中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

中国主要スーパーが軒並み減収減益の危険水域。もはや店頭販売だけでは生き残れない

まぐまぐ!」でメルマガ「知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード」を発行しています。

明日、vol. 080が発行になります。

 

今回は、苦境に立たされている中国のスーパーマーケットについてご紹介します。

上場しているスーパーマーケット運営企業の2021年第1四半期の財務報告書が出揃い、その内容に業界関係者はショックを受けています。そろいもそろって減収減益になったのです。減収幅は多くが10%以内でしたが、減益幅は悲惨です。業界トップの永輝(ヨンホイ)で-98.51%、アリババの支援を受けている大潤発(RT-Mart)で-49.6%と、赤字転落にはなっていないものの、黒字額は小さく、完全な危険水域に入りました。

2021Q1の業績の比較元になっている2020Q1の時期は、コロナ禍による影響があり、スーパーの業績は好調でした。来店者数は一時的に減少をしたものの、ほとんどすべての来店客が買いだめに走り、客単価が跳ね上がったからです。その反動があるとはいうものの、あまりにも深刻な数字です。

f:id:tamakino:20210708103033p:plain

▲主要スーパーの2021Q1営業収入の2020Q1との比較。2020Q1はコロナ禍による業績上昇があったが、その反動で2021Q1は減収になった。

 

f:id:tamakino:20210708103036p:plain



▲利益は深刻な数字が並ぶ。コロナ禍による需要増の反動だけでは説明がつかなくなっている。

 

スーパーが無為無策だったわけではありません。むしろ、どのスーパーもよく戦っているのに、時代の進み方が早すぎて、対応が追いつかなくなっているのです。

この5年間、中国では、生鮮食料品小売市場が大きな狩場となり、テック企業が続々と参入してきました。アリババの新小売、そして生鮮EC。これだけでも市場を蚕食されているのに、2020年には社区団購が広がり、スーパーの顧客が奪われています。

 

このスーパーの受難は、2016年のアリババの創業者、馬雲(マー・ユイン、ジャック・マー)の言葉がからすべてが始まっています。「オンライン小売とオフライン小売は深く融合して新小売となる。すべての小売業は新小売になっていく」というものです。

この発言には凄みがありました。オンライン小売(EC)は生き残れない、オフライン小売(店舗小売)も生き残れない。すべての小売業は新小売に業態転換しなければ生き残れないという意味です。当時のアリババの主力事業はEC「淘宝網」(タオバオ)です。タオバオはオンライン小売の最も成功した例です。それが生き残れないと自己否定をしたのです。

しかし、この時の発言はさほど重要視されませんでした。それは新小売がどのようなものであるのかは具体的には説明されなかったため、「オンラインとオフラインを深く融合する」という美辞麗句を並べた、ありがちな未来論のようにも聞こえたからです。

しかし、この時、すでにアリババは、新小売スーパー「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)のプロジェクトを内部で進めていて、翌2017年には上海市で1号店を開店しました。新小売の具体的なビジネスモデルが明らかになると、既存スーパーは驚愕をし、ここからスーパーの激動の時代が始まります。

 

最もよく戦ったのは、業界のリーダーでもある永輝でした。永輝は自らも新小売スーパーを出店します。そして、生鮮ECが登場すると、自らも生鮮ECを始めます。社区団購が登場すると、永輝は自ら社区団購サービスの準備を始めました。他のスーパーもこの永輝の動きをお手本に、次から次へと登場するライバルに対応をしてきました。

しかし、結果から言えば、「テック企業に負けた」と言わざるを得ません。なぜ、スーパーはテック企業に勝てないのでしょうか。その答えを先に言ってしまうと、スーパーは商品に注目してビジネスを行います。商品をどうやって生産するか、どうやって流通をさせるのか、どうやって商品を消費者に渡してお金に転換をするのか。常に商品に注目します。

一方、テック企業は人に注目します。人はどのような時に白菜を欲しいと思うのか、どのような場と環境を用意すれば白菜にお金を支払うのかと考えます。この違いが決定的なのです。

と言っても、これだけの説明だと、なかなかピンときていただけないと思います。そこで、今回は、スーパーが戦ってきた道のりを振り返りながら、スーパーとテック企業の発想の違いについて考えていきます。

 

続きはメルマガでお読みいただけます。

 

毎週月曜日発行で、月額は税込み550円となりますが、最初の月は無料です。月の途中で購読登録をしても、その月のメルマガすべてが届きます。無料期間だけでもお試しください。

 

今月発行したのは、以下のメルマガです。

vol.079:再び動き始めた顔認証技術。中国の主要プレイヤー6社の戦略

 

登録はこちらから。

https://www.mag2.com/m/0001690218.html