スーパーが軒並み悲惨とも言える業績になる中で、躍進をするスーパーがある。ドイツ系の「ALDI」だ。ALDIは低所得者層をターゲットにしたハードディスカウントスーパーだが、PB商品を90%以上にするなど、安さ以外の魅力でも、お客を惹きつけていると鈦媒体が報じた。
惨敗するスーパーマーケット
日用消費を支えるスーパーマーケットが厳しい状況になっている。中国チェーンストア経営協会(CCFA、http://www.ccfa.org.cn/portal/cn/)によると、2023年のスーパトップ100社の売上高は8680億元で、前年比7.3%減となった。店舗数も2.38万店で、前年比16.2%減となった。減収と閉店の波が押し寄せている。
上位各社の業績も惨憺たるものだ。人気となったホールセラー「サムズクラブ」を擁するウォルマート以外、すべて減収減益となっている。
その中で30%成長をするドイツ系スーパー「ALDI」
ところが、規模はまだ小さいが急速な勢いで業績を伸ばしているスーパーがある。ドイツのALDI(アルディ)だ。2023年の売上高は33.3%増加し、店舗数は56.3%も増加した。現在上海市に55店舗を展開している。進出をしたのは2019年だが、2023年に一気に20店舗を増やし攻勢をかけている。
ALDIは世界18カ国で展開をし、店舗数は1万3000店以上、米国小売連盟(NRF)が発表する「NRF Top50 Global Retailers 2024」では4位にランクされる小売大手だ。
徹底したハードディスカウントスーパー
ALDIはなぜ人気なのか。すでに中国では「窮鬼スーパー」という名前で呼ばれるようになっており、徹底したハードディスカウントを行っているからだ。ALDIの際立った戦略は3つにまとめることができる。
1)市場に適合した細かい調整
ALDIの戦略は、徹底したハードディスカウントで、安さで低所得者層を取り込んでいる。しかし、これだけでは成長が見込めないので、中所得者層をどうやって取り込んでいくかが鍵になっている。この過程で、ALDIは現地の需要に合わせた細かいカスタマイズを行っている。
例えば、牛乳は国際標準では1.5Lパックになっている。しかし、中国ではこれは大きすぎ、日々の消費量に合わず、余ってしまう。ALDIのチームは、各種統計から上海市の家族数は平均で2.3人であり、1日の牛乳の消費量は1L弱であることを知り、1.5Lパックから950mlパックに変えた。そして価格もその分安くした。これで商品が動くようになった。現在、牛乳はALDIの主力商品になっている。
海外のスーパーは「大きな包装でお得」をねらいがちだが、ALDIは上海市民のニーズに合わせて細かく調整をしていった。
2)小規模店舗で運営コストを下げる
ALDIの店舗はいずれも小規模で、500平米から800平米が基準になっている。コンビニの2倍から3倍程度にすぎず、大手チェーンストアのスーパーというよりも、地元密着系のスーパーの広さだ。これを4人で運営する。
陳列も箱を開けただけの平積みを多用し、在庫管理も箱単位で簡素化をしている。招商証券の調査によると、人件費の売上高に占める割合は、一般のスーパーで10%から16%程度だが、ALDIではわずか4%になっているという。
3)商品種目を絞り、PB商品を中心にする
ALDIではSKU(Stock Keeping Unit)を2000以下に抑えており、そのうち1500は生活必需品だ。コンビニのSKUが3000程度であることを考えると、余計な商品はほぼ置いていない。さらにプライベートブランド商品の割合が90%以上になる。しかも、輸入品は少なく、80%以上は中国のサプライヤーに製造をしてもらったものだ。
このPB率は業界内でも突出しており、ALDIが進出した各国で、製造小売業のモデルを採用していることがわかる。これにより、価格を下げ、現地の消費者の信頼をつかんでいる。
安いだけではお客はきてくれない
つまり、現在の中国の経済状況を考えると、ALDIは「安さ」で成功しているように見えてしまうが、「安さ」は成功の十分条件ではなく必要条件にすぎない。安さに何をプラスできるかが問われているのだ。
ALDIは、上海市民の消費行動をよく研究することで、上海市に適合し、安くて買いやすく、信頼できる品揃えを実現した。問題は、他都市展開ができるかどうかだ。北京に出店するのであれば、今度は北京市民をよく研究し、適合をしていく必要がある。グローバル企業がローカル対応をする。これができるかどうかが、ALDIが上海のスーパーから中国のスーパーに飛躍をする鍵になっている。