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亡くなった人を生成AIで復活させます。お代は200円から。中には9000万円以上稼いだ人も

故人を生成AIで復活させるビジネスが始まっている。その多くは写真に動きをつけるという単純なものだが、音声や会話内容、動画から精巧な復活を可能にするものもある。故人を復活させることには賛否両論があると新浪財経が報じた。

 

亡くなった人がAIで復活する

生成AIにより、亡くなった肉親を復活させるというビジネスが始まっている。生成AIを使って故人を復活させ、もう一度会いたい、語り合いたいという人は少なくない。

著名なAI開発企業「商湯科技」(SenseTime、https://www.sensetime.com/cn)では、2024年の総会で、故人を登壇させた。2023年12月、創業者の湯暁鴎氏が病いで亡くなった。2024年の総会に出席が予定されていたが、それが不可能となった。そこで商湯科技は、生成AIを使って、スピーチをする湯暁鴎氏を再現し、その映像を会場に流した。その出来は素晴らしく、リアルな本人がいるとしか思えないもので、この映像がSNSで拡散し、大きな話題になった。

また、台湾出身の音楽家、包小柏さんは、自分で生成AI技術を学んで、亡くなった娘をPCとスマホ上で復活させ、一緒に音楽を楽しんだり、会話をしているという。その一部の写真を自らSNSに発表したことで大きな話題となった。

▲商湯科技が年次総会で放映した、亡くなった創業者のスピーチ映像。出席予定だった創業者が急逝をしたため、生成AIを使って、予定原稿を元に映像を生成した。

https://www.bilibili.com/video/BV1i2421K7aK/?spm_id_from=888.80997.embed_other.whitelist&t=488



▲生成AIにより復活した包小柏さんの娘さん。今でも娘と会話をしたり、自分が作曲した歌を娘に歌ってもらったりしている。しかし、包小柏さんは「復活」ではなく、「復元」と呼んでほしいと言っている。

 

故人の復活には賛否両論ある

このようなAIによる復活に対しては賛否両論ある。当初は、静止画から簡単な動画を生成する程度が精一杯であり、多くの人が「大切な人を失った人の慰めになる」と感じていたが、現在では、写真からダンスをさせたり、声色を再現したり、さらには対話型AIに個人の文章や会話記録を学習させて、あたかも個人と対面して会話をしているかのように思えるところまできている。

非常に精巧なものになると、故人がまだ生きていて、ビデオ通話を介して話をしていると錯覚をするほどになっている。ここまでくると、「生理的な拒否感がある」「遺族が没入をしてしまい、前向きに生きることが難しくなるのではないか」という否定的な意見も多くなっている。

 

おばあちゃんを自力で復活させたビリビリ投稿主

2023年4月、ビリビリの投稿主、呉伍六さんが「AIツールを使って、おばあちゃんのデジタルヒューマンをつくった」という映像を投稿し、これがSNSに転載され、拡散した。呉伍六さんは、その中で、どのようなツールを使って祖母を復活させたかを詳しく解説し、映像、音声、話す内容を再現し、音声で祖母とおしゃべりをしているところを披露した。この祖母は、湖北省の方言で、まるでビデオ通話をしているのではないかと思えるほど、リアルな反応をする。会話に対する反応には微妙なタイムラグがあるが、これが余計に高齢者のリアルさの表現になっている。

▲おばあちゃんを生成AIで復活させた呉伍六さんは、具体的にどのような生成AIツールを使ったのかを詳しく解説した映像を投稿した。これにより、生成AIによって個人を復活させる人が増えた。

https://www.bilibili.com/video/BV1QM411H7xC/?spm_id_from=333.337.search-card.all.click



故人の復活ビジネス、一人10元から

このビデオが投稿されて以来、EC「淘宝網」(タオバオ)には、故人を生成AIで甦らせるサービスが続々と登場している。その内容はさまざまだ。写真から動画を生成するだけの簡単なものから、動画や音声記録、日記などの提供を受けて、会話ができる状態にしてくれるものまである。価格は最も安いものでは10元(約200円)からで、価格が安いこともあって、すでに数百人が利用しているサービスもある。

タオバオでは、故人を復活させるビジネスが大量に登場している。価格の安いものでは10元からある。ただし、多くは、写真に動きをつけるという単純なもの。

 

復活ビジネスで9400万円を稼いだ張沢偉さん

江蘇省出身の90后(90年代生まれ、30代)の張沢偉さんもその一人で、1年間に653件の注文をこなした。張沢偉さんのサービスは精巧なもので、価格は数千元から1万元ほどになるが、平均で7000元としても、これまでに450万元(約9400万円)を稼いだことになる。

多くは、祖母、祖父を復活させてほしいという要望だが、病気で亡くなった子どもを復活させてほしいという依頼や、特定のアイドルを自分のスマホの中に復活させてほしいという依頼もあったそうだ。

故人を生成AIで復活させることには、さまざまな議論、見方があるが、サービスとしては確実に市場を確保しつつあることは間違いないようだ。