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メガネ率が増える中国。小中学生で半数以上、高校生では8割以上。なぜ近視が増えるのか

中国の子どもたちの目に問題が起きている。小中学生では半数以上、高校生では8割以上が近視になっている。近視に対する誤った考え方と、学習第一で屋外で過ごす時間が短くなっているのが原因だと藍橡樹が報じた。

 

児童で50%以上、高校生で80%以上のメガネ率

中国の子どもたちの間で近視が増加していることが社会問題になっている。2018年に、国家衛生健康委員会が発表した「全国児童青少年近視調査報告」では、小中学校の児童の近視率は53.6%となり、諸外国に比べ突出して多く、社会的な関心事となった。

また、2021年に北京大学中国健康発展研究センターが発表した「情報化時代の児童青少年近視予防報告」では、児童の近視率は60%を超えていると報告をされている。同じ基準の調査ではないとは言え、わずか3年間の間に近視率が大きく増加をしたことになり、それは多くの教育関係者、親などの実感とも符合する。

さらに、高校生だけに限ると近視率は80.5%で、眼鏡をしていない方が少数派になっている。さらに報告書は10年以内に、中国の近視患者は9.6億人になり、最悪のシナリオでは11億人に達することもありえるとしている。

▲メガネ率が高くなる中国の子どもたち。小中学生では半数以上が近視になっている。

 

小学生の間に近視が増加をする

近視率が増加するのは小学生の間だ。小学校1年生では15.7%であるものが、小学校6年生になると59.0%までになる。中学校の3年間ではわずかしか増えない。近視になる年齢が低下をするということは、後の高校生、大学生、成人になった時に強度近視になる確率が高くなるということだ。強度近視になると、眼鏡で補正するだけは済まず、眼疾患の発症リスクも高まっていくことになる。

オーストラリア国立大学のブライアン・ホールデン教授によるアジア人の児童629人に対する追跡調査でも、6歳で近視になっても、対応をして近視の進行を抑えることにより、強度近視になることを避けられることがわかっている。

▲高校生では8割が近視。過剰な学習へのプレッシャーで、屋外で過ごす時間が短くなっているのが原因だと言われている。

 

近視は予防が第一、3歳からの視力検査が有効

このように中国で近視が多い理由は、誤った俗説や習慣が根付いてしまっているからだ。多くの親は、子どもからの「黒板がはっきりと見えない」という訴えを聞いて、視力検査を受けさせ、近視であることを知る。しかし、眼科医は3歳までに視力検査を受け、以降は6ヶ月ごとに受けることを勧めている。近視になってから対処するのではなく、近視になる前に対処することで、将来強度近視になるリスクを軽減することができるとしている。

また、多くの親が「近視は成長とともに治ることがある」と信じている。成長期にある子どもは、近視の症状が一時的に改善されたかのように見えることもあるが、基本的には近視は進行をしていく一方になる。そのため、「しばらく様子を見る」は悪い選択で、少しでも子どもの視力に問題を感じたら、眼鏡屋ではなく眼科医に行き、精密な検査をしてもらい、眼科医のアドバイスに従って対処することが重要だ。また、「眼鏡をかけると近視の進行が早くなる」も俗説にすぎない。むしろ、見づらいのに眼鏡をしていないと、一生懸命見ようとして目の筋肉を酷使することになり、かえって近視の進行を早めてしまうことがある。

▲近視を和らげる目のトレーニングもある。近視は予防が大切で、専門家は生後3歳までに視力検査を受けることを推奨している。

 

屋外で過ごす時間が短すぎる子供たち

中国の子どもに近視が多い理由は、学校の勉強のプレッシャーが大きく、屋外ですごして遠くの風景を見る時間が少ないことが原因だ。67%の児童が屋外ですごす時間が1日2時間未満であり、29%の児童が1日1時間未満だった。73%の児童が必要とされる睡眠時間をとれていない。

さらに、そこに電子デバイスの使用が増え、近視率を上昇させていると考えられている。電子デバイスも「明るすぎると目に悪い」という俗説があり、画面を暗くして使わせている親がいるが、これも近視をかえって進行させてしまう。目の健康にとって必要なのは、周囲の明るさと画面の明るさの差をつくらないことだ。明るさの差があると、目の調節機構が忙しく動いて、目を疲労させることになる。多くのデバイスでは、外界の明るさを測定して、画面の明るさを自動調節する機能がある。それを使うのが最も安心できる。