中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

AIが人間の仕事を奪う。現実のものとなった広告業界。AI活用の広告大手が採用を一時停止

「生成AIが人間の仕事を奪う」が現実のものとなってきている。広告大手「藍色光標」は生成AIを活用し、新規採用を一時停止している。実際の広告にも生成AIはあたりまえのように使われるようになっていると鳥哥筆記が報じた。

 

広告大手がAI活用で人間の採用を停止

ChatGPTが登場して以来、「多くの仕事がAIに奪われる」という不安を誰もが感じるようになっている。中国の広告大手「藍色光標」(BlueFocus、https://www.bluefocusgroup.com/)の社内メールがネットに流出をし、その不安が現実のものになった。その内容は、生成AIの導入に備え、クリエイティブデザイン、コピーライティング、短期雇用、アウトソーシングを無期限に停止をするというものだった。ここまで極端な企業は多くはないとはいうものの、多くの広告制作会社でAIの活用が始まっている。その必然として、新たに雇用される人数は絞られることになる。

生成AIが人間の仕事を奪う現象が、現実に始まっている。

 

生成AIによる広告展開をするマクドナルド

実際、生成AIを広告に活用する例は急速に増えている。当初は、「生成AIを使った広告」という話題性を利用することが多かったが、その段階は終わり、次第にごく普通に生成AIを使うようになってきている。

マクドナルドは、オンラインで月に1回発行しているデジタル雑誌「沖浪」で、生成AIを使った広告展開を行なった。1000年前の遺跡からマクドナルドのハンバーガーなどが見つかったという体裁で、ハンバーガーやポテトが展示されている写真を掲載した。ハンバーガーなどはすべて中国の著名な古代遺物に模されたものとなり、生成AIを使って制作されている。

マクドナルドのオンライン雑誌「沖浪」では、生成AIを使い、青銅器製のハンバーガーなどが掲示された。

マクドナルドの商品が、1000年前の遺物として発掘されたというテーマで、さまざまな商品を中国で有名な遺物に模した。

 

アイスクリームの味や形状も生成AIで開発

鐘薛高(ジョンシュエガオ、https://www.zhongxuegao.com/)は、今までになかった形状のアイスクリームを発売し、人気となった食品企業だが、新製品の「Sa’Saa」では、すべてのプロセスで生成AIを活用した。

名称もAIが決め、包装もAIがデザインし、味もAIを活用して決め、ポスターはAIが生成し、動画もAIが生成した。「Sa’Saa」という名称も、棒アイスを噛んだ時の「サクサク」という擬音に由来し、4つのフレーバー(ミルク、ココア、紅豆、緑豆)もAIの提案によるものだという。

▲食品メーカー「鐘薛高」では、名称、味、形状、包装、広告などすべてのプロセスで生成AIが活用された。

 

生成AIらしくない生成AIによる広告

生鮮食料品を宅配するクイックコマース「美団優選」は、屋外広告に生成AIを活用した。「食品を買って自炊をするなら、美団優選で(時間とお金を)節約しよう」というコピーで、低価格で購入できる食材や温めるだけで食べられるレトルト食品を取り上げた。

この広告にはコミック風の絵がついているが、食材を元に生成AIがつくった。中国ではAIを活用した初めての屋外広告になる。言われなければ、生成AIを使っているとは思えないもので、もはや生成AIが広告クリエイターの基本的なツールになっていることがわかる。

▲美団はバス停などにコミック風の屋外広告を出した。これも生成AIが使われている。生成AIであるということは言われなければわからず、話題性ではなく、純粋に広告制作の効率を上げるために生成AIが利用されている。

 

人間は何をしたらいいのかがわからなくなっている

産業革命が始まった時、人類にはまだ余裕があった。体力のいる仕事を蒸気機関が肩代わりしてくれるので、人類はもはや過酷な肉体労働から解放され、人間は頭脳労働をすればいいと考えられた。情報革命が始まった時、人類にはまだ余裕があった。無機的な数字の羅列を入力するような仕事をコンピューターが肩代わりしてくれるので、人間はもはや退屈な単純頭脳労働から解放され、人間は創造的な労働をすればいいと考えられた。

AI革命が始まると、人類には余裕がなくなった。創造的な仕事までAIが肩代わりしてくれるため、人間はもはや何をしたらいいのかがわからなくなっている。そのAI革命が多くの人の想像よりも早く進み始めている。