外売サービス(フードデリバリー)が普及する中国で、外売に特化することで急成長をしている火鍋チェーンがある。淘汰郎だ。味と見た目にこだわり、1人または2人用の火鍋セットを提供することで、店舗数を急増させていると商業模式策画が報じた。
外売サービスの普及で、変わる飲食店の考え方
中国の都市部では、外売(フードデリバリー)がもはや当たり前のことになっている。2011年と2017年を比較すると、外売売り上げは8.4倍となり、利用者は3億人を突破している。
そのうちの65%は20歳代だ。若者、特に単身者やルームシェア居住者、恋人との同棲をしている人たちは、外売がごく身近なものになっている。
外売を利用する若者たちには、特徴がある。味にはかなりこだわり、パッケージや見た目にもこだわる。一方で、接客サービス的なものに対する要求は高くない。価格は高い安いではなく、コストパフォーマンスにこだわるなどだ。
外売サービスが普及をし始めた頃は、既存のレストランが出前を委託する形であったため、店頭で出している料理を透明プラスチックのパックに入れて配達するなどの簡素な形式が多かった。しかし、飲食店にとって外売の売上が大きなものになるとともに、各飲食店は外売用の専用パッケージを使い始めた。そのまま、食べることができる食器の役割をするパッケージから始まり、さらにはSNS映えするデザインのものまで登場した。
さらに進んで、今度は外売専用のメニューを開発する飲食店も登場している。その中で、外売に完全特化して成功したのが、宅配専門の火鍋「淘汰郎」(タオタイラン)だ。
▲淘汰郎の火鍋。具材は追加注文することができ、安価に豪華な食事ができる。鍋は1人分または2人分に適したミニサイズになっている。
ナスダック上場を視野に入れる外売専門火鍋店「淘汰郎」
淘汰郎は、2017年3月に、趙子坤(ジャオ・ズクン)が創業した。その成長速度が驚異的だ。創業半年で、外売で配達される火鍋のナンバーワンとなり、合計4回の投資資金を得ている。2017年7月には、「百都市計画」を発表した。1年以内に100都市に店舗展開をするというものだった。ところが、同年12月に、この百都市計画を達成してしまう。予定よりも7ヶ月も早い達成だった。
2019年5月には、今度は「千店計画」を発表した。主要都市では、5km以内に店舗があり、市内すべての場所から外売を注文できるようにするという計画だ。
2018年の5月10日のチャイナブランドデーには、ニューヨーク市のタイムズスクエアにある広告スペースでは、ナスダックが中国で有望な企業を紹介した。淘汰郎もこの広告の中で紹介をされた。つまり、淘汰郎はナスダック上場を準備しているということだ。
▲タイムズスクエアの広告スペースに表示された淘汰郎の広告。ナスダック上場への布石だと見られている。
比較的安価で満足できる火鍋
なぜ、淘汰郎の宅配火鍋はここまで急速に成長できたのか。それは、外売の利用者を分析し、外売に特化をした商品開発を行ったからだ。
火鍋というのは、辛い味付けの寄せ鍋だ。羊肉や豚肉、野菜、海鮮など、具材は自分の好きなものを選べる。これをしゃぶしゃぶのようにして食べるというもので、日本でも人気だが、中国では外食と言えば「火鍋」というほど人気がある。
その理由は、比較的安価でいろいろな具材を楽しめるということがある。火鍋店では、100種類ほどある具材注文表にチェックを入れて注文をする。食べたい具材を注文すると、だいたい価格は300元から400元(約6200円)程度になってしまう。火鍋は大人数で食べるのが常識で、これを4人で割り勘にすれば100元以下。比較的安価で、いろいろな具材を楽しめるという点が受けている。
▲淘汰郎の通常パッケージ。鍋と燃料がついてくるというのがポイント。以前の鍋を再利用する場合は、具材の優待策を利用できる仕組みになっている。
若者の孤食に対応できなくなった火鍋店
しかし、若者はあまり火鍋を食べなくなっている。週末に友人と集まって外食をするときぐらいで、平日の食事として火鍋を食べることは少ない。なぜなら、大人数で食事に行くことは好まないし、それぞれ仕事が忙しいので集まるのも難しい。1人で食べるか、あるいは恋人や友人と2人で食事をとることが多くなっている。このため、外売が受けているのだ。仕事で遅くなった時に、飲食店にわざわざ行くのではなく、自宅で外売をとってしまう。外売といっても、最近は美味しいもの、SNS映えするものも多いので、満足ができる。
2015年あたりから、火鍋チェーンの倒産、閉店が続いている。それは火鍋店の顧客がファミリー層だけになり、若者の取り込みに失敗をしているからだ。
孤食に対応したミニ火鍋がヒット
趙子坤は、外売利用者の65%が20歳代で、この世代には3つの特徴があることを発見した。ひとつは収入がさほど高くないこと。2つ目が家は広くないこと。3つ目は単身者、またはルームシェア、あるいは恋人との2人暮らしであることが多いことだ。
そこで、趙子坤は1人用から2人用のミニサイズの火鍋を外売することを考えた。99元(約1500円)で火鍋の基本セットが宅配され、必要であれば特定の食材を追加できる。最も優れた点は、小さな鍋と燃料がセットに含まれていることだ。つまり、箸さえ家にあれば、特別な調理器具がなくても火鍋が食べられる。しかも、ミニサイズなので、1人でも食べきることができる。
鍋は、洗えばまた使える。以前使った鍋を利用する場合は、50元までの具材ひとつが無料になる。これであれば、1人または2人で、自宅で火鍋が食べられる。これが受けた。
▲99元の基本セットの内容。鍋と燃料、だし、牛肉、羊肉、野菜、麺、ニンニクで、1人分。タレは2人分ついてくる。味は8種類の中から選ぶことができる。
味と見た目には徹底的にこだわる
しかし、ただ火鍋を小さくしただけではない。若者の特徴である、味と見た目にこだわる点は十分に追求した。
タレのベースにした麻醤は、北京市内で買い求められる麻醤をすべて手に入れ、最終的に薄味の黒竜江省で手作りされている麻醤を採用した。牛肉は、一般的な火鍋店では、脂身の多い肉と赤身を圧縮接着した肉を使うが、オーストラリアの霜降り肉を採用した。味にはとことんこだわっている。
また、パッケージも凝っている。淘汰郎のイメージカラーである黄色を基調にした紙ボックスにし、イメージキャラクターであるサングラスをした羊をつけている。それだけではなく、クリスマスなどのイベント時には特別パッケージを使う。また、毎年3本から5本程度、公開されている映画とコラボして、特別パッケージを使う。
▲淘汰郎のクリスマス特別セット。パッケージが可愛らしいと、注文する人が急増した。
▲ペットを意識した特別パッケージ。若者の間にはペットに対する憧れがあり、犬の写真をあしらったパッケージが好評になっている。
成長が速い外売り専門店
このような工夫で、淘汰郎は若者に受け、外売に特化した火鍋として急成長をしている。外売専門であるということも成長速度に寄与をしている。一般の飲食店であれば、立地条件の調査をして、設備を入れ、営業許可を取り、開店するまでに半年以上の時間がかかってしまう。しかし、外売専門であれば、立地条件は考える必要がない。宅配可能エリアだけを考慮すればいい。設備も、食材加工関連だけで、調理や客席は不要。営業許可も簡素で済む。大体30日間で開店できるという。
淘汰郎は現在千店計画を進めているが、これが完成すると主要都市ではどこでも宅配でカバーできるようになる。現在のところ、計画は順調に進んでいるという。
▲百都市計画を7ヶ月も早く達成してしまい、現在は千店計画を遂行中。完成すると、都市の中心部をすべて配達地域としてカバーできるようになる。

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