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止まらない少子化により不安視される中国経済の行末。少子化をくいとめることは可能なのか

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今回は、中国の少子化にについてご紹介します。

 

昨年2022年7月に発表された中国の人口は14億2600万人。新中国建国以来、初めて減少に転じました。

中国の人口が減少した理由のひとつは有名な「一人っ子政策」です。1979年から始まり、2014年に終了しました。中国は1960年頃に社会が安定をすると、出生率が上がり、1965年には人口の3.78%という高い出世率を記録しました(全人口の3.78%に相当する新生児がいたという意味です)。このため、人口抑制政策として「一人っ子政策」が実施をされました。

ところが、2015年になると、むしろ人口減少が心配をされるようになり、子ども2人までOKなふたりっ子政策が始まり、2021年にはこの制限も解除され、自由に子どもを産めるようになりました。

 

しかし、緩和をしても、出生率は下がる一方です。その理由は、日本とまったく同じで、結婚、出産、子育てにかかる費用が高騰をしているからです。特に、競争社会が激しい中国で、経済的な余裕がないのに子どもをつくることに対する抵抗感が大きくなってきています。中学卒業で社会に出しても、とても高収入の仕事に就くことは難しく、つらい人生を歩むことになるからです。

そこで、まず、中国で、子どもを1人成年させるのにいくらぐらいかかるのかということを計算してみたいと思います。

 

なぜ、このような計算をするのかというと、子どもを育てるコストが中国では大きな負担になってきていると感じている人が増えているからです。日本でもそのような傾向は出ていますが、もはや子どもは贅沢品のひとつで、かなりの経済的余裕がないと産めなくなってきているのです。

少子化が進むと何が問題なのでしょうか?よく、日本では人口減少につながると言われますが、中国ではより問題を絞り込んで、労働人口の減少につながることが問題視されています。労働人口はそのまま消費人口ですから、労働人口が10%減れば、経済規模も自動的に10%縮小することになります。ToCビジネスは直接影響を受けますし、ToC企業の業績が落ちればToB企業も影響を受けます。

後ほどご紹介しますが、中国の労働人口は2014年をピークに減少に転じていて、この辺りから企業経営者は新しい時代に対応する対策に動き始めています。2016年に、アリババの創業者、馬雲(マー・ユイン、ジャック・マー)がECから新小売への転換を宣言したのも、この流れのひとつです。

つまり、少子化問題を解決して、労働人口を増やすか、減らない状況にしないと、中国経済は確実に衰退をします。中国で経済が衰退するということは、国家体制の維持すら難しくなる深刻な事態です。ですので、少子化対策を行い、労働人口を補う必要があるのです。

 

子どもの養育コストを計算するときに必要な消費支出のデータなどは、国家統計局にそろっていますが、2020年以降のデータは使えません。コロナ禍により、消費傾向、消費性向が大きく平常とはずれてしまっているからです。そこで、2019年の統計データを使って考えていきます。

国家統計局のデータによると、2019年の全国平均の消費支出は年間2万1559元、その中で都市住民は2万8063元、農村住民は1万3328元となります。2万元が38万円ほどに相当します。

意外に少ないように思うかもしれませんが、これは消費支出の合計額を単純に人口で割ったものになるので、0歳児からお年寄りまでを含めた額になります。それでも4人家族であれば、2万1559元×4=8万6236元(約166.9万円)となり、それなりの額になります。北京、上海あたりの生活コストは、もはや日本の中核都市とまったく変わらない感覚ですが、全国平均にすると、まだまだ中国の物価は抑えられているようです。

これを、子どもが0歳から18歳まで、同じ生活コストがかかると仮定をすると、2万1559元×18=38万8062元(約751.1万円)が子どもが成人するまでのコストと考えることができます。ちなみに都市住人では50万5134元(約977.6万円)、農村住人では23万9904元(約464.3万円)となります。

 

しかし、当然ですが、これは子どもがご飯を食べ、生きていくための基本コストで、他にもいろいろ費用がかかります。子どもをつくるには、妊娠、出産にかかる費用が必要になります。妊娠をすると、栄養のある食事をして、検査を受け、ベビー用品を買い揃えなければなりません。だいたい1万元程度が一般的だそうです。

さらに、分娩、入院費用、産後ケア費用なども必要になります。最近の中国では無痛分娩を選ぶ人が増えていて、費用は高額なものから割安なものまでさまざまです。出産にかかる費用も平均をするとだいたい1.5万元が一般的だそうです。

 

子どもが3歳になると、幼稚園や民間の就学前教育に通わせることが一般的になっています。これも費用はさまざまですが、仮に月1000元としておきます。3歳から5歳までの3年間で3.6万元が必要になります。

6歳から17歳までは、義務教育+準義務教育であるため、家庭の教育費負担は大きく減少します。しかし、まったく0にはなりません。文房具を買ったり、教材を買ったり、受験前になると参考書や問題集も必要ですが、現代ではタブレットかPCも必要になります。

国家統計局のデータによると、2019年の一人あたりの支出のうち、教育・文化・娯楽の支出は2513元となっています。両親と子どもがいる家庭では、3人で2513×3=7539元の教育・文化・娯楽費を使っていることになります。

 

▲2019年の平均支出の内訳。教育・文化・娯楽費の割合は11.7%と少ない。

 

このような家庭では、子どもの教育・文化・娯楽支出が多く、親の支出は抑えられるでしょうから、子どもが2人分、両親が2人で1人分を使っていると仮定します。すると、子どもの教育・文化・娯楽は2513×2=5026元となります。ただし、1人分の教育・文化・娯楽は先ほどの子どもの基本コストに含まれているので、基本コストにもう1人分の教育・文化・娯楽費2513元を追加します。

 

高校生になると、自宅から通うというのは都市部の限られた人たちで、多くは学生寮に入ることになります。学校の中に管理をされた学生寮が用意されています。高校の多くは都市部にあるため、農村の子どもたちは学生寮に入り、都市に住んで自宅から通える場合でも、学業に集中できるという理由で学生寮に入ることがあります。この費用が年2000元と仮定をします。

こうして概算をすると、子どもが高校を卒業して成人するまでの養育コストは総額48万5218元(約939.0万円)となります。つまり、中国ではざっと考えて、子ども1人を育てるのに50万元がかかることになります。これは、現実の収入に比較をして高いのでしょうか、安いのでしょうか。

かなり荒い試算であり、経済的に余裕のある家庭と余裕のない家庭ではこのコストも数倍は違っているでしょう。しかし、この数字を一応の平均値として、この額が中国の親たちにとって、どのくらいの負担であるかを考え、国際比較をしてみたいと思います。そして、少子化に対して、どのような対策が考えられているのかをご紹介します。

▲子どもが成人するまでのコスト。48.5218元(約939.0万円)となった。

 

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vol.162:中国の津々浦々に出店するケンタッキー・フライド・チキン。地方市場進出に必要なこととは?