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Z世代の新たな10の消費傾向。内向き、節約、伝統文化。小紅書の調査から

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今回は、Z世代の新たな消費傾向についてご紹介します。

 

日本でも中国でも多くのtoC企業がZ世代の動向に注目をしています。その理由は3つあります。

ひとつは、Z世代とは、定義によって異なりますが、1995年から2010年ぐらいまでに生まれた世代を指します。つまり、わかりやすく言えば10代と20代前半です。この世代は若いためにまだまだ経済力がなく、消費力は大きくありませんが、今後、消費者の中心世代になっていきます。どの世代でも、10代、20代の時に消費傾向が決まりますから、Z世代の大量消費が始まる前に傾向を捉えて準備をしておきたいと考えるのは当然のことです。

2つ目は、スマートフォンネイティブ世代であるということです。物心ついた時にはスマホがあり、パソコンでインターネットにアクセスするという感覚がありません。新入社員が、フルキーボードが使えない、Excelが使えないという話もよく聞きます。デバイススマホが基本であり、当然ながらウェブよりもSNSから情報を得ることが普通になっています。

これは現役世代(パソコン世代)から見ると大きな断絶があり、彼ら/彼女らが何を考え、どのように行動するのかがわからず不安になります。ですので、Z世代の消費者のことを少しでも理解しておきたいという自然な気持ちもあるかと思います。

3つ目は、Z世代の最大の特徴ではないかと思いますが、海外のZ世代と似た傾向を持つということです。日本のZ世代は、海外のSNSを見たりはしていないとは思いますが、それでも自然な形で海外情報や海外の感覚が入ってきて影響を受けています。例えば、Xでは、日本と米国の区別はなく、検索をすれば米国のツイートが読めます。積極的に読まなくても、それを翻訳したり、関連ツイートを日本語でする人がいるため、自然に海外の感覚に触れることになります。例えば、イーロン・マスク氏がツイッターを買収して、さまざまな改革を行なっていることを、日本人の多くの人が細部にわたるまでよく知っています。

また、TikTokには海外のショートムービーもリコメンドをされるため、知らず知らずのうちに海外文化に触れることになっています。例えば、中国の抖音(ドウイン、中国版TikTok)は、ダンス映像の発信地になっていますが、中国で流行したダンスはほぼリアルタイムで韓国や日本でも流行り始めます。踊っている韓国人や日本人は、それが中国発などということは知らないでしょうし、気にもしていないと思います。楽しいから自分もやってみたという感覚だと思います。

 

ところが、では、Z世代のことをどうやって知ったらいいのかというと、日本ではこれといった決め手がありません。XやLINEというSNSは、Z世代専用ではなく、幅広い世代の人が使っています。データを整理しなければ、Z世代の動向を知ることができません。TikTokが比較的Z世代に特化をしていると言われますが、実際はかなり中高年にまでも広がっているようです。結局、昔ながらのアンケート調査のような方法しかないのです。

Z世代といっても、みな、同じではありません。さまざまな傾向を持った人がいるのは当然のことです。アンケート調査では、そのようなセグメント群のどこに当たっているのかをよく考え、設計していかないと、Z世代の中の特定の人に対するアンケートになってしまうことがあります。

 

一方、中国では、Z世代の調査にうってつけのSNSがあります。「小紅書」(シャオホンシュー)です。小紅書は月間アクティブユーザー数(MAU)が2億人を超え、その72%が90后(90年代以降生まれ)で、Z世代が中心のSNSになっています。男性比率は以前は少なく、90%以上が女性でしたが、現在では男性比率が30%を超えました。

もともと、海外ショッピング情報を伝えるメディアから出発をしたため、若い女性が中心のSNSになっています。このため、小紅書を眺めているだけでも、Z世代の動向がつかめます。

例えば、今年の初めあたりから、CityWalkが若い世代の間で人気になっています。中国語では「城市漫歩」と呼ばれますが、この言い方をする人は少なく、多くの人が英語そのままでCityWalkと呼びます。内容は、都市の裏路地散歩で、特に新しいということはありません。

しかし、CityWalkに関する投稿は雰囲気が大きく変わりました。それまでの街中散歩の投稿記事は、こじゃれたカフェなどでの自撮り写真が中心でした。つまり、背景ではなく、自分がコンテンツの中心だったのです。「こんなカフェでお茶してしまう私を見てほしい」という自己顕示欲が前面に出ていたものでした。ところが、CityWalkでは、都市の最先端のカフェではなく、裏路地でひっそりと開いている穴場カフェなどが取り上げられ、しかも、投稿者の影がなく、風景だけを淡々と投稿する記事が多くなっています。もちろん、「こんな素敵な場所を発見できる私のセンスを見て」という自己顕示欲はあるのでしょうが、「私、私」ではなくなっています。

以前は誰もが何かのきっかけで、SNSの人気者になることをねらっていましたが、明らかにそうではなく、情報を発信し、それに応えてくれる人とつながることを楽しむ人たちが登場し始めています。SNSの本来の使い方に収束しようとしています。

 

ぼんやりと眺めているだけでも、このような傾向がつかみ取れるのが小紅書ですが、もちろん投稿記事の数量などを分析して、より深い知見を得ることも可能です。そのような研究を小紅書と中国社会科学院社会学研究所が協働をして行なっています。

手法は単純で、Z世代の消費生活に関するハッシュタグに注目をし、2022年と2023年の比較を行い、増加したハッシュタグに注目をして分析を行うというものです。その成果は「小紅書年度生活趨勢:真実生活に入る」というレポートにまとめられています。2023年にZ世代がどのような消費傾向に注目をしたのかがわかります。

2023年版では、新しい消費傾向として、次の10項目が挙げられています。

1)地元再発見

2)地元味志向

3)遠出

4)ストレス軽減

5)シンプル生活

6)伝統文具の再発見

7)ご近所キャンプ

8)マイルーム桃源郷

9)不用品リサイクル

10)喫茶去

 

なんとなく眺めただけでも、内向き感覚が感じ取れると思います。これは去年、今年の傾向ではなく、ここ5年ほどの傾向です。Z世代でキーワードになっているのが「社恐」(シャーコン)です。社交恐怖症を略したものですが、人嫌いとは少しニュアンスが違います。他人と付き合う時にどのようなやり取りをすればいいのかがわからず、緊張をしてしまい、突飛な挙動をとってしまい、それが自己嫌悪となってストレスを感じてしまうというものです。日本の「空気が読めない」ことによりストレスを感じてしまう感覚と似ています。「コミュ障」に近い言葉です。会社の飲み会(日本ほど多くありません)などは非常にストレスを感じる場になります。

重要なのは、人が嫌いだから人との社交を避けるというわけではないということです。人並みに友だちもつくりたいし、恋人もつくりたい。でも、どうしていいかわからないというのが社恐です。そのような社恐族にとっては、SNSの距離を保った交流が心地よくなります。

いずれにしても、Z世代向けビジネスを展開するには、このような消費傾向にそった商品企画、サービス企画をして、反応をSNSなどから収集し、改善をしていくという作業が必須になります。

今回は、Z世代が中心となったSNS「小紅書」で、2023年に上昇をした10の消費傾向キーワードについてご紹介します。

 

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