中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

新中華圏が構築されつつある東南アジアITビジネス

まぐまぐ!」でメルマガ「知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード」を発行しています。

明日、vol. 035が発行になります。

 

今回は、目先を変えて、東南アジアのIT状況についてご紹介します。

中国ITのメルマガなのに、なぜ東南アジア?と思われる方もいらっしゃると思います。取り上げる理由は、東南アジアは現在、中国型の発展方式で、絶賛経済成長中だからです。

日本が過去高度成長をしてきたのは「均衡ある発展」でした。都市も地方も、建設業も小売業も、みんなで底上げをすることで発展をしてきました。一方で、中国型は「均衡なき発展」です。「豊かになれる者から豊かになれ」という格差を許容する発展の仕方で、熾烈な競争を行いながら、ITテクノロジーを武器に、短期間で奇跡のような経済成長を成し遂げました。

そのため、中国のトップクラスのビジネスを見れば、すでにワールドクラスになっているものの、底辺レベルのビジネスを見れば、いまだにどんぶり勘定のいい加減なものがたくさん残っています。ITテクノロジーも同じで、人工知能の応用開発の分野では、すでに世界をリードするようになっていますが、まだまだ買った瞬間に壊れるいい加減なデジタル製品も出回っています。

 

少し前まで、「中国は日本がたどってきた道を走っている」という方がいましたが、個人的にはこの言い方に違和感がありました。目的地は似た場所であっても、中国は日本とは違う道を走っているのではないか。それも日本が緩やかな坂を一歩一歩登ってきたのに対し、中国は崖をよじ登り、沢を飛び越えて直線的に登っているのではないか。

まさに、東南アジアが、今、中国型の発展を始めているのです。それに中国も気がついていて、盛んに技術提供、資本投下を行っています。元々、東南アジアは中国文化の影響が強い中華圏でしたが、ITテクノロジー、ITビジネスの分野でも中華圏が成立しています。

日本はASEANとの関係を強化することで、日本を中心としたアジア経済圏をつくる戦略ですが、ITビジネスの分野に限れば、すでに中国を中心にした中華経済圏が構築されつつあります。

そこで、今回は、東南アジアのIT事情をご紹介し、中国との関係がどうなっているかを考えていただきたいと思います。

 

まず、東南アジアITの「均衡なき発展」ぶりを知っていただきたいと思います。東南アジアといっても、シンガポールのようなIT先進国もあれば、まだまだこれから環境を整えなければならない国もあります。

次の表は、東南アジア各国の銀行口座保有率、デビットカード、クレジットカード保有率、携帯電話加入率を世界銀行の最新の2017年の統計からまとめたものです。シンガポール、マレーシア、タイでは銀行口座保有率がある程度高いものの、インドネシア以下の国では半数以下の人しか銀行口座を持っていません。それに伴いクレジットカード保有率はシンガポールでも半数以下、その他の国では持っている人の方が珍しい状況です。

ところが、携帯電話加入率を見ていただくと、多くの国で100%を超えています。日本よりも高い国が多いのです。つまり、携帯電話が生活とビジネスの基本的なインフラになっているのです。

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▲東南アジアでは、一部の国を除き、銀行口座という基本的な金融インフラさえまだ普及していない。一方で、携帯電話加入率は異常に高くなっている。

 

もうひとつ、見ていただきたい資料があります。スイスの国際経営開発研究所(International Institute for Management Development、IMD)が毎年公開しているIT競争力の国際ランキング「IMD World Digital Competitiveness Ranking」(https://www.imd.org/wcc/world-competitiveness-center-rankings/world-digital-competitiveness-rankings-2019/)です。

これは世界63カ国のIT競争力を、「知識」「テクノロジー」「将来への備え」の3つのカテゴリーについて、31の統計データ、20の調査データの合計51項目について点数化をし、ランキングを作成したものです。

これによると、トップ3は、米国、シンガポールスウェーデンとなり、日本は23位になっています。アジア圏だけを抜き出すと、シンガポール、香港、韓国と続き、日本は6位。しかもすぐ下にはマレーシアが迫ってきています。東南アジア各国は、シンガポールを除けば、日本よりも下位ですが、IT分野でも日本に迫りつつあるのです。

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▲IMDによるIT競争力の国際ランキング。日本は先頭グループではなく、第2グループの上位といった感触。アジアの中でも、注意グループに属し、マレーシアなどに追い上げられている。

 

この資料では、51の項目すべてに順位づけがされていて、上位に入っている項目と下位に入っている項目を見ると、その国のITの強みと弱みがわかります。蛇足ですが、日本の上位に入っている項目と、下位に入っている項目を掲げておきます。

日本は、「国際経験」「機会と脅威」「企業の機敏さ」「ビッグデータ解析の利用」の4項目で63位、つまり世界最低になっています。アジア最下位のモンゴル、世界最下位のベネズエラよりも低い評価であるということを噛み締める必要があります。

なお、同様の強みと弱みの表をアジア各国分作成したので、このメルマガの最後に添付をしておきます。各国のIT状況は一様ではなく、それぞれの国によって強みと弱みが違っています。参考にされてください。

今回は、東南アジアのIT状況をご紹介し、IT中華圏がどこまで進んでいるのかを考えます。

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▲IMDのIT競争力ランキングから抽出した日本ITの強みと弱み。数字は各項目での世界63カ国での順位。日本は世界最下位いの項目が4つもある。

 

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