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サブスク化する小売業「ホールセラー」。フーマの生死をかけた戦いとは

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今回は、ホールセラーついてご紹介します。

 

アリババ傘下の新小売スーパー「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)が、ウォルマート傘下のホールセラー「サムズクラブ」と激しい価格合戦を繰り広げています。サムズクラブは、日本ではコストコとよく似たビジネスモデルであり、年会費260元を支払うことで買い物ができるという会員制スーパーです。多くの商品がケース買いなど量が多い点もコストコなどと似ています。

このサムズクラブが、今、中国の消費者に受け入れられています。サムズクラブが中国に進出をしたのは、1996年と古く、深圳に第1号店が開店しました。しかし、あまりうまくいかず、スーパーであるウォルマートに改装されています。その後もサムズクラブの拡大は遅く、2013年になってようやく10店舗目が開店するという状況でした。

しかし、2010年後半からサムズクラブの人気が盛り上がります。そこから急速に店舗を拡大し、現在は約60店舗にまで増えています。

この動きを他社が見逃すわけはありません。サムズクラブと同じ会員制スーパーを、フーマも出店していきます。「盒馬X会員店」(フーマX)で、現在、北京、上海、蘇州、南京の4都市に10店舗を展開しています。さらに、スーパーの「永輝」(ヨンホイ)が永輝倉貯店を、ドイツのスーパー「メトロ」がメトロPLUSを、国内スタートアップの「fudi」などが続々とホールセラーをオープンしました。しかし、実質的にはフーマXとサムズクラブの一騎打ちの格好です。

 

このフーマXとサムズクラブが熾烈な価格競争を始めています。サムズクラブが128元で発売したスイーツ「ドリアンミルフィーユ」が人気商品となりました。そこに、フーマXも同様の商品を発売し99元で発売をしました。すると、サムズクラブは98.9元に値下げ、フーマXが対抗して89元に値下げします。さらに、サムズクラブが88元に下げるという価格改定がたびたび行われ、現在はサムズクラブは85元、フーマXは79元という価格になっています。

ネットでは「小学生のケンカみたい」という意見が圧倒的です。ところがフーマの侯毅(ホウ・イ)CEOは、大真面目な顔で「生死を賭けた戦い」と呼んでいます。フーマXでは、この価格改定を「移山価格」と名づけています。これは中国で有名な古事成語「愚公移山」に倣っています。昔、愚公という人が山のそばに住んでいて、山が移動にじゃまであることから、山を移そうとします。毎日、少しずつ土を運びますが、ほとんど山に影響はありません。周りの人たちは愚かな努力をしていると笑いますが、愚公は「自分の代で無理なら、子どもの代、孫の代にも続けて、必ずやり遂げる」と答えました。すると、それを見ていた天帝(神様)が山を移してくれたというものです。地道な努力を続ければ、必ず事は成るという意味の古事成語です。

商品の値下げをするというのは簡単ではありません。一時的な優待価格であれば、販促費から支出をして赤字価格で販売できますが、価格改定は永久的なものです。コストを見直し、流通経費を見直し、店舗の業務効率をあげてという地道な努力が必要になります。移山価格という言葉には、そういう覚悟が含まれています。

また、侯毅CEOは、フーマの最終戦争になるという言い方もしています。

なぜ、単なる値下げ競争が生死を賭けた戦いや最終戦争になるのでしょうか。これは、侯毅CEOが大袈裟な言葉使いをしているのではなく、確かにフーマにとって生死を賭けた戦いになる可能性があり、小売業の最終戦争になる可能性があります。どうしてそう言えるのか、それが今回のテーマです。

それを理解するには、まずホールセラーがどのようなビジネスモデルであるのかを理解する必要があります。特に「利益はどこからやってくるのか」という視点が重要になります。それを理解すると、侯毅CEOが「生死をかけた戦い」「最終戦争」と言う理由が見えてきます。今回は、ホールセラーのビジネスモデルについてご紹介します。

 

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