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どの大学が富豪をより多く輩出しているか。不動の北京大学と清華大学

艾瑞深校友会は、毎年大学のランキングを発表している。さまざまな指標を点数化したもので、多くの受験生が志望校を選ぶ時に参考にしている。その艾瑞深校友会が大学別富豪ランキングを発表した。フォーブズの世界長者番付に入った卒業生を大学別にまとめたものだ。北京大学清華大学がトップクラスだが、大学ランキングが低くても、富豪ランキングに入る大学もある。

 

全国から優秀な人材を集める中国の大学入試

艾瑞深校友会は、教育関係の調査会社で、1989年から大学のランキングを発表している。そのランキングは、人民日報や中央電視台を始めとする各メディアで報道されるだけでなく、高校生の多くが、自分が進む大学を選ぶ参考にしている。

中国の大学制度は、優秀な人材を優秀な教育機関に集めることを主眼としている。例えば、一部の例外を除いて、大学生は寮生活をするのが原則になっている。そのため、全国どこの大学でも志望することができ、どの大学も全国から優秀な人材を集めようと競っている。

入学試験である高考(ガオカオ)は、「共通試験」と呼ばれることが多いが、省、自治区直轄市ごとに行われ、試験問題も異なっている。各大学は、各地区へ入学生の人数割当をし、各地の高考の成績上位者から志望する大学を選んでいく方式だ。多くの大学で、地元の省、自治区直轄市の割当を多くはしているが、中国全土から優秀な人材を集められるようになっている。

このため、艾瑞深校友会の大学ランキングは死活問題で、各大学のサイトでも「我が校のランキングが3位あがりました」などというニュースが掲載されるほどだ。

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▲艾瑞深校友会が発表している大学ランキング。9つの指標で400の項目を点数化したもの。多くの人が志望校を選ぶときなどに参考にしている。

 

大学ランキングでは北京大学清華大学がトップの常連

艾瑞深校友会では、大学を400の項目を9つの指標にまとめ点数化をし、その指数によりランキングを決めている。「教育の質」「高級人材輩出数」「学科ごとの競争力」「研究成果」「研究項目」「研究環境」「大学院充実度」「社会での名声」「国際競争力」だ。

このランキングでは、13年連続で北京大学が1位になり、2位の清華大学も常連で、3位の座をめぐって復旦大学浙江大学、南京大学、上海交通大学が競い合っている。

 

フォーブズ長者番付を出身大学別にまとめたランキング

このような上位の大学の卒業生の中には、起業する人も多い。艾瑞深校友会では、さまざまな大学ランキングを発表しているが、2019年に面白いランキングを発表した。それは「富豪卒業生ランキング」だ。

米誌「フォーブズ」では、毎年3月に資産10億ドル(約1000億円)以上の「世界長者番付」を発表している。2019年もアマゾンの創業者ジェフ・ベゾスが1位となり、この年は世界で2153人がランキングされた。

艾瑞深校友会では、この世界長者番付にランクインした中国人の出身校を調べ、大学別の富豪ランキングを公開している。これによると、やはり北京大学清華大学が圧倒的に多い。北京大学清華大学浙江大学では、今でも9割以上の学生が起業を考えているという。

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▲フォーブズの富豪ランキングに入った卒業生の数で比較した大学別富豪ランキング。深圳大学などのように、大学ランキングは低くても、富豪ランキングが高い大学もいくつか見受けられる。

 

起業熱が高いのは北京大学清華大学浙江大学

北京大学卒業生には成功者が多い。百度のロビン・リー、教育サービスの「新東方」の敏洪、EC「当当網」の李国慶、シェアリング自転車「ofo」の戴威などがいる。北京大学によると、2019年の卒業者のうち50名が起業をしたという。

清華大学は富豪ランキングでは北京大学の後塵を拝しているが、起業熱の高い大学だ。チャールズ・チャンがポータルサイト「捜狐」(ソーフー)で成功している。また、美団の王興も清華大学の出身者だ。清華大学によると、2019年の卒業生のうち52名が起業をした。

浙江大学も起業熱が高い。2019年の卒業生のうち、39名が起業をした。

このほか、中国人民大学も起業する学生が多く、2019年の卒業生のうち39名が起業をした。

この他、情報を公開していないので、正確な人数はわからないが、復旦大学上海交通大学も起業をする卒業生が多いことで有名だ。

 

学生起業よりも卒業後留学してから起業するパターンが増えている

ただし、学部在学中に起業する、あるいは学部卒業後すぐに起業するという例は少なくなりつつあるという。学部卒業後、海外留学をして帰国後起業というパターンや、大学院に在籍しながら起業を模索し、成功が見えたら中退をして専念するというパターンが増えている。

中国経済は、以前のような急成長ではなくなり、緩やかな成長の時代を迎えているが、学生の起業熱はいまだに衰えていない。大卒起業家は、ジャック・マーの第1世代、ロビン・リーの第2世代、戴威の第3世代を経て、第4世代になろうとしている。同じ大学の成功者が、後輩起業家に対して投資をすることも多く、大学生はいまだに起業しやすい環境にある。