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スターバックスはドライブスルーも一味違う。高徳地図と提携し、モバイルオーダーとドライブスルーを融合

スターバックス中国がモバイルオーダーとドライブスルーを組み合わせたサービスをスタートさせた。カーナビアプリから注文を入れると、到着時間に合わせてコーヒーを淹れてもらうことができ、到着後すぐに受け取れるというものだ。スターバックスがサードプレイス戦略を変化させてきていると中国網財経が報じた。

 

スターバックスがスマートドライブスルーをスタート

中国のスターバックスがドライブスルーに対応をした。しかし、一般的なドライブスルーとは仕組みが異なっている。

一般的なドライブスルーは専用の注文窓口があって、そこで注文をし、できるのを待って、受け取り、車で自宅や公園などにいき、コーヒーを飲むというものだ。しかし、中国スターバックスが始めたのは、ナビアプリ「高徳地図」と提携をして、モバイルオーダーできるドライブスルーだ。注文をしておき、店舗に行くと、コーヒーができあがっていて、すぐに渡してもらえる。アツアツのコーヒーが受け取れるのだ。

北京で100店舗、上海で50店舗がすでにこのモバイルドライブスルーに対応をし、1年以内に1000店舗対応に拡大をするという。

▲車に乗ったまま店舗スタッフがコーヒーを届けてくれる。高徳地図の情報からジャストタイミングで届けてくれる。

 

カーナビアプリからモバイルオーダーが可能

高徳地図は、アリババ傘下の地図アプリで、自動車のナビゲーションアプリとしても人気があるだけでなく、車載版も販売されている。高徳地図では、ルート検索をした後、沿線の飲食店やコンビニ、カフェ、トイレ施設、洗車、ガソリンスタンド、充電スポットなどを検索する機能があり、簡単に経由地として追加をすることができる。

ここで「沿街取」(街中ピックアップ)を指定すると、ルート沿いにあるスターバックス店舗が検索される。ここから注文をして、アリペイ決済をするモバイルオーダーが可能になる。

▲高徳地図でルート検索を行い、ルート途上にあるスターバックスをタップすると、モバイルオーダーができる。到着時間を考慮して、コーヒーをつくってもらえる。

 

3回のプッシュ通知でジャストタイミングでコーヒーを淹れる

スターバックス側には3回の通知が送られる。1回目は注文が入った時。2回目は時間を逆算してコーヒーの調理などを開始すべき時。3回目は注文者が到着をする直前だ。つまり、1回目の通知で注文が入ったことを確認し、混雑状況などに応じて2回目の通知タイミングを調整しておき、2回目の通知が入ったら調理を開始。3回目の通知で店舗の外に出ると、ちょうどいいタイミングで注文者の車が到着する。

スターバックス側では、お客様を待たせる心配がない。店舗前の道路まで届けると言っても、客席に届けるのと大きな差はない。注文者側では、何より待たされることがない。車から降りて取りに行く手間もない。しかも、つくりたてであるため、香りの高いコーヒーを楽しむことができる。

店舗側の施設も、店舗前に駐車スペースさえ確保できればいいので、大規模な設備投資は不要で、スタッフのオペレーションも通常のモバイルオーダーとほぼ変わらない。

▲車を見分けるために、ナンバーの下3桁と車の色を設定する。一度設定しておけば、次からは自動で設定される。

 

スターバックスのある場所はサードプレイスになる

スターバックス中国デジタルイノベーション部門の張凌雲副総裁は中国網の取材に応えた。「イノベーションを続けるブランドとして、私たちは都市のお客様にもっと気軽にコーヒーを楽しんでもらうことに注力しています。大都市では交通渋滞、駐車場不足などの問題があり、通勤時はお客様の一分一秒が貴重になります。そこでスターバックスは、私たちの方からもう一歩、お客様の方に歩み寄ることにしたのです」。

このプロジェクトは2年前から進められていた。スターバックスは、サードプレイス戦略を柱にしていて、コーヒーだけが商品ではなく、上質な空間でコーヒーを楽しむ体験を商品として提供をしている。スターバックスの店舗はどこも快適な空間になるようにさまざまな工夫がされている。

そのため、2018年にアリババ傘下の「ウーラマ」と提携をして、デリバリーサービスを始める時は大きな自己矛盾につきあたることになった。自宅でもどこでにでもコーヒーを配達するということは、サードプレイス戦略の自己否定になるからだ。

しかし、この経験から、サードプレイスは決してスターバックスの店舗だけではない、スターバックスのコーヒーがあれば、そこはその顧客にとってのサードプレイスになると考え方が切り替わった。

 

2年間のテストを経て、サービススタート

張凌雲副総裁が都市の顧客のライフスタイルを観察して、課題を感じたのが、車の中だった。中国の大都市では渋滞になることが常識で、その中で顧客はイライラしながら車を運転している。コーヒーが飲みたくても、コンビニやカフェに寄るとなると、駐車場を探して車を止め、買いにいかなければならない。通勤時にはそんなことをしている時間的余裕はない。

この問題を解決するのが、今回のモバイルドライブスルーだった。高徳地図は、到着時間の予測が非常に正確であることから、高徳地図と提携することを考え、2年の間、北京や上海のさまざまな時間帯でテストを繰り返して、誤差なく、淹れたてのコーヒーを提供できるという感触を得て、今回のサービススタートとなった。

スターバックスは、車の中もサードプレイスに変えようとしている。