中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

海外にも広がり始めた新世代中国茶ドリンク。アジアだけでなく、欧米やアフリカにも

中国茶が西洋に広まったのは、1559年にベネチアの商品のジョバンニ・ラムージオが「航海と旅行」の中で、ペルシャ人の伝聞として「チャイ」を紹介したのが始まりだとされる。その本家である中国では、中国茶にミルクやフルーツを入れた新世代の中国茶ドリンクが流行をしている。この新世代中国茶ドリンクも欧米や東南アジア、アフリカにも広がろうとしていると毎日経済新聞が報じた。

 

新世代中国茶ドリンクは東南アジアで40億ドル市場に

タピオカミルクティーは海外でもBubble Teaとして知られ始めている。「Bubble Tea:The Business behind Southeast Asia’s Favorite drink」(Momentum Works、qlub)によると、東南アジアでもタピオカミルクティーなどの中国茶ドリンクが人気となり、すでに40億ドル市場になっているという。

中国では第一世代の中国茶ドリンクカフェ「快楽檸檬」「貢茶」に加えて、「蜜雪氷城」「覇王茶姫」などが参入し、競争が激しくなり、多くのブランドが海外進出を始めた。さらに、それを見て、現地でも開業が進み、世界中で中国茶ドリンクの店が出店されるようになっている。

▲貢茶のカリフォルニアの店舗。ライバルが少ないために売上を立てやすく、投資回収期間が短くなるため、次々とフランチャイズ方式で開店されている。

 

東南アジアに進出をする中国茶ドリンク

覇王茶姫の海外事業部の彭祥貴総経理は、毎日経済新聞の取材に応えた。「マクドナルドやケンタッキー、スターバックスがグローバルで成功した背景には、20世紀に米国の国力があがり、米国文化が広がったことが重要な鍵になっています。21世紀に入って中国の国力はあがり、中国文化が海外に広がっています。海外の人の中国文化に対する好奇心や興味は高まっていると感じています」。

中国茶ドリンクの世界進出は10年以上前から始まっている。快楽檸檬(ハッピーレモン)は2010年にフィリピン、2013年には韓国、2015年には英国ロンドンと米国ボストンに開店をし、現在では20カ国200都市に展開をしている。台湾高雄市を拠点をする貢茶も2010年に韓国に進出をし、アジア圏を中心に1600店舗を展開している。

蜜雪氷城も2018年にベトナムハノイに出店。同じ年に名雪の茶と喜茶(HEY TEA)がシンガポールに出店。覇王茶姫も2019年にマレーシアに出店をした。

▲覇王茶姫のマレーシアの店舗。ライバルが少ないため、物珍しさもあって、多くの来店客が押し寄せている。

▲覇王茶姫のマレーシアの店舗。売上は中国の国内店舗の2倍にもなる。

 

移住した中国人による現地創業も

この他、中国人による現地創業も続いている。北京のテック企業でエンジニアをしていた徐夢さん(仮名)は、2年前にメキシコ籍の夫に従ってメキシコのイラプアトに移住をした。そこで現地でタピオカミルクティーの店を開いた。イラプアトでは初めてのタピオカミルクティーの店となった。

メキシコ人にもタピオカミルクティーは好評で、1日に100杯から200杯は売れるという。投資をするので2店目を開かないかと誘ってくれる友人もいるほどだ。

インスタグラムに投稿をしたことで、現地のインフルエンサーが訪れてくれるようになり、その影響で遠方からもお客がやってくるようになった。

アフリカでも同様のことが起きている。飲食関係で働いていた徐祥さん(仮名)は、蜜雪氷城を参考に、トーゴ中国茶ドリンクの店を友人と出し、現在2店舗を展開し、3店目の準備に入っているところだ。

また、海外で創業して中国に逆上陸してくる中国茶ドリンクもある。頑徒(ADDICTEA)はオーストラリアのゴールドコーストに1店目を開いたが、創業者は福建省出身の林傑義だ。その後、オーストラリアと韓国で合計6店舗を開いて、2022年6月には湖北省武漢市の江漢路に出店をした。

▲移住した中国人がメキシコで開店したMICHA。イラプアトでは初めての中国茶ドリンク店であり、1日に100杯から200杯売れる。

▲アフリカ、トーゴに開店された中国茶ドリンクの店舗。

▲アフリカでも中国茶ドリンクが受けている。

 

海外はブルーオーシャンであるため成功確率が高い

中国国内ではすでに過当競争になっていて利益を出すのは簡単なことではなくなっているが、海外の場合はライバルが少ないため、黒字化のハードルは低い。

貢茶のカリフォルニア州でのフランチャイズ加盟費は3万ドルから5万ドル程度で、営業収入の7%程度が管理費として徴収される。月商は5万ドルから6万ドル程度、立地条件が悪くても2万ドルから3万ドル程度はあり、フランチャイズ費用はだいたい2年ほどで回収できるという。

蜜雪氷城のマレーシアでの加盟費用は15万リンギット(約460万円)程度。1日の売上は4500リンギット程度になる。アフリカでは8万元程度の投資で、1ヶ月の利益は1万元程度になるという。

覇王茶姫はマレーシアで40店舗を展開し、売上は中国国内の2倍ほどで、すべての店舗が黒字になっているという。

 

価格を高く設定できることが有利な条件に

好調の理由は価格だ。ニューヨークのスターバックスはコーヒーを4ドルで販売しているが、同じニューヨークの貢茶は5.5ドルから8ドルでドリンクを販売している。コーヒーよりも高く、それは米国だけでなく、多くの国で、中国茶ドリンクはコーヒーよりも高い飲み物だという認識がある。そのため、価格を高く設定することができ、黒字化が容易になっている。中国茶はちょっとぜいたくな飲み物という認識なのだ。

中国国内では競争が激しくなり、複数の中国茶ドリンクチェーンが実質的な値下げに踏み切っている。このため、今後もまだブルーオーシャンと言える海外への進出意欲は高まっていくことになる。新世代中国茶ドリンクは、大航海時代を迎えている。