということだ。例えば、悪天候や渋滞という不可抗力で配達が遅れた場合でも、配達員は言い訳ができず、低評価をつけられてしまうことがある。

配達員がかわいそうにも思えるが、配達員に落ち度がない不可抗力であっても、それがあまりに多すぎる配達員は、なにか問題があるのだと考えられる。遅れた場合でも、謝り方を工夫をすれば、評価は急には低くならない。そういうやり方で、配達員に自分で工夫をすることを求めている。

配達員をするのは、農村の出身者が多く、ひどい言い方をすれば、「嫌なら代わりはいくらでもいる」ということで、工夫をしない配達員を排除し、サービスの質を維持しているのだ。

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▲ネットで拡散した写真。外売配達員が、料理ができるのが待ちきれず、自分で作り始めてしまったという写真。

 

配達員はつらいよ。実情を公開した配達員

そのため、配達員のストレスは大きい。最も多いのが、指定した時間に配達したのに留守というパターン。配達員は、なんとしても利用者に連絡を取って届けなければならない。

そういうことから、A外売小黄人は、業務アプリのスナップショットを公開して、利用者に配達員のことを少し考えてほしいと訴えた。A外売小黄人は言う。「料理が届かず、お腹が減っても、人間がそれを届けているとは考えないでしょう?それが外売配達員なのです」。

 

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上図では、アイコンが配達員の現在地。「取」というのがレストランで、料理の受け取り地点。料理についてはすでにレストラン側の業務アプリに注文が送られているので、料理がされている。これを取って「送」の場所に届ければいい。非常によくできていて、チャートが示す通り、受け取りと配送をしていけばいいようになっている。

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上図では、5軒のレストランで料理を受け取り、7カ所に配達をすればいいかのように見える。しかし、黄色い受け取り指示ラインがあることに注意していただきたい。これは、配達用のスクーターに、一度にすべての料理を載せられないことを示している。つまり、料理を2回にわけて、このルートを2周しなければならず、意外に時間のかかるパターンなのだという。

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上図は配達員にとってとてもありがたいパターン。5軒のレストランで料理を受け取り、4カ所に配達する。すると、収納にスペースができるので、さらにもう1軒で料理を受け取り、最初から積んである料理と合わせて、4カ所に配達する。受け取りと配達がうまく組み合わされていて、とても効率よく配達できる。つまり、配達員にしてみれば、「稼げる」というわけだ。

どの注文を請けるかは、配達員が決め、しかも早いもの順。配達員は、どの注文を請ければ、配達が効率的になるかを考えなければならない。あまりに欲張りすぎると、配達に遅れることになり、低評価をつけられてしまう。意外に頭を使う仕事なのだ。

 

配達員からも利用客からもさまざまなコメント

A外売小黄人によると、外売配達員は、常に12人分の注文を受けて、それをひとつひとつこなしているのだという。「だから常に忙しいのです。連絡つかない人に当たってしまうと、その後の配達がすべて遅れてしまいます」と、利用者に対して訴えている。

また、この記事には、外売配達員と思われる人のコメントが無数についた。その中には、

「2年ほど配達員をやったけど、稼げなくて、嫁さんに逃げられた。免許証は警察に取り上げられた。借金もできた。日に焼けて色も黒くなった。時間の無駄だった」

「昼食の時間帯はものすごく忙しい。お願いだから、電話してきて、ついでにタバコ買ってきてとか水買ってきてというのやめて。配達が遅れて、低評価つけられちゃうんだから」というコメントもある。

また、利用者からは、

「僕は遅くても催促したことない。夕食が少し遅れても、人が死なないほうがいい。配達員は命を支払っているのだから」

「注文受けるときに、間に合わないとどうして判断できないの?配達員が大変で、そこは同情するけど、君たちが信号無視しているの見ると、低評価つけちゃうよね」

「2時間遅れて、夜10時に配達されて、料理はすっかり冷めていた。でも、配達員の態度が誠実だったから、高評価付けたよ」などのコメントがついている。

日本でもすでにウーバーイーツがこの外売とほぼ同じサービスを始めている。配達料は380円。中国のように外売が普及していくだろうか。

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ファーウェイが折り曲げ可能スマホを11月に発売か

サムスン、アップルなどが開発を進めているといわれる「折り曲げ可能なスマートフォン」。このレースを制するのはファーウェイになるかもしれないと科技威壱が報じた。

 

ファーウェイが折り曲げられるスマホを開発中

ファーウェイが今年11月にも折り曲げ可能なスマートフォンを発売することが現実味を帯びてきている。

以前、ファーウェイの消費者業務責任者の余承東氏が、ウェイボーで「ファーウェイは現在びっくりするような技術を研究している。特許申請をしている最中だと発言して、さまざまな憶測を呼んでいた。ある人は、その後発売になったスマートフォンP20のことであると考え、ある人は、また別の技術のことだと考えた。

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▲ファーウェイ発表の動画より。ものすごく曲がっている。腕に巻きつけることもできるようになる。

 

計画通りいけば今年11月にも発売

しかし、さまざまな映像がネットに流れ、ファーウェイの「びっくりする技術」は、折り曲げケータイではないかと言われるようになっている。ファーウェイは京東方と共同して、折り曲げケータイを開発していて、その計画では今年11月の発売を目指しているという。

もし、それが実現すれば、同じく折り曲げケータイを開発中のアップルやサムスンよりも先に市場に投入できることになる。

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▲OLEDは簡単に曲げられるので、それを支える台座部分を工夫することで、可動箇所を増やすことも可能だ。ただし、OLEDの耐久性など課題も多いと言われている。

 

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▲ファーウェイが出願している特許図面。折り曲げられる台座に、曲げられるOLEDを貼り付けるという製造法のようだ。

 

ウェアラブルスマホの境界線がなくなる

ファーウェイの折り曲げケータイは、第6世代の有機ELディスプレイ(OLED)を採用していて、関節部分から折り曲げることができる。参考モデルでは関節が複数のものも映像にあり、この場合は、腕輪のようにまるめて、腕につけることも可能になる。ウェアラブル端末との境界がなくなり、スマートフォンは手に持つものから、体につけるものになるかもしれない。

ファーウェイはこのような折り曲げケータイの試作モデルの映像をメディアに公開し、消費者の反応を測定しているという。

もし、11月に市場投入できれば、常に最新技術を最初に搭載することでシェアを拡大してきたサムスンには大きな打撃になる。


截胡三星!华为可折叠手机将于11月亮相:售价破万,你买不买都摆在那了

▲ネットメディアニュースの報道。ファーウェイが公開している参考モデルを複数紹介している。