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中国最大の飲食チェーン、中国の町中華「沙県小喫」に異変。閉店が相次ぐ理由とは

世界で最大の飲食チェーンは、10万店舗を展開する「沙県小喫」であると言われる。安くて美味しい、中国の町中華にあたるチェーンだ。しかし、コロナ禍以降、閉店が続いている。新興の中華ファストフードに客を取られていると基建不倒翁が報じた。

 

中国の町中華「沙県小喫」に異変

中国に行けばどんな小さな街に行ってもある小さな飲食店「沙県小喫」(シャーシエンシャオチー)に異変が起きている。2023年になって閉店が相次ぎ、その数は3000店舗を超えるという。

沙県小喫は、鴨のベーコンやバンバン麺、ワンタンスープなど、小腹が空いた時にちょうどいい中華料理を出してくれる店。以前は「2元で美味しく、5元でお腹いっぱい」と言われるほど安く、間食でも10元未満、食事でも15元前後で食べられる庶民の味方とも言える店だった。その庶民の味方が、コロナ禍をきっかけに人が行かなくなり、閉店をする店が相次いでいる。

▲典型的な沙県小喫。看板のロゴがトレードマーク。中国に10万店舗を展開する、世界最大の飲食チェーンだ。

 

ハードルの低いチェーン「沙県小喫」は10万店舗

沙県小喫の店舗数は10万店というもので、KFCやマクドナルドの10倍になり、世界最大の飲食チェーンとも呼ばれる。しかし、沙県小喫をフランチャイズチェーンと呼ぶには少し無理がある。

沙県小喫の看板を掲げたい人は、福建省三明市沙県にある本部に申請をし、一人2500元(約5万円)のトレーニング費用を支払って、12日間の講習を受ける。それだけで「沙県小喫」のお店を開くことができる。食材を本部から買う必要もない、ロイヤルティーを支払う必要もない、品質管理を受ける必要もない。多くの場合は一見間口の小さな店なので、改装費なども含めて1万元(20万円)ほどで店を始められる。世界で最もハードルの低いチェーンなのだ。

▲沙県小喫の人気メニューは、バンバン麺とワンタンスープ。朝食や昼食に向いたメニューが多い。

 

チェーンなのに味はばらばら

沙県小喫の多くの店は、夫婦で経営をしているか、家族で経営をしている。作り置きをしているお惣菜系のメニューも多いために、注文をしたらすぐに惣菜が出てくる。麺なども調理に時間がかからないため、惣菜をつまんでる間にできあがってくる。価格が安い上に、すぐに出てくるため、忙しい時の昼食や間食にぴったりであるため、沙県小喫の店舗は拡大をし続けた。

しかし、問題は、緩いチェーンであるために、メニューは店によって異なり、味の点でもばらばらだということだ。近所にある沙県小喫が気に入れば、その店にしばしばいくことになるが、知らない街で沙県小喫の店に入るには勇気がいる。

▲沙県小喫のメニューは、優しい味のものが多く、昼食や間食に向いていることから人気となっていた。

 

個店の集まりにすぎなかった沙県小喫

本部は品質管理、衛生管理にはタッチをしないため、品質と衛生の管理は店任せになる。多くの店舗はきちんと運営をしているが、10万店もお店があると中にはいい加減なことをする店も出てくる。数年前に話題になった地溝油(排水から再生した食用油)なども沙県小喫の店舗によるものだった。

つまり、近所のなじみのある沙県小喫には行くものの、知らない沙県小喫には入らないという人が増えていった。そこに麺などを中心に中華ファストフードが台頭をしてきた。このような新しいファストフードチェーンは、同じ食材を使い、店舗運営も厳しく管理をされる。どの店に入っても、同じ味で衛生レベルも保証されている。このようなことから沙県小喫にいく人が減り、特にコロナ禍には避ける傾向が強まり、コロナ禍以降もそれが習慣として定着をしてしまった。

▲沙県小喫の多くは、夫婦や家族で経営されている。12日間の講習を受けるだけで、誰でも開店ができる。

 

文化的な価値もある沙県小喫

沙県小喫は、福建省客家と呼ばれる人たちが移住をし、中原の麺の習慣と福建省米食の習慣をミックスして、独特の食文化を生み出した。ある意味、中華料理の原点でもあり、中華料理の「生きた化石」と呼ばれることもある。

そのため、沙県小喫の低迷は、産業としてではなく文化の継承という点で嘆く人も多い。沙県政府あるいは民間の中から、新しい形の沙県小喫のチェーンを構築しようという動きも起きている。世界最大の飲食チェーン「沙県小喫」は生き残れるのか、難しい局面を迎えている。

▲沙県小喫の伝統を守るために「アップグレード版沙県小喫」を名乗る店舗も登場してきている。