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フーマフレッシュの垂直統合シフトに、サプライヤーが大量離反。フーマに何が起きているのか?

フーマが20%以上全製品の価格を下げるという大胆な価格改定を行なっている。商品を納入するサプライヤーは利益が得られず、離反が起き、300ほどのサプライヤーが100程度にまで減少しているという。フーマは自社製造、自社販売の垂直統合モデルに移行することに挑戦していると媒体が報じた。

 

サプライヤーの離反が起きているフーマフレッシュ

アリババ傘下の新小売スーパー「盒馬」(フーマ)が、昨年2023年10月から大きな改革を行なっている。多くの商品で、20%以上価格を下げるという大胆なものだ。これで利益が取れるのか?答えは多くの商品で取れない。そのため、フーマに商品を納入するサプライヤーは300ほどあったものが、一気に100程度に減少をしてしまった。多くのサプライヤーでは利益が取れないとして撤退の道を選んだ。SKU(Stock Keeping Unit=商品種類数)も5000あったものが2000程度にまで減少をした。将来は2000から3000の間を維持するという。

つまり、価格を下げるために、サプライヤーを切り捨て、商品を絞り込んでいる。この大改革により、上場準備作業も一時的に停止している。いったフーマは何を目指しているのだろうか。

サプライヤー会議で、今後の戦略を説明する侯毅CEO。強制的な価格改定に、多くのサプライヤーから不満がでて、離反が起きてしまった。

 

ハードディスカウントへ移行するフーマ

今、中国の小売業で注目されている言葉が「ソフトディスカウントとハードディスカウント」だ。ソフトディスカウントとは、小売店が利益率を下げたり、投資資金を投入して一時的に割引をするものだ。これまでごく普通に行われてきたことで、新規の顧客を獲得することを目的にしている。一方、ハードディスカウントとは、製造コストや運営コストを下げて、恒久的に価格を下げることをいう。いわば、「いいものを安く売る」という理想の状態だが、品質と低価格の2つはしばしば矛盾をする。フーマはそれをやろうとしている。

▲フーマでは、割引などのソフトディスカウントではなく、製造コストから見直すハードディスカウントに踏み込んで、低価格を実現している。

 

低価格は施策ではなく、業態転換

フーマの侯毅(ホウ・イ)CEOは、今後のフーマの3つの戦略を発表している。それは「Low Price」「Low Cost Operation」「but Unique」だ。低価格、低コスト運営、差別化という、これまで小売業でさんざん言われてきたことだが、その本気度が違う。これまでは小売店が利益を下げたり、人件費を減らすことでこの3つを実現しようとしたソフトディスカウント戦略だった。それは結局、限界があり、原材料価格の高騰などで世の中に値上げを許容する空気感が生まれると、多くのメーカーが値上げをしていくことになる。一方で、品質の悪い安物を安く売る小売店が出てきて品質問題を起こすということを繰り返してきた。

今回、フーマがやろうとしているのはハードディスカウントで、製造まで遡ってコストダウンをしていき、いいものを安く売ることに挑戦をしている。侯毅CEOは、微博(ウェイボー)のアカウントで、「低価格は、販売施策の問題ではなく、業態の問題なのだ」と語っている。これはつまり、ソフトディスカウントからハードディスカウントに転換をするという宣言になっている。

▲新小売スーパーとして、2023年に黒字化を果たした「フーマフレッシュ」。そのフーマがハードディスカウントの低価格に挑戦をしている。

 

垂直統合を目指すフーマの挑戦

しかし、既存サプライヤーを切り捨てるという強硬策を行なってまで転換を図ることに意味はあるのだろうか。当然ながら、サプライヤーの不満は大きく、多くが離脱をしている。しかも、多くのサプライヤーが自発的な離脱ではなく「追放された」と感じている。フーマは当然ながらPB製品を増やしていき、製造から販売まで行う垂直統合モデルになっていかざるを得ない。

問題は「品質と低価格」という矛盾する2つを両立させることができるかどうかだ。一部には「最近のフーマの商品の品質は下がっている」と見る向きもあって、品質と価格の両立が難しいことが窺われる。一方、苦しみながらも垂直モデルを完成させれば、フーマはライバルに対して圧倒的な優位性を得ることになる。すでに上場が見えるところまで成長したフーマが、あえてこの時期に挑戦をしようとしている大改革に多くの人が注目をしている。