中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

過熱をする東南アジアEC。地元系vsアリババに、SHEIN、TikTokも参入

成長の限界が見え始めた中国資本が東南アジアに熱い視線を送っている。すでに大量の投資資金が流れ込み始めている。アリババはラザダを買収し、タオバオ化をねらっている。さらに、アパレル「SHEIN」(シーイン)やTikTok Shoppingも参入したと人人都是産品経理が報じた。

 

中国の投資家が熱い視線を送る東南アジア

中国の景気が後退をし、共同富裕を目指す中国政府のテックジャイアントに対する規制が強化される中で、中国企業の海外での活動が活発化をしている。特に、言語や文化などで親和性の高い東南アジアでは「白熱」という言葉が合うほど動きが激しくなり始めている。もはや中国内では成長は求められない、成長する東南アジアに視線が集まっている。

 

地元系のショッピーも華人が運営

特に白熱をしているのがECの分野だ。アリババの子会社となったLazada(ラザダ)、地元系のShopee(ショッピー)、企業価値H&MZaraの合計を超えたリアルタイムアパレル「SHEIN」(シーイン)、さらにここにTikTok Shoppingが参入をしている。

中国企業が意識をしているのがシンガポールを拠点にする地元系のショッピーだ。東南アジアのテンセントとも呼ばれるSEAグループ傘下のEC企業だ。しかし、地元系と言っても実際は中国企業的だ。SEAのCEOは李小冬であり、ショッピーのCEOは馮陟旻と、いずれも中国系の華人であり、中国のECの発展史やビジネスモデルは当然理解をしている。馮陟旻CEOの前職は国際的なコンサル企業「マッキンゼー」であり、中国と東南アジア地区のECの専門家とも言える。

▲東南アジア地元系EC「ショッピー」。東南アジア各国のまだ所得が低い人々をターゲットにし、Lazadaに対抗をしている。https://shopee.com

 

ラザダを東南アジアのタオバオにしたいアリババ

アリババは、ラザダを東南アジアの淘宝網タオバオ)にしようとしている。東南アジア各国で、タオバオとほぼ同じ運営手法を実施し、シンガポールのように所得の高い地区では天猫(Tmall)とほぼ同じ運営手法を実施している。国別にシステムやプロモーションを現地化するのではなく、東南アジアをひとつと捉えて、一気に拡大をしようとしている。

さらに、アリババはラザダをタオバオの補助として考えている。ラザダでは大量の中国製品が販売され、頭打ちになっている中国小売業を成長させ、さらには過剰になっている中国製造業を成長させようとしている。

一方、地元系のショッピーは東南アジアが主戦場であり、東南アジア各国の文化の違いにより、品揃えから販売手法まで、きめ細かく現地化を行なっている。シンガポールのように所得が高い人たちは、東南アジア全体から見ればごく一部にすぎず、所得が低い人にフォーカスをあてている。

これは、中国の地方都市、農村の下沈市場におけるタオバオと拼多多(ピンドードー)の競争の構図とよく似ている。ショッピーは親会社のSEAがゲームとスマホ決済で拡大をしており、これによりショッピーも好調に成長をしている。ラザダは苦しい立場に追い込まれている。

▲アリババ傘下に入ったラザダ。アリババはLazadaをタオバオ化しようとしている。https://www.lazada.com/en/

 

SHEINはシンガポールから東南アジアと欧州へ

そこに、ユニコーン企業のSHEINとTikTok Shppingが参入をし、ラザダ、ショッピーともに警戒をしている。

特に、ファストファッションを超えたリアルタイムファッションだとまで呼ばれるアパレルECのSHEINは、2021年のiOSのECアプリランキングで、全世界54カ国で1位を取り、ダウンロード数ではアマゾンを超えた。また、2021年の営業収入は100億ドルに迫り、連続8年、前年比200%成長を達成している。

SHEINも2021年からシンガポールで拠点を築き始め、シンガポールから東南アジア各国に進出をしていく計画だ。

シンガポールは東南アジア各国への進出のハブだけでなく、欧州への物流拠点にもなっている。SHEINはシンガポールに拠点を築くことで、東南アジア市場だけでなく、欧州への物流を加速することもねらっている。

▲米国で好調な売れ行きを示しているSHEINも東南アジアへの進出を始めている。https://www.shein.com/

 

TikTokはライブコマース文化の浸透が鍵

TikTok Shoppingが東南アジアに進出することは以前から予想をされていた。中国内での「抖音」(ドウイン)によるECが流通総額(GMV)8500億元という成功をし、その国際版であるTikTokの利用者が多い東南アジアでもECを展開するのは自然なことだ。東南アジアは以前から中国製品になじみもあり、文化的な影響も受けている。2021年のTikTok ShoppingのGMVは約60億ドルだったが、2022年は倍の120億ドルを目標に置いている。

しかし、死角もある。中国で短期間で小売チャンネルとして定着をしたライブコマースが中国以外では人気がない。中国のライブコマースでは、大幅な割引価格と効率的な物流により、欲しいものが安く、すぐに手に入ることからライブコマースが利用されているが、東南アジアでは割引価格を設定することが難しく、物流も中国ほど整っていない。

また、中国と東南アジアでは文化的な壁もある。中国のライブコマースはスタジオにMCが座り、早口で商品の説明をし、いかに安く、早く手に入るかをアピールする。しかし、このようなスタイルは東南アジアでは受けない。見てもらうには寸劇やコントなどのコンテンツが必要だ。テレビのバラエティーショーのような演出が求められている。

TikTok Shoppingも米国、英国、インドネシアなどでサービスを始めている。https://shop.tiktok.com/business/en

 

中国の東南アジア進出が始まる

中国の経済に頭打ち感が出てきたことで、東南アジアが新たな成長市場として注目を浴びるようになっている。今後も、あらゆる分野で中国企業が東南アジアに進出をすることになる。中国企業と地元企業の激しい競争が始まる。2022年は、将来の大勢を決める重要な年になりそうだ。