動画共有サイト「ビリビリ」に、手づくりCPUを作った投稿主が登場して話題になっている。すべてが手づくりで2年がかりでつくったという。この動画に触発されて、手づくりCPUの制作に挑戦する人が現れていると量子位が報じた。
手づくりでCPUをつくった人が話題に
この手づくりCPUをつくり、動画を投稿したのは、奶味的(ナイウェイダ)さん。2016年に手づくりCPUをつくってみたいと思い立ち、2021年から制作に入った。組み立てに半年かかり、バージョンアップに1年半かかったという。
使ったのは2万以上もの半導体素子などの部品で、10万回以上のハンダづけが必要になった。このため、奶味的さんは「はんだ武帝」とも呼ばれるようになっている。
できあがったのは、周波数13kHz、最大33kHzのオーバークロック可能。64kBのROM、256Bのシステムメモリー、64kBのアプリケーションメモリーというものだ。
この手づくりCPUの消費電力は10Wで、材料費は2000元以下で済んだという。
バージョンアップ作業に1年半
最初のバージョンの手づくりCPUは、起動することはできたが、ごく単純な命令しか実行することができず、ここからバージョンアップ作業が始まった。これに1年半かかってしまった。
CPUそのものは2000元で完成したが、より高度なCPUにするために、オシロスコープなどの測定機器が必要になった。しかし、これにより、クロック周波数が1kHzだったものが33kHzにまで高めることができ、演算速度を33倍にまで高めることができた。
難関だったデュアルチャンネルメモリーの実装
最も時間がかかったのはデュアルチャンネルメモリー技術の実装だった。デュアルチャンネルというのは、2枚のメモリーを2つのチャンネルを使って、同時に読み書きをするというもの。同時に1枚のメモリー上のデータにアクセスするのでは意味がないが、データの配置を工夫して、同時に必要になるデータがそれぞれに分かれていれば同時読み書きが可能になり、見かけ上のメモリーアクセス速度が2倍になるというものだ。
2つの倉庫、2つのトラックがあり、在庫の置き方を工夫すると、2倍の速さで出し入れができる感覚だ。この時、同時に出し入れする在庫が片方の倉庫に固まっていると、1台のトラックでしか出し入れすることができず、速度は低下をする。
奶味的さんは、デュアルチャンネルを実装するだけでなく、グローバル変数とローカル変数を2枚のメモリーに分けるという手法で、読み書きの速度をあげることに成功した。
性能は70年代のCPU、それでも影響される人が続出
奶味的さんが完成させた手づくりCPUの性能は、70年代初頭の素朴なCPUの性能程度しかない。パソコンの世界では古典的なヘビのゲームが楽しめる程度だ。そのため、完成品そのものに大きな意味はない。パーツ屋に行けば、はるかに性能の高いCPUがお小遣い程度の価格で手に入るからだ。
しかし、まったくのゼロから試行錯誤をしながら、CPUをはんだづけで完成させた意義は大きい。奶味的さんはCPUの根本を、体感がで理解をしているからだ。奶味的さんは、完成した手づくりCPUに「初芯」と命名した。最初に完成したCPU=芯片をつくった時の初心を忘れないようにするためだという。
奶味的さんのビデオが投稿されると、それを参考に手づくりCPUをつくる大学生が続出している。奶味的さんも、今後も、このCPUをバージョンアップさせていくという。