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進む生成AIのビジネス応用。対話型AIが嘘をつく問題にもさまざまな解決策が

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今回は、生成AIのビジネス応用についてご紹介します。

 

生成AIや対話型AIが進化をすると、多くの人の職業が奪われるという話があります。野村総合研究所NRI)では、「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に」(https://www.nri.com/-/media/Corporate/jp/Files/PDF/news/newsrelease/cc/2015/151202_1.pdf#_ga=2.129153100.1117891498.1700624893-451487894.1700624893)というレポートを2015年という早い時期に公開しています。これによると、電車、バス、タクシーの運転手、一般事務員、レジ係、工場勤務者、薬剤師などがAIやロボットで代替可能となっています。

特に生成AIや対話型AIは、その高い能力から、自分の職種はなくなってしまうのではないかと不安になっている方もいるのではないでしょうか。

もちろん、「今日からAIとロボットを導入するので、君たちみんなクビ!」ということにはなりません。しかし、AIを使いこなせるスキルを持っていない人は、仕事が得られづらくなるということは近々始まると思われます。

 

例えば今、デスクワークの仕事で、「Excelとかは使ったことがないのでわかりません」という人が応募をしてきたらどう評価されるでしょうか。Excelを使うといっても高度なことではなく、多くの企業ではタテヨコ集計表をつくる程度の使い方であるため、半日程度の自学で対応できるでしょう。しかし、学生である間にExcelを使ってこなかったのか、ましてや中途採用では前の会社でどうしていたんだと不安になります。Excleの基本スキルがないということよりも、業務に対する積極性という点で悪い評価にせざるを得ず、採用に至る確率は低くなるのではないでしょうか。ましてや、デザイナーやイラストレーターで、PhotoshopIllustratorなどのAdobeツールを使ったことがないという人がいたら、ほぼどこでも採用を見送られるのではないかと思います。

生成AIもまったく同じ扱いになります。特に、マイクロソフトのCopilot(WordやExcelに追加されるBingAI機能)はデスクワーカーの必須スキルになることは明らかで、何かを調べる時はググるのではなくBingAIに聞くのが標準になっていきますし、書類の内容を考える、データを整理する、プレゼン資料をつくるという作業は、Copilotに任せて、それを整えていくという働き方になります。

このようなAIを拒否して、手作業にこだわったとすると、業務のスピードと正確さと幅広さで圧倒的に劣ることになります。数年後には、業務にAIを使ったことがないという人は、何回面接を受けて採用されないという状態になるでしょう。

 

中国ではすでにそのような状況が始まっています。中国のデジタル広告制作大手「藍色光標」(BlueFocus、https://www.bluefocusgroup.com/)の社内メールがSNSに流出をし、大きな話題になりました。その内容とは、生成AIを本格導入するため、クリエイティブデザイン、コピーライティングの2つの職種について、短期雇用とアウトソーシング契約を無期限に停止するというものでした。

藍色光標では、四川省眉山市の観光プロモーションを行うにあたって、その観光大使に人間ではなく、バーチャルキャラクターを採用しました。プロモーションを行う場がネットであるため、バーチャルキャラクターの方が活用の幅が広いからです。藍色光標では、約2000人の従業員すべてに3年から5年で生成AIのスキルを取得させる「All in AI」(AIにすべてを賭ける)戦略を進めています。ここまで極端でなくても、クリエイティブな制作系の企業は同様に、スタッフの生成AIのスキルを高める計画を進めています。当然ながら、新規採用では生成AIのスキルが必須になっていきます。

 

広告の世界では、すでにごく日常的に生成AIが使われるようになっています。

マクドナルドは、月刊で「冲浪月刊」というデジタル小冊子を発行していますが、そのvol.003では、生成AIを使ったビジュアルを掲載して話題になりました(https://www.mcdonalds.com.cn/news/20230417-McD-Monthly-Review)。「マクドナルドのおなじみのメニューが、1000年前の文化遺物として出土した」という設定で、フライドポテトなどが中国で有名な文化遺物になっているというものです。青銅器、白メノウ、青花磁器などで、中国人であれば、故宮博物院などに収蔵されている国宝級の文化遺物がすぐに連想できます。

 

また、クイックコマース「美団優選」(メイトワン)はバス停の屋外広告で、生成AIを使った広告「節約少女漫画」を制作しました(https://www.niaogebiji.com/article-556331-1.html)。ビジュアルはコミック風で、少女が料理をつくっているという内容です。「美団でレトルト食品を買って、自宅でつくれば節約ができる」という内容で、10点の大型ポスターが異なるバス停に掲示されました。バスに乗っていると、バス停に停まるたびにこの広告が目に入ることになり、漫画の連続するコマのように広告を楽しめるという趣向です。

タッチは手書きコミック風で、生成AIを使うまでもないようなものです。しかし、同時に10点を描くというのはかなりの作業量になるため、生成AIを活用することでかなりのコスト削減と時間削減になっているはずです。同じ予算、期間で大規模な広告展開が可能になります。

生成AIの広告への活用はすでにあたりまえになっています。マクドナルドの例はいかにも生成AIでつくりましたということがわかりますが、美団優選の場合は言われなければ生成AIを使ったことがわかりません。「生成AIを使った」ということが話題になる時期はすでに終わり、効率的なツールとして使われ始めているのです。

生成AIの活用はこのような広告だけではありません。さまざまな分野に浸透をしていますし、さらには、生成AIの課題=「堂々と嘘をつく」を乗り越えるテクニックも開発されてきています。

今回は、生成AIがどのように活用をされているかをご紹介します。また、生成AIが嘘をつくという課題を乗り越えるための、ユニークな2つの研究をご紹介します。

 

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