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フーマが深圳市にモールを開店。衣類や体験コンテンツも新小売対応に

オンライン購入体験とオフライン購入体験を融合したフーマフレッシュの新小売(ニューリテール)。そのフーマは現在、さまざまな業態に横展開中だが、深圳市に大型ショッピングモール「フーマモール」を試験開業した。生鮮食料品だけでなく、衣類や家電、体験コンテンツなども新小売化をしていくことになると南方都市報が報じた。

 

さまざまな業態に展開をするフーマがモールへ進出

アリババ参加の新小売スーパー「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)。現在は、スーパーだけでなく、6つの業態を展開している。

1)フーマフレッシュ:新小売スーパー。1万平米が基本。

2)フーマミニ:フーマフレッシュのミニ版スーパー。500平米が基本。

3)フーマF2:コンビニ業態。F2とはファスト&フレッシュの意味。オフィス街に進出

4)フーマミニステーション:配送のみを行う倉庫。店舗が進出できないエリアをカバーするためのもの。

5)フーマピックアンドゴー:朝食専門店。事前に注文をしておけば、すぐに受け取れる。地下鉄駅構内に進出。

6)フーマ菜市:フードコートのない新小売スーパー業態。主に郊外などをカバーするためのもの。

このような業態展開は、それぞれにエリアやマーケットをカバーする戦略性を持っている。

2019年11月下旬に、この6つの業態に新たに加わったのが、深圳市蓮塘に試験開業した「フーマモール・歳宝」だ。新小売スーパーを中心に、さまざまな店舗が集合したショッピングモールで、ユニクロやファーウェイなども出店している。深圳を拠点にする歳宝百貨店との共同事業。

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▲深圳市に開業したフーマモール。地元の歳宝百貨店と共同している。3階建てで、1階が店舗、2階がフーマフレッシュ、3階が教室になっている。

 

フーマの中心顧客はファミリー層

フーマフレッシュの中心顧客層は30代と40代。特に小さな子どもがいるファミリー層に強い。

休日などは、朝遅めに起きて、フーマフレッシュに行き、家族でフードコートで食事をとり、その時に、スーパーを見て、夕食の買い物のあたりをつけ、アプリのカートの中に入れておく。そのまま家族で遊びに出かけ、夕方帰る頃にカートの中のものを注文する。すると、家に帰って一息ついた頃に食材が配達されてくるので、夕食を作り家族で食べるというスタイルが定番化をしている。

フーマモールは、この中心顧客であるファミリー層の支持をより強固にするものだ。

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▲フーマモールにはキャラクターのカバがいる。「盒馬」(フーマ)とは、「マーさんの詰め合わせ」といった意味だが、河馬(カバ)と発音が同じであるために、カバがキャラクターになっている。

 

子供向けサービスを充実させたショッピングモール

そのため、4万平米という広い店舗内の1/3は、子ども向けサービスとなっている。

その中でも、人気となっているのが「虫虫絵本館」だ。幼児向けの絵本専門の書店だが、ただの書店でないのは、読み聞かせ体験のサービスがあるところ。絵本のお姉さんが身振り手振りで絵本を読んでくれる。これが幼い頃から読書習慣をつけるのに役に立つと人気になっている。

さらに、子どもを意識した写真館、幼児用水泳教室、ローラーブレード教室、プログラミング教室などがそろっている。

このような体験教室サービスは、すべてフーマ専用アプリから、チケット購入、予約ができるようになっている。虫虫絵本館では、すでに60%以上が、アプリからの予約客になっているという。

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▲人気の虫虫絵本館。絵本の専門書店だが、読み聞かせ教室があり、これが人気となっている。

 

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▲中国で人気の「虫虫絵本館」の読み聞かせ教室。小さい頃から読書習慣をつけられると人気になっている。この教室のチケット購入、予約などもフーマアプリから可能になっている。

 

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▲店舗の1/3は子供向けショップ。体験型の店舗が多い。フーマフレッシュの主要顧客であるファミリー層の集客を狙っている。

 

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▲子ども向け体験サービスも充実している。絵本の読み聞かせ教室、泥絵体験、子ども写真館など。いずれも予約やチケット購入がアプリの中からもできるようになっている。

 

ユニクロやカフェなども新小売に対応

その他、店舗も60ほどが入っていて、ユニクロ、ファーウェイなどの他、人気のカフェ「奈雪の茶」などがある。

最も大きな特徴は、このような店舗の商品のほとんどが、フーマ専用アプリから注文をすることができるようになっている点だ。アプリ注文をすると、フーマの配送物流を使って、無料で自宅まで1時間配送または翌日配送してくれる(フーマフレッシュの食材は30分配送)。

これが買い物のスタイルを変えようとしている。店舗に行って、実際に自分の目で見て欲しいものを選ぶというのは従来と変わらないが、購入はアプリで行ない、自宅に配送をしてもらうことで、帰りに大きな紙袋をいくつも持って帰らなくて済むようになる。

子ども服などは、店舗であれこれ試着をしてみること自体がエンターテイメント体験になっているので、それを店頭で体験してもらう一方で、かさばる荷物を自宅に持って帰るという悪い体験は解消する。そういう新しい買い物スタイルを実現している。

フーマモールの店舗ゾーンでは、当面、30%の商品をECで販売することを目標にし、最終的には50%以上がECで販売されるようにしていきたいという。

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▲1階はモールになっていて、ユニクロ、ファーウェイ、カフェなどが出店している。その多くが、フーマアプリの中から購入、配送が可能になっている。

 

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▲フーマアプリ内のフーマモール画面。「買い物」「外食」「子供向け」「生活サービス」の4つが柱になっている。いずれも、店舗だけでなく、アプリの中から注文し、配送してもらうことが可能になっている。

 

店舗は積極的にショールーム化。ユニクロの店舗面積は半減

また、店舗も在庫量を減らすことができるので、その分、展示する商品点数を増やすことができる。ECの登場により、路面店ショールーム化が大きな問題になっているが、フーマモールでは、むしろ積極的にショールーム化を推し進めている。

ユニクロの標準店舗は1800平米から2000平米だが、フーマモール内のユニクロ店舗は1000平米しかない。通常であれば、ユニクロは出店ができない条件だが、この新小売(オンライン販売とオフライン販売の融合)の仕組みを利用することで、ユニクロとしては中国で最小級の店舗となった。しかし、購入できる商品点数は標準店とまったく遜色がない。

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ユニクロも出店しているが、新小売に対応したため、倉庫スペースが節約でき、積極的にショールーム化を進め、最小級の小さな店舗になっている。しかし、購入できる商品点数は標準店舗と変わらない。

 

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▲フーマアプリ内のユニクロのコーナー。店舗で実際の商品を確かめ、自分の求めるサイズや色などをアプリから注文する人が増えている。

 

アプリを介して、顧客とのチャンネルをつくる

フーマモールの子ども販売部門の責任者、朱暁菁によると、開店初日の顧客の90%近くが、フーマ配達エリアのファミリー層だったという。また、一般的なモールでは、黒字化するのに必要な顧客数をつかむまでは2年ほどの時間がかかるのが通例だが、新小売モールでは初日にすでに70%程度の顧客をつかむことができたという。

多くの人が、フーマアプリをインストールし、登録をして買い物をするため、顧客とのダイレクトなチャンネルを構築できるからだ。軌道に乗るまでの2年という時間も大幅に短縮できるのではないかと期待をしているという。

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▲生活サービスを提供する「フーマ管家」も出店。クリーニング、ネール、家事などのサービスを頼むことができる。これもアプリの中から予約、決済が可能。

 

セミナースペースは平日にはビジネス利用も

フーマモールの2階には、フーマフレッシュが入っている。3階は、共用スペースになっていて、通称「教室クラウド」と呼ばれている。幼児教室の多くは、この共用スペースで行われる。

幼児向け店舗は、ファミリー層を引き寄せる強い「集客モーター」として機能するが、問題は、幼児教室の利用率は、平日の昼間は下がってしまうことだ。そこで、この共用スペースは、平日の昼間はアモイ科技大学やその他のテック企業の利用も可能にしており、セミナーや公開講座などが催される。

ファミリー層の集客に強い幼児向け店舗をそろえることで集客の原動力とするだけでなく、幼児向け店舗が抱えている平日の低効率問題も解消されている。

 

北京にも出店予定。買い物体験を変える新小売

中国のショッピングモールは、業界としては成長しているものの、過当競争になり、1/3は閉鎖の危機にあるという。一方で、深圳を中心に伝統的なスーパーと百貨店を運営する歳宝百貨店も徐々に数字を落としている。

その歳宝百貨店は、11あるスーパーのうち、8店舗をすでにフーマフレッシュに改装している。残りの3店舗も改装計画が進んでいる。また、百貨店にもフーマフレッシュを出店させるなどして、アリババとの提携を深め、過当競争になっているショッピングモール業態でも、新小売というスタイルを導入することで勝算があると判断をした。

アリババでも、地元百貨店との連携にメリットが多いと感じ、フーマモールはすでに2020年に北京での出店準備が進んでいる。

アリババのフーマは、それまでの買い物体験「行って、目で確かめて、商品を持って帰る」「家で、品質を確かめずに、配送してもらう」の二択状態を「行って、目で確かめて、配送してもらう」「家で、品質を信頼しているので、配送してもらう」の二択に変えようとしている。

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