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中華バーガーが人気に。マクドナルドの本場バーガーと競い合うタスティンと空気バーガー

中国のファストフードで、中華バーガーが人気になっている。中国の伝統的なおやつにヒントを得て、中華食材を使った中華味のハンバーガーだ。店舗数も伸びており、マクドナルドやKFCを脅かす存在に育ってきていると新消費智庫が報じた。

 

中国のバーガーのリーダーはマクドナルドとKFC

中国のハンバーガー系ファストフードをリードしているのは、多くの国と同じように、マクドナルドとKFC(ケンタッキーフライドチキン)だ。KFCをハンバーガー店とするのには違和感がある方もいるかもしれないが、KFCの人気メニューは、オリジナルチキンの次がチキンバーガーで、老北京チキンロールや辛口チキンフィレバーガーも人気があり、中国ではハンバーガー+チキンの店として認識されている。

一方、マクドナルドもチキンクリスプ(チキンサンド)が人気があり、その次にマックフライポテト、ダブルチーズバーガーと続く。つまり、多くの国ではマクドナルドとKFCはポジションがやや異なっているが、中国ではかなり重なっているライバルチェーンということになる。

ハンバーガー系ファストフードの店舗数ランキング上位5位のうちに、中国系が2つ入っている。ウォレスは低価格を売りにした中国チェーン。タスティンは中華バーガーというジャンルを開拓したチェーンだ。

 

マクドナルドそっくりのウォレスが店舗数ではトップ

しかし、店舗数ランキングでは、マクドナルドやKFCがトップではなく、国内系の「華莱士」(ホワライシー、Wallace、http://www.hualaishi-jm.cn/)が圧倒的なトップになる。店舗ロゴは「W」を模したもので、マクドナルドの「M」を逆さにしたように見える。さらには、そこはかとなくKFCっぽい空気感も醸し出している。

これはマクドナルドとKFCが中国市場に参入した後、山ほど誕生した「山寨」(パクリ)ファストフードのひとつなのだ。その多くは、地方にとどまるか、消えていくかをしているが、ウォレスは生き残り、全国区にまで成長をした。その武器は低価格だ。確かに味の点では、マクドナルドやKFCには及ばない。しかし、まずいというわけでもない。普段食べるのであれば、じゅうぶんに許容できる程度の味にはなっている。価格と味のバランスで、ウォレスはマクドナルドやKFCを追い抜き、中国No.1のハンバーガーファストフードチェーンになっている。

▲ウォレスの店舗。ロゴはマクドナルドとKFCを彷彿とさせる。地方都市を中心に1万6000店舗を展開している。

▲ウォレスのメニュー。どことなくマクドナルドとKFCの要素が取り込まれている。いわゆる「山寨」だが、標準品質の飲食品を低価格で提供することで、店舗数では中国No.1のハンバーガーチェーンになっている。

 

中華バーガーという新しいジャンルを開拓したタスティン

さらに、台風の目となっているのが、「塔斯汀」(タスティン、tasiting、https://www.tastien.com/)だ。2012年に創業をして、当初はピザを中心にしたファストフードだったが、2017年に中国バーガーを発売し、それから急速に店舗数を伸ばしてきた。

陝西省に肉夾(ロウジャーモー)というおやつがある。小麦ベースのバンズを発酵させてから蒸し、二枚貝のように切り込みを入れ、そこに煮込んだ中華具材をたっぷりと入れるというものだ。タスティンは、これをヒントにバンズの表面を焼き、そこに具材をたっぷりと入れた中華バーガーを開発した。

味の点でも人気はあるが、何よりそのボリュームに満足感がある。タスティンは、抖音(ドウイン、中国版TikTok)などの動画系SNSでプロモーションを行なっているが、その食欲をそそるビジュアルは強く、若い世代を中心に人気になっている。

▲中華バーガーという新しいジャンルを開拓したタスティン。中国のおやつをヒントに中華味のバーガーを開発した。

▲タスティンのメニュー。具材がはみ出るほど入っているのが特徴で、満足感は高い。

 

新たに参入した空気バーガー

さらに、ここに中華ファストフードチェーン「西貝麺村」(シーベイ、https://www.xibei.com.cn/)の創業者、賈国龍が創業した「賈国龍中国バーガー」(ジャーグオロン)が参入をし、店舗数はまだ50店舗程度だが話題になっている。

賈国龍は、当初「空気」という名称での展開を始めた。浙江省桐廬県には、「酒醸万頭」というおやつがあり、2015年には浙江省杭州市の無権文化遺産にも指定をされている。発酵させてから蒸す蒸しパンで、柔らかく、発酵をさせているので生地の味わいが深い。賈国龍はこの調理法をヒントに、柔らかいバンズに中華具材をたっぷりと入れるという中華バーガーを開発した。

▲西貝莜麺村の創業者も、空気バーガーという名称で中華バーガーを開発した。当初は実験店舗だったが、現在50店舗まで出店をし拡大を始めている。

▲空気バーガーのバンズ。酒醸万頭にヒントを得たもので、ふわふわのバンズになる。

 

美味しいから行く。中華バーガーの台頭

中国でのファストフードのポジションは、以前は「食事をつくるのが面倒」「安いから」という理由で利用をされていた。しかし、00后(2000年以降生まれ、20歳前後)では、それが大きく変わり「美味しいから」行くという人が多くなっている。特にコロナ禍が終わり、撤退をしていた飲食店が再び出店を始め、その中には新顔も多い。そこでは中華麺や一人火鍋など、中華もファストフード化が進んでいる。そして、人気になっているのは、「美味しい」という店だ。各ファストフードでは新商品を開発して、客を惹きつけようとする動きが活発になっている。その中で、中華バーガーが大きな流れになり始めている。ハンバーガーの世界では、中華バーガーと米国バーガーが競い合うことになる。

▲ファストフードに行く理由は、全体では「食事をつくるのが面倒だから」だが、00后(20歳前後)では、「美味しいから」になっている。

▲年齢別に、ファストフードの「早い」と「うまい」に同意できるかを尋ねると、80前(40代以上)では、「早い」が上位にくるが、その下の世代では「うまい」が上位にくる。