「まぐまぐ!」でメルマガ「知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード」を発行しています。
明日、vol. 104が発行になります。
今回は、2021年テック業界の10大ニュースについてご紹介します。
中国のメディアでは、日本のメディアのように年末に「今年の10大ニュース」「今年を振り返る」のような特集が組まれることはあまりありませんでした。中国の新年は春先の春節から始まるということもありますが、春節の時期にも「昨年の10大ニュース」のような特集は多くはなく、扱いとしても大きくはありません。ところが、昨年ぐらいからこのような特集が目につくようになりました。理由はよくわかりませんが、以前の中国人は「過去を気にしても仕方がない。未来のことだけを考える」という意識であったものが、コロナ禍と同時に中国の消費者人口が減少に転じ、高度成長から安定成長の時代に入ったことこともあり、「過去を振り返ろう」という気持ちが強くなってきたのかもしれません。
そこで、今回は、このような中国テック業界の10大ニュースをご紹介します。
このメルマガは、中国のテック業界で起きたさまざまな現象のうち、日本のビジネスにも役に立つのではないか、参考になるのではないかと思えるものを解説するというコンセプトです。そのため、私が10大ニュースを選んだとしたら、過去に配信したメルマガの総集編のようなことになってしまいます。
そこで、目につく限りの10大ニュース特集を見て、複数の特集に登場するニュースの中から選んでみました。そのため、みなさんの仕事に直接役に立つわけではないニュースも含まれていますが、年末のことでもあり、お気軽にお読みください。また、いくつかはネット炎上的なスキャンダルなニュースも取り上げられています。中国人がどのようにテック業界を見ているのか、どのようなことに注目をしているのかという参考になるかとも思います。なお、順位は、複数のメディアを参考にして、私がつけました。あまり深い意味はありません。
10位:グリーエレクトリックの22歳の女性秘書がネットで人気者に
格力電器(グリーエレクトリック)は、住宅用空調メーカーとしては世界市場でもトップクラスの企業です。現在の董明珠(ドン・ミンジュ)会長は、業界から多くの尊敬を集めている女性経営者です。現在、67歳ですが、30歳の時に夫と死別をし、シングルマザーとして息子を育ててきました。いろいろな仕事をしましたが、36歳の時に成績次第で高給が得られるというグリーの営業ウーマンになりました。
そこで実力を発揮し、遅咲きながら出世の階段を登り、経営層に入ると、当時の住宅、電機業界の悪しき体質に憤然と挑戦していきました。当時は、賄賂と接待が横行する業界だったのです。これをすべて悪と見做し、品質こそがグリーの強みという大正論を貫き通して、グリーを世界でのトップメーカーに育て上げました。「市場烈烈」という自伝も書き、テレビドラマ化もされた人気経営者です。経営手腕だけでなく、一人の女性の生き方として多くの尊敬を集めています。
この董明珠会長が、11月に開催された中国製造業サミットの講演で、ステージに女性秘書を伴って登壇しました。22歳という浙江大学スペイン語学科sを卒業したばかりの孟羽童(モン・ユートン)で、若くて可愛らしい女性です。大学時代にミス浙江大学に選ばれたこともある才媛です(中国のミス大学=校花は、ルックスだけでなく、学業成績が優秀であることが絶対条件になっています)。
これだけであれば、よくあることですが、董明珠会長は聴衆に向かって「第2の董明珠にするつもりだ」と公言したのです。つまり、次期経営者として育成していると言ったのです。
ネットはざわつきました。経営者が若い人をそばに置き、将来の経営者として育てることは珍しくありません。しかし、孟羽童はこの夏に大学を卒業したばかりです。社会人としてはまだどれだけの実力が発揮できるのかわかりません。しかも、ネットには董明珠会長と孟羽童が手をつないで仲良く歩く映像まで出回りました。多くの人が「秘書や次期経営者ではなく、息子の嫁にしようとしているのではないか」と疑いました。
しかし、このような憶測を吹き飛ばしたのが、孟羽童自身です。サミットのステージで、聴衆は製造業界のリーダーばかりであるという環境の中で、緊張しながら自己紹介をし、得意であるというTikTokダンスを披露したのです。その度胸のよさにに多くの人が圧倒されました。会場にいたアリババの創業者、ジャック・マーは大喜びで、指笛を鳴らし、ノリノリでスマの動画撮影をしました。わずか30秒ほどのダンスで、中国のテック企業の大物経営者たちに深い印象を与えたたのです。
孟羽童は中国版TikTok「抖音」(ドウイン)にアカウントを解説し、ダンスを披露するだけでなく、仕事に対する思い、業界、社会についても語っています。その内容は大学を卒業したばかりの新社会人には思えなく、まさに第2の董明珠なのです。抖音でのファンは100万人を超え、働く女性として尊敬を集めています。数年後、グリーにほんとうに若い女性のリーダーが誕生するかもしれません。
中国では、多くのテック企業の経営者が、若い次期リーダーの育成を始めています。多くの創業者が「50歳を超えたテック企業のリーダーなどあり得ない」と考えていて、50歳までに次期リーダーを育成し、引退をすることを目標にしています。
孟羽童の登場は、このような若いリーダー育成を象徴するようなできごとでした。今後、このような若いリーダー候補がどんどん登場してくることになるかもしれません。
ttps://v.douyin.com/8YGsDLb/
▲中国製造業サミットで紹介される孟羽童。その度胸のよさに働く女性としてのファンが急増した。
ということで、今回は、あまりご紹介してこなかったニュースも含め、中国メディアやブロガーが取り上げている2021年テック業界の10大ニュースをご紹介していきます。
続きはメルマガでお読みいただけます。
毎週月曜日発行で、月額は税込み550円となりますが、最初の月は無料です。月の途中で購読登録をしても、その月のメルマガすべてが届きます。無料期間だけでもお試しください。
今月発行したのは、以下のメルマガです。
vol.101:交通渋滞を交通信号を制御することで解消。都市の頭脳となる城市大脳が進めるスマートシティー構想
vol.102:TikTokに使われるAIテクノロジー。最先端テックを惜しげもなく注ぎ込むバイトダンスの戦略
vol.103:商品はショートムービーで紹介するのが主流。タオバオを起点にショートムービーで展開する興味ECの仕組み
登録はこちらから。
https://www.mag2.com/m/0001690218.html