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大学は外に開くべきか、閉じるべきか。コロナ禍で閉じた大学キャンパスが徐々に開放に

長いコロナ禍の間、中国の大学の多くが外部の人間をキャンパス内に入れないというポリシーをとった。しかし、観光目的で参観したい、聴講生として講義を受けたいという要望は強く、徐々に開放する方向に進んでいると北青放牛班が報じた。

 

キャンパスは開くべきか閉じるべきか

北京市には、北京大学清華大学など、中国を代表する大学がある。以前は、自由に中に入ることができ、購買部で大学名の入ったグッズを購入することもでき、観光地としても有名だった。地方から親子連れで観光にやってきて、子どもに「北清に入学をする」意識づけをするのが目的だ。

しかし、2018年頃からセキュリティの問題を考えるようになり、門には顔認証やNFCによる改札がつけられ、関係者以外は守衛の詰所で身分証を提示しなければ入れないようになった。それでも、登録をすればキャンパス内に入ることができたが、2020年からのコロナ禍により厳格化をされ、教師と学生、卒業生、学生の親戚や友人、面会予定者以外は入れないようになっている。

大学はオープンであるべきか、それともクローズにすべきか、市民の間に議論が起きている。

▲現在の大学は、門に改札が設置され、関係者は顔認証で入場をする。外部の人は、守衛の詰所で身分証を提示して入る必要がある。現在は、多くの大学で予約のない人は入れてくれないようになっている。

 

キャンパスを参観する3つの方法

現在、キャンパス内に入るには3つの方法がある。ひとつは聴講生になることだ。聴講生になるは、他の大学に在学をしているか研究機関に所属をしていて、所属する大学または研究機関からの紹介が必要になる。1つの講義を受け、期末試験を受けるには500元の授業料を支払う必要がある。

2つ目の方法は、参観予約をすることだ。各大学の微信(ウェイシン、WeChat)ミニプログラムから実名で参観予約をする。参観時にはミニプログラムの中の予約票と身分証を提示して参観をする。ただし、人数と参観日が制限をされているため、すぐにいっぱいになってしまい、予約を取るのは簡単ではない状況だ。

3つ目の方法は、学生予約を利用する方法だ。北京大学の場合、在校生は親戚や友人のために月8人(1日2名まで)までの訪問者の予約ができるようになっている。学生が専用のウェブから予約を行い、訪問者は専用の入り口から身分証を提示してキャンパス内に入る。

北京大学の参観予約ミニプログラム。参観日が限られ、人数も制限されているため、予約を取るのは簡単ではない。

清華大学の参観予約ミニプログラム。やはり参観日が少ないため、すぐに予約が埋まってしまう。

 

小遣い稼ぎになっている学生予約

つまり、関係者に知り合いがいなければ、なかなか大学の中に入ることはできない。そこで、北京青年報の記者が、その他の方法がないのかをSNSで探してみると、学生が小遣い稼ぎをしていることを発見した。

学生がSNSにメッセージを出し、それを見た参観希望者が連絡を取ると、「学生予約訪問客」のスクリーンショットが送られてくる。この入力項目の内容を送ると、学生がその通りに入力をしてくれ、訪問予約ができるというものだ。予約をしてもらうには100元の紅包(ホンバオ)を送る必要があり、学生の小遣い稼ぎになっているようだ。

このような小遣い稼ぎは、もちろん不正行為だが、市民にとってはキャンパス内を参観したい、授業を聞いてみたいというニーズがあるのに、なかなか簡単には大学内に入ることができないということがあり、学生にとっては親戚や友人と会うだけであれば自分が外へ出ればいいため、月8人の訪問客予約枠が無駄になっているということがあり、それぞれの利益が一致をしていることになる。

▲学生予約を使って小遣い稼ぎをしている学生に連絡をすると、申請画面のスナップショットが送られてくる。入力事項を伝えると、学生が予約を入れてくれる。だいたい100元程度が謝礼の相場になっているようだ。

▲しばらくすると、自分のスマホに、学生予約が確定したことがショートメッセージで送られてくる。

 

大学は開くべきか、閉じるべきか

大学はもっとオープンであるべきか、それともクローズすべきかというアンケートは、しばしばSNS「微博」(ウェイボー)で行われていて、あるアンケートでは3.7万人が回答をし、2.5万人がオープンであるべきだと回答している。67.6%もの人が開放すべきだと答えている。

しかし、以前のように完全にオープンにすることはできない。当時は、幽霊学生=勝手に入ってきて授業を受ける人がかなりの人数いたことはよく知られており、セキュリティ上の問題や大学の資源の適正利用という観点から問題になっていた。現在は、このような幽霊学生は完全にシャットアウトできている。

一方で、オープンキャンパス政策も進められている。聴講生の枠組みを広げて、普通の市民でも聴講生になることができ、適切な学費を負担してもらう。また、積極的に進められているのが社会人クラスだ。社会人の業務にすぐに役に立つ実践的な講義を企画し、社会人だけでなく、学生も受講できる。学生にとっても、純粋な学問だけでなく、実践的な講義を受けることで視野が広がることになる。

中国人民大学公共管理学院の馬亮教授は、北京青年報の取材に応えた。「大学の文化資源、講義、施設などが開放され共有されれば、より多くの人に学習機会を与えることになります。大学は開放と共有を原則にし、閉鎖と独占は例外にするという原則に立つ必要があります」。

コロナ禍で閉鎖的になってしまった大学が、再び市民に開かれる方向に進み始めている。

北京大学の教室。講義を外に開放するために、聴講生や社会人学生などの制度が整えられ始めている。