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MaaS(マース、Mobility As A Service)という言葉が話題になっています。移動手段のサービス化という意味で、究極の姿は移動手段のサブスク化です。スマホに「明日の6時までに沖縄県那覇市にいたい」と伝えると、必要なルート検索をし、予約が必要な移動手段には自動的に予約を入れてくれる。料金は月額定額制で移動し放題。
そんな夢のようなことが実現できるかはともかく、移動コストが定額になることで、人の移動量は爆発的に増加します。それにより社会が大きく変革されていくという考え方です。しかし、コロナ禍により、人々は移動を控えるようになり、MaaSが目指すべきものも変わってくることになるでしょう。
そもそも、そんな夢のようなことが実現できるのかという問題もあります。そこで一般的には5つのレベルに分けられ、それに従って進化をしていくと考えられています。
レベル0:統合なし。鉄道、バス、自動車などがそれぞれ独立でサービスを提供している状態。現在の状況です。
レベル1:情報の統合。利用者が目的地に移動するのに必要な手段の情報が横断的に提供される。グーグルマップの経路検索や乗り換え案内アプリなどの状態です。
レベル2:予約、決済の統合。経路検索でルートが決まったら、必要な予約、決済ができるというもの。乗り換え案内アプリで経路検索をして、実行すると、予約と決済が行われ、あとはスマホをかざすだけですべての移動手段が利用できるというイメージです。
レベル3:サービスの統合。各移動手段で料金体系も統合される。例えば、目的地まで異なる移動手段を使っても料金は同じであるとか、同一市内の交通手段は月額定額制で乗り放題とかになります。利用者にとっては料金体系が分かりやすくなり、サービス提供側は利用頻度に応じて収益を比例分配していきます。
レベル4:政策の統合。国や自治体が、MaaSを前提とした都市開発計画を立てていくというものです。
お分かりのとおり、日本はMaaSレベル1の段階です。MaaS先進国と言われるフィンランドのでは、Whim(https://whimapp.com/)というアプリを使って、電車、バス、タクシー、シェアリング自転車、レンタカーなどのモビリティサービスを一括して、予約、決済できるようになっています。つまり、MaaSレベル2が実現できています。
日本でも、トヨタが推進するmy routeが福岡市、北九州市で、西鉄バス、JR九州の他、トヨタのカーシェアサービスが一括でルート検索でき、チケットの購入、決済などができるようになっています。また、1日定額フリー乗車券などもアプリ内で購入することができます。
このようにMaaSレベル2の試みも始まっていますが、独立しているモビリティサービスがプラットフォームに参加をしてもらうことが必要で、サービス拡充、地域拡大には時間がかかります。
中国で、最もこのMaaSレベル2に近いポジションにいる企業が滴滴出行(ディーディー)です。滴滴では、タクシー配車、ライドシェア、ハイヤー、シェア自転車が利用でき、さらにオンデマンドバス、運転代行などのサービスも提供し、さらには公共バスの運行代行も始めています。
中国の場合、鉄道、地下鉄、バスは基本的に公営なので、公共交通と航空機以外は、滴滴出行がほとんどカバーをしている状況です。
滴滴出向は、未上場ですが、企業価値は3300億元(約5兆円)と言われています。これはホンダとほぼ同じ規模です。それなのに上場をしない理由は、まだまだ大きな成長をする必要があるからです。上場をしてしまうと、大きな意思決定をするときに一定の手順を経る必要が生まれ、決断スピードが鈍るのを嫌っているのだと言われています。
実際、その成長の方向が見え始めています。滴滴は、上海でロボタクシーの試験営業を始めました。実際に乗客を乗せての営業です。運転席に監視員が乗務しますが、自動運転が許可されている地域内では運転をしないという無人運転です。このロボタクシーを2030年までに100万台投入するということを発表しています。
つまり、滴滴出行は、自動運転によりロボタクシーを推進し、運営コストを究極に小さくした上で、公共交通、ロボバス、ロボタクシー、シェアリング自転車という組み合わせでMaaSを実現していこうとしています。中国の航空機、公共交通はオープンデータ化が進んでいるので、予約、決済もAPI化されているので、滴滴はすでにMaaSアプリを開発しようと思えばできる状況になっています。
それにはまだまだ時間が必要ですが、1社でできる分、進み出せば案外早く実現できるかもしれません。そもそも滴滴出行は、まだ創業して8年の若い企業なのです。ゼロから始めて、企業価値3300億元まで成長しました。
この滴滴という企業はいったいどういう企業なのでしょうか。今回は、滴滴出行という企業についてご紹介します。
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