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中国移動がクラウド携帯電話を発表。次世代のスマホとして普及をするか?

キャリア「中国移動」(チャイナモバイル)は、「華為」(ファーウェイ)と協働をして、クラウド携帯電話を発表した。現在はAndroidアプリの形で提供され、クラウドの中にもう1台の携帯電話を持つことができると中関村在線が報じた。

 

クラウド内にもう一台の携帯電話を持てるクラウド携帯電話

クラウド携帯電話とは、クラウド内で動作をする仮想の携帯電話のことだ。普通のスマートフォンと同じようにアプリをダウンロードして使うことや、電話をかけることもできる。電話をかける場合、マイクとスピーカーは実体スマホのものを利用するが、音声通信はクラウド内で行われる。ゲームを楽しむ場合は、ディスプレイや操作は実体スマホのものを利用するが、ゲームに必要な演算などはクラウド内で行われる。5Gによる高速通信が可能になったため実現をしたサービスだ。

クラウド携帯電話の画面。自分のスマホクラウド携帯電話になる。使用感は変わらないが、高速の演算、大容量が利用できるようになる。

 

台数、性能、容量が無限になるクラウド携帯電話

中国移動では、「スマホ無限」「性能無限」「空間無限」と3つの無限を強調している。スマホ無限とは、クラウド上に何台でもスマホを持つことができることを意味している。性能無限とは、演算などはクラウド上で行われるため、古いスマホからでもゲームや生成AIなどの重たい処理ができることを意味している。空間無限はいくらでもアプリをインストールし、写真などのデータを保存できることを意味している。

現在、クラウド携帯電話はAndoroidアプリの形で提供されており、アプリを起動すると、画面全体がスマホのようになる。あとは通常のスマホと同じように使うだけだ。

▲中国移動は、スマホの台数、性能、ストレージ空間が無限になるとアピールしている。

 

2台持ちをするならクラウド携帯電話

クラウド携帯電話は次のようなケースで役に立つ。

・プライベートな携帯と仕事用の携帯を完全に分けたいが、2台持ちをするのは面倒。

・企業で業務用スマホを配布する時。クラウド携帯電話を個人のスマホの中で使ってもらえばよくなるため、スマホ本体を配布する必要がなくなる。配布をしないので紛失の管理も必要なくなる。離職をした場合は、アカウントを停止するだけでよくなる。

・ゲームが重すぎて自分のスマホでは動作ができない。

・写真を撮るのが好きで、ストレージがいっぱいになってしまっている。

クラウド携帯電話は容量も簡単に拡張できるため、アプリはいくつでもインストールができ、写真もいくらでも保存することができる。

 

3年前のスマホの感覚、ゲームはすぐに起動する

クラウド携帯電話で、ベンチマークテストを実行してみると、現在のミッドレンジのスマホとほぼ同等だが、通常の使用に関しては不便を感じないという。また、画面は720Pとなる。つまり、3年前から5年前のスマホを使っている人にとっては、クラウド携帯電話は同等かそれ以上の快適さを感じられることになる。

また、ゲームが好きな人にとってはメリットが大きいかもしれない。例えば「王者栄耀」や「原神」「崩壊スターレイル」などのゲームは、起動をする時に長い時間待たされるのが普通だ。しかし、クラウド携帯電話であればわずか数秒で起動する。操作の遅延も15m秒以内であり、体感できるような遅延は起こらない(ただし、5G通信エリアでのみ)。

▲ネット民たちは早速ベンチマークテストを行い、その結果を公表している。その結果によると、3年から5年前のミッドレンジスマホ程度の性能だという。

▲ゲームユーザーからもクラウド携帯電話は注目されている。近年のスマホゲームは起動するのに数分間かかったり、自動アップデートが始まるものが増えている。このようなゲームでも、クラウド携帯電話であれば数秒で起動するようになる。

▲5G圏内にで利用をすれば、アクション系ゲームでも体感できる遅延はないという。

 

クラウド携帯電話は次世代の主流になるのか?

中国移動では「3+2+1」という将来像を描いている。3はクラウド携帯電話、クラウドPC、クラウドストレージのことで、2は実体携帯電話、実体PC、1は統一されたOSだ。つまり、人は性能が中程度の携帯電話とPCから、クラウドの携帯電話やPCにアクセスをして利用するようになるというものだ。

中国移動では、クラウド携帯電話、クラウドPCでは、CPUやGPU、ストレージ容量などを自由にカスタマイズできるようにする計画で、用途に合わせて高性能の携帯電話、PCを利用できるようになる。

手元に置く携帯電話やPCに高い性能は要求されなくなるため、価格も大きく下がり、長く使い続けることができるようになる。クラウドに仕事用、プライベート用など複数の携帯電話(アカウント)を持つようになり、用途に合わせて、演算能力や保存容量をカスタマイズできるようになる。中国移動とファーウェイは、そのような将来像を描いている。