遼寧省瀋陽市で、街の景観を改善するため、すべての商店に黒地に白字の看板を使うことが義務付けられた。しかし、市民からは「葬式のようだ」として改善の声があがり、さらに中国の看板文化をめぐる議論になっていると環球時報が報じた。
カオスな色彩は中華文化の顔
中国の街並みと言えば、カラフルな看板が道にまで迫り出しているというカオスな風景が思い浮かぶ。特に香港は、それが香港の顔ともなっていて、ごちゃごちゃというより香港独特の賑やかさを表していると感じる人が多い。もはや視覚芸術のひとつにもなっている。ところが、大陸では近年、このようなカラフルな看板を規制して、通りなどで統一した色合いにしようという動きが起きている。
蜜雪氷城の看板まで黒に
遼寧省瀋陽市では、2020年から大東路歴史文化地区改修プロジェクトを始めた。この中で、通りに面した商店の看板を「黒地に白字」で統一することになった。しかし、実際にやってみると、地元民だけでなく、ネット民からの評判は非常に悪いもので、SNS「微博」(ウェイボー)のトップトピックとなるほどの話題となった。
特に話題になったのが、ドリンクスタンド「蜜雪氷城」(ミーシュエ)だ。蜜雪氷城の店舗は、コーポレートカラーである赤を使い、しかも可能な限り反復させることにより、遠くからでも店舗を認識させる手法をとっている。
しかし、瀋陽市大東路の店舗は、当局の規制により、黒地に白字の看板にせざるを得なかった。これがネット民から「あんまりだ」という不評をかった。黒地に白字の看板というのは、デザイナーにとっては落ち着いた色彩であり、景観を美しくすると感じるようだが、多くの人にとって連想するのは葬式だ。この通りのすべての店舗が黒地に白字の看板で統一されたため、ネットでは「蜜雪氷城だと気づかない」「結婚関連の商店もこの看板なのか」という声があがり、さらにはこういうことを市政府が強制するのは権力の濫用ではないかという声や、中国の看板は華やかものであり伝統文化でもあるのにそれを消そうとしているなど、さまざまな批判が起きた。
強制ではないとコメントした地方政府
瀋陽市大東区政府は、このような声に対してウェイボーで公式コメントを出した。それによると、看板の統一デザインは区政府が押し付けたものではなく、店舗を1軒1軒訪問し、聞き取りを行い、互いの合意をとりながら進めたものだと説明している。しかし、「多くのネット民、市民が大東区に関心を持っていただいたことを感謝し、ご意見を虚心に拝聴します」として、現在の蜜雪氷城は赤い看板を使うようになっている。
黒地に白字は葬式?それとも水墨画?
このような黒地に白字看板に統一する試みは、瀋陽市が初めてではなく、過去、上海市や成都市でも行われてきた。そのたびに、ネット民や地域住民からは「葬式のようだ」という声があがっていた。なぜ、地方政府が景観を守るために、葬式を連想させる「黒地に白字」看板に統一しようとするのかはよくわからない。あるデザイナーによると、水墨画の色彩をイメージしているのではないかとも言う。
しかし、ネット民や地域住民の反発の声を受けて、すぐに改善に動いた瀋陽市大東区政府は評価をされている。以前の中国であれば、民の声など無視をして計画を進めるのが行政の普通の姿だったからだ。これにより、瀋陽市大東区政府には、不満の声だけでなく、市民からの前向きな提案の声も寄せられるようになっている。