中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

復活するシャオミー。中国のアップルではなく、中国の無印商品になりたい

しばらく低迷していたシャオミーが、ここのところ元気だ。iPhone 8よりも先にベゼルレススマートフォンMi MIXを発売し、中国国内で好調に売れている。その雷軍CEOがイエール大学北京校で公演を行い、「中国のアップルではなく、中国の無印商品になりたい」と述べた。その意図はどこにあるのか、36が報じた。

 

奇跡のシャオミーもここ数年は迷走

アップルが世界でスマートフォン革命を起こしたとしたら、シャオミーは中国でスマートフォン革命を起こした。2007年に登場したiPhoneは、翌年のiPhone 3GS発売前後から、世界のITビジネスと生活を変え始めた。しかし、当時の中国人にとっては、iPhoneは高価なスマホであり、一部の富裕層でなければなかなか購入することができなかった。

そのような状況の2010年、スタートアップのシャオミーは、iPhoneと遜色のない性能、遜色のないデザインのAndroidスマホを、iPhoneの半額程度の価格で発売し、中国にスマホ革命を起こし始めた。2015年には、世界での売り上げランキングがアップル、サムスンに続く第3位となり、「シャオミーの奇跡」とまで呼ばれた。

しかし、OPPOやvivoなどのライバルが登場してくると、次第に存在感が薄れていき、ランキング圏外に消えてしまった。すると、シャオミーは家電の製造に乗り出し、炊飯器などを開発するようになる。いずれも価格も手頃でデザインも優れていたことから好評ではあったが、自動開閉雨傘なども発売し、一体何屋なのかわからない状況となり、売り上げも低迷し、企業の方向性も迷走するようになってしまった。

 

iPhoneよりも先にベゼルレススマホを発売

しかし、2016年秋に発売したスマホ「Mi MIX」がヒットした。世界で最初にベゼルレスデザインを取り入れた機種だった。スピーカーの位置などを工夫し、前面はすべて画面という縁なしスマホだ。

雷軍CEOは、このベゼルレスデザインは、2014年の初めから研究をしていたという。それがMi MIXに結実して、シャオミーは再びスマホメーカーとして注目されることになった。改良版のMIX2は、折しもベゼルレスデザインのiPhone Xと発売時期が重なった。それでも雷軍CEOは、圧倒的な自信を持っている。「ベゼルレスデザインはシャオミーがリードをしてきました。関連特許も4806件を保有しています」。

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iPhone Xと同時期に発売されるMi MIX2。ベゼルレスデザインは、iPhone Xよりも先にシャオミーが手がけていた。中国のスマホユーザーは、iPhone Xに斬新さを感じていない。

 

iPhoneと対決する時に輝くシャオミー

面白いことに、以前のシャオミーは、iPhoneに対抗するスマホを発売する企業としてシェアを伸ばしてきた。雷軍CEOは、ジーンズにスカイブルーのシャツというカジュアルなスタイルで発表会に登場し、一挙手一投足までスティーブ・ジョブズを研究し、「中国のジョブズ」と呼ばれ、シャオミーは「中国のアップル」と呼ばれた。

その後、家電製品を開発するようになると、低迷が始まり、再びiPhone Xに対抗するMi MIXで注目を浴びるようになっている。不思議と、iPhoneと対抗する製品を発売すると、シャオミーは輝くのだ。

しかし、雷軍CEOは「中国のアップルになろうとは考えていない」と断言する。「創業した時の想いは、中国の製造業を変えたいということでした。中国人の国産品に対するイメージを変えたいということでした。中国の高いものづくり能力をどう活かせば、世界でトップクラスの製品が作れるか。それを考えていました」。

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▲一時は迷走をして、消えてしまうのではないかとも言われたシャオミーは、ベゼルレスデザインで復活を遂げた。中国のスティーブ・ジョブズと呼ばれた雷軍CEOの表情も明るい。

 

テクノロジー界の無印良品になりたい

シャオミーは、テクノロジー界の無印良品になることを目指しているのだという。「設計を重視し、品質を重視する。たくさんの商品を組み合わせることができる。インターネットを使って、オンラインでも店舗でも同じような購入体験ができる」。そういう企業を目指している。

無印良品ではほとんどすべての生活雑貨が販売されている。決して、過度な高級さないが、品質が高く、デザインも優れている。さらに、その背後にはエコやミニマムという思想があることがわかる。

生活雑貨はすべて無印良品を買うという人も多いだろう。しかし、それはアップルのように熱狂的な“信者”ではなく、無印良品の企業活動を支持する“静かなる支援者”だ。シャオミーは、家電製品、電子製品の世界で、無印良品のような“静かなる支援者”を増やそうとしている。

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イエール大学北京校での雷軍CEOの講演。雷軍CEOは、静かに率直に心のうちを語った。

 

創業してすぐにアップルやサムスンと対決

雷軍CEOは、中国のビジネスの最大の問題は効率の悪さだと言う。メーカーから消費者の手に渡るまで、さまざまな問屋、仲買人の手を経ることになり、その度に利益が乗せられ、消費者小売価格は、品質に見合わない高額になっている。シャオミーが最初にやったことは、この販路をショートカットし、無駄なコストを削減することだった。それが、「広告はしない、定価販売のみ」のネット直販方式につながった。

雷軍CEOは、聴衆の前で創業以来の7年間を振り返った。「創業した時は、10数人のメンバーで3000万元(約5億円)の投資資金で始めました。そんな小さなメーカーが、いきなりアップルやサムスンという世界的な企業と競争をすることになったのです」。

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▲講演後に、イエール大学北京校センター、李恩祐主任からイエール大学のフリースが贈られた。

 

進化すればするほど退屈になるスマホはいったいなんなのだ?

「ベゼルレスデザインの研究を始めた2014年、私はエンジニアたちとあることについて議論をしていました。それはスマホ開発は、やればやるほど退屈になっていくのはなぜなんだ?というテーマです。答えは明らかでした。iPhoneがその後10年のスマホのデザインを決めてしまい、私たちはみなiPhoneという枠の中でスマホを作っていたからです。ですから、未来のスマホを作るには、iPhoneの枠を超えたものを作るしかない」。

そこで出てきたのが、透明の板に必要な時だけ画面が表示される透明スマホと、前面すべてが画面になるベゼルレスデザインだった。その内のひとつ、ベゼルレススマホがMIXとして結実し、シャオミーは復活を遂げた。

後継機種MIX2は、46カ国の市場で販売される。再び、シャオミーの奇跡が起ころうとしている。