中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

ソフトディスカウントからハードディスカウントの時代へ。異例のデフレ時代に突入する中国

スナック菓子のディスカウント店が急成長をしている。スーパーの3割引、4割引程度の価格で販売をするため、スーパー、コンビニから人が流れている。中国は原材料費が高騰する中で、「安くしないと売れない」状況となり、さまざまな分野で値下げが続く異例のデフレ時代に突入していると銷售与市場雑誌社が報じた。

 

ディスカウント店が急成長、対応に追われるスーパー

個人消費が低迷する中で、スナック食品を中心にしたディスカウント店が急速な勢いで店舗展開をしている。趙一鳴(ジャオイーミン、http://www.zymls.com)は2900店舗、零食很忙(リンシーヘンマンhttps://www.hnlshm.com)は4000店舗を突破した。

既存のスーパーは、この対応に追われている。大手スーパーチェーンの永輝(ヨンホイ、https://www.yonghui.com.cn/)は、スーパー内部にディスカウントコーナーを用意し、ストアインストア方式でディスカウント店を開設した。

また、歩歩高(ブーブーガオ、https://www.bbg.com.cn/)は、価格調整を行い平均15%もの値下げをした。さらに、アリババ傘下の盒馬(フーマ、https://www.freshippo.com/)も創業して8年で最大の価格改定を行い、約5000種類の消費の価格を平均20%下げた。

注目しなければならないのは、スーパーの値下げが一時的な割引やセールではなく、恒久的な価格改定であるということだ。スーパーはこれまで一時的なセールやクーポン配布などで割引をし、消費者を惹きつけてきた。しかし、今は価格そのものを下げないと競争に勝てない状況になっている。

▲スナック菓子を中心にしたディスカウント店は人気となり急成長をしている。スーパー、コンビニからディスカウント店に人が流れている。

 

ソフトからハードなディスカウントの時代へ

このような2種類の割引はソフトディスカウントとハードディスカウントと呼ばれる。ソフトディスカウントとは、利益を圧縮するなどして一時的に価格を下げることだ。利益は小さくなるが、数が売れる、客数が増えるなどのメリットがある。一方、ハードディスカウントとは製造や物流、運営のコストを下げ、価格そのものを下げることだ。小売業にとっては、すべてのプロセスを見直し、改善をしていかなければならず厳しい値下げとなる。

中国はこれまでソフトディスカウントの時代が続いたが、個人消費が低迷し、ハードディスカウントを行うディスカウント店が成長するにつれ、既存プレイヤーもハードディスカウントをせざるを得なくなっている。ハードディスカウントの時代に突入した。

▲社会消費品小売総額(個人消費に相当)とネット小売総額の額は、デフレ、不況と言われながらも減少していない。ハードディスカウントが進み、以前と同じ程度には商品が売れている。

 

他の分野でもハードディスカウントへ

このような現象が顕著なのは食料品小売りだが、その他の分野でもハードディスカウントが始まっている。例えば、カフェの世界では、瑞幸(ルイシン、Luckin)と庫迪(クーディ、COTTI)の激しい競争により、9.9元クーポンが大量配布され、それが続いている。実際の価格は20元程度であるのに、実質的にコーヒーの価格は9.9元が標準になりつつある。表面上は新規顧客獲得のためのソフトディスカウントだったが、事実上の恒久化をすることでハードディスカウントに近い形になっている。

さらにECでも、セールが日常化され、1年の2/3はなんらかのセールが行われている状態になっている。世界では原材料費の高騰などでインフレが進んでいるが、中国は2023年に入ってから消費者物価指数が下落を始め、その下落ぶりが加速をしている。異例のデフレ社会に入ろうとしている。

▲原材料費が高騰する中で、消費者物価指数は減少する傾向になっている。あらゆる商品で「安くしないと売れない」状況となり、値下げが行われている。