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検索エンジンを使わなくなった若者たち。必要な情報はSNSで探す

若い世代を中心に検索エンジン離れが起きている。検索結果が、広告や案件、粗雑な情報で埋めつくされるようになってきたからだ。その代わりに使われるようになっているのがSNS「小紅書」だ。SNSでは個人の体験が共有されているからだと略大参考が報じた。

 

若者が検索エンジンを使わない5つの理由

00后(2000年代以降生まれ、20歳前後)の若者たちは、もはや検索エンジン百度」(バイドゥ)を使わなくなり、その代わりにインスタグラムとよく似たSNS「小紅書」(シャオホンシュー)を検索に使うようになっている。この現象は、若者だけでなく、上の世代にも広がっている。

ひとつの理由は広告の多さだ。百度の検索結果ページでは、検索ワードにもよるが、場合によってはトップページが丸々広告で埋め尽くされることもある。非常に使いづらい。

一方、小紅書では、広告を検索結果10項目のうち1つまでに制限をしており、広告が少ない。企業は広告出稿をするよりも、独自に小紅書の公式アカウントを開設し、商品情報などを発信するようになっている。このようなコンテンツは、それが広告的内容であっても検索をして知りたい内容を含んでいることが多いため、ユーザーは広告的コンテンツによる不快感を感じることは少ない。

▲北京のグルメを検索した結果。多くの人が自分の経験からおすすめの店を紹介してくれている。左下は広告コンテンツだが、露骨な広告は誰も見ないため、有用な情報になるように工夫をされている。

 

個人の体験が共有されている小紅書

2つ目の理由は、ウェブの情報が公的情報が中心となり、わかりづらくなっていることだ。例えば「海外留学攻略」で検索をしても、検索エンジンから得られるのは、公的機関の情報が中心になる。文章も難しければ、建前的なことしか書かれていない。

一方、小紅書では体験者がコンテンツを書いているので、例えば「留学の申請は最初がいちばん成功確率が高く、そこで失敗すると何度申請してもなかなか認められない。なので最初の申請に万全をつくすこと」などという公式情報にはない有用な情報が得られる。

3つ目の理由は、それぞれのコンテンツにコメント欄があるため、情報の確からしさが判別できることだ。誤った情報を投稿してしまうユーザーもいるが、そのようなコンテンツにはコメント欄で指摘がされる。コメント欄から情報の確度がある程度推測できる。一方、百度検索で見つかるウェブ情報は、必ずしもコメント欄を用意しているとは限らないため、情報の確からしさは自分で判断するしかない。

▲留学する時の注意事項を小紅書で検索した結果。さまざまな人が自分で体験したことに基づいて、わかりやすくポイントを教えてくれている。

 

広告案件に汚染されるウェブ情報

4つ目の理由は、現在のウェブは、いわゆる広告案件ブログが氾濫をしていることだ。企業が自社の商品を宣伝するために、ブログを書いて、最終的には自社商品に誘導をする。このようなブログは、他の同類のブログを寄せ集めて書かれていることが多く、内容が薄い。しかも、SEO対策をしているために検索上位に表示される。自社に不利になる情報は記述されないため、情報に偏りがある。つまり、検索をしても、検索結果から広告を飛ばし、そしてこのようなブログに偽装した広告を飛ばしてから、有用な情報を探さなければならない。

小紅書の場合も、このような案件コンテンツもあるが、コメント欄で指摘をされたり、有用性が低ければ閲覧数が伸びないため、検索結果の上位には上がってきづらい。

5つ目の理由は、検索結果は基本テキストばかりのそっけないものだが、小紅書の検索結果は図や写真、ムービーなどがあり、見やすく、わかりやすい。

このような理由で、若い世代を中心に検索エンジンからSNSを情報源とする習慣が広がっている。

 

小紅書で旅行を楽しむ

00后の雅雅さん(仮名)は、両親と7歳の弟の家族4人で、海南島のドライブ旅行を楽しんだ。父親が運転をし、雅雅さんが助手席に座り、小紅書の検索担当になった。雅雅さんたちは、ダイビングスポットである分界洲島に向かっていたが、雅雅さんはわずか20分前に投稿されたコンテンツを発見した。それは分界洲島に向かう道路がひどい渋滞で、車がぴたりと動かなくなっているというものだった。

そこで、雅雅さんは近隣の観光スポットを検索、家漁村というスポットが紹介されているのを見つけた。あまり知られていない景色のいい場所で、自撮り写真を撮るのに最適だと紹介されていた。雅雅さんたちは、急遽行き先を変更して、家漁村で静かな時間をすごすことができた。そして、雅雅さんは自分でも写真を撮り、推薦する内容の投稿を行った。

▲雅雅さんが疍家漁村で撮影し、小紅書に投稿した写真。小紅書の情報で急遽行き先を変更して、渋滞を避け、静かな時間をすごすことができた。

 

誤った情報はみんなで訂正していく

もちろん、小紅書のコンテンツに騙されることもある。海棠湾は、サーフィンをするのにも、磯遊びをするのにも絶好の場所だと紹介されていて、それに従って行ってみると、たくさんの屋台が立ち並ぶ、うるさいだけの観光地だったということもあった。小紅書では、このような欠点部分を巧妙に避けた美しい写真が使われていたため、それに騙されてしまった。

そこで、雅雅さんは、屋台を入れたリアルな海棠湾の写真を撮り、小紅書に投稿をした。これで、自分のように騙される人が少しでも減ると思うと、とてもいいことをした気分になることができた。

▲ある飲食店を推薦するコンテンツ。スクロールをするとさまざまなコメントがつけられているため、情報の信用度がなんとなくわかるようになっている。

 

検索エンジンは仕事に時にしか使わない

00后が、百度検索をまったく使わないわけではない。しかし、検索エンジンを使うのは図書館に行って昔の本を紐解くような感覚だ。一方、小紅書を検索するのは知り合いに聞いてみる感覚で、聞く行為そのものが楽しい。中には情報に騙されて失敗をし、がっかりすることもあるが、それはそれで楽しい。

小紅書は、利用者たちが体験を共有する場所になっている。初めての海外旅行で持っていった方がいいもの、引っ越しをする時に失敗しない業者選びのポイント、夜眠れない時に試してみるべきこと。そういう日常の体験が共有をされ、検索をすることで他人の体験を知り、自分の生活に活かすことができる。もはや、百度検索は、仕事の時ぐらいにしか使わなくなっている。そういう人が増えている。