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なぜ小紅書は特別なSNSであり続けるのか。小紅書で人気のあるノートの6つのパターン

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今回は、小紅書のコンテンツについてご紹介します。

 

このメルマガでも、小紅書(シャオホンシュー、RED)の名前は何度もご紹介しています。そして、次世代ECの鍵となる「種草」(ジョンツァオ)=「コンテンツに商品タグをつけて、ワンタップで購入できる仕組み」を発明したSNSであることもご紹介してきました。

小紅書を紹介する時に、世間では「中国版インスタグラム」という言い方がされますし、私もそのように紹介をすることがあります。見た目がインスタグラムに似ているために、イメージしやすいからです。しかし、コンテンツの内容はかなり違っています。

インスタグラムは正当的なSNSで、個人やKOL(Key Opinion Leader=インフルエンサー)が日常周りのことを投稿します。ツイッターのビジュアル版のような感覚です。しかし、最近では、バズることをねらった投稿やお金に結びつける=収益化をねらった投稿が多くなっているような印象を受けます。そのあたりも含めて、正当的なSNSだと思います。

一方、小紅書のコンテンツはだいぶ毛色が違います。一言で言えば、個人の体験を共有するコンテンツが非常に多いのです。

例えば、「日本旅行攻略」で検索をしてトップに出てきたコンテンツは、「日本から帰ってきたばかり!5ページにわたる血と汗の教訓」というものです。この中にはなるほどと思える記述がたくさんあります。

例えば、

・日本語ができなくてもだいじょうぶ。翻訳アプリはあっても使う機会がない。それよりは英単語を並べて手真似でだいたい通じる。日本の人はとても親切なので、こちらの意図を汲み取ってくれる。

・日本は、バックパッキング旅行には向いていない。ドミトリーやAirbnbの施設はあっても数が少ない。

・それよりは、ある程度のグレードのホテルに泊まった方がいい。美団アプリでは日本のホテルを大幅割引で販売していることが多く、それを利用するとAirbnb並みの料金で、日本の中級から高級のホテルに泊まることができる。

・Japan Railway Passは長距離移動にはいいけど、地域を周遊するのには使えない。日本は国家の鉄道であるJRとは別に、地域鉄道が発達をしており、地域鉄道はRailway Passでは乗れない。

・移動をするにはスイカを購入するのが必須。スイカであれば、JRも地域鉄道もバスも乗れる。

・ただし、スイカで乗ると正規料金を取られる。特定の地域を周遊するなら、1日または数日の周遊パスが販売されていることがあるので、そちらを購入するのがおすすめ。

・日本のタクシーはものすごく料金が高いのでおすすめしない。一方、地域鉄道やバスは非常に発達し、本数も多いので、公共交通でほぼどこでも移動できる。

・日本ではグーグルマップを使うのがいちばん便利。ルート案内をすれば、鉄道とバスの乗り換え経路や鉄道駅の出入り口まで案内してくれる。

・アリペイとWeChatペイはかなりの店舗で使えるが、観光関連の店やコンビニが中心。飲食店では現金のみのところも多いので、常に3万円から4万円は現金を用意しておいた方がいい。

・日本は飲料の自動販売機がどこにでもあるために、喉の渇きを癒すには便利。ただし、硬貨にしか対応してない自動販売機がほとんどなので、硬貨を入れる小さな袋を用意しておくといい。

・日本ではホテル、飲食店とも禁煙が行き届いている。しかし、お酒を中心にした飲食店では席で喫煙ができるところがまだ多い。煙草の臭いが苦手な人は、行く前に確認しておいた方がいい。

などという話が24項目にわたって書かれていて、最後に絶対行って自撮り写真を撮るべき観光地が紹介されています。確かに実際に日本に行った人でないとなかなかわからないアドバイスが書かれています。

 

このような個人体験の共有が、小紅書の特徴となっているため、若い人は何かを調べる時に、百度などの検索エンジンではなく、小紅書を使うようになっています。小紅書運営でも、小紅書はSNSであるとともに、生活検索エンジンだという言い方をしています。

例えば、留学を考えている人が、検索エンジン百度で「海外留学攻略」で検索すると、「留学申請所一覧」「米国研究生留学の手続きの流れ」「留学費用の一覧」などという公的機関の情報が出てきて、その他はほとんどが海外留学ビジネスを行う企業の広告、あるいはブログに見せかけた広告ばかりになります。

一方、小紅書で検索をすると、留学に成功した人、失敗した人が自分の体験談をわかりやすくまとめて紹介してくれています。例えば、「留学ビザの申請は一度拒絶をされると、次回以降も拒絶される確率が高くなる。最初の1回に集中をして必ず審査に通るようにする。書類の不備で拒絶されるなどというのはもってのほか」というアドバイスもあり、これがどこまでほんとうのことなのかはわかりませんが、公的情報からは得られないアドバイスです。

あるいは「うちの犬が元気がなく食事も取らない。どうしたらいい?」「初めての人と上海でデート。何を着て、どこに行けばいい?」などような身近な疑問を検索すると、なぜかだいたい答えが用意されているのです。まるで人力によるChatGPTのような感じです。

さらにコメント欄もあるので、答えてくれるかどうかはわかりませんが、直接投稿者に尋ねることもできます。

 

なぜ、このようなコンテンツが多いのでしょうか。小紅書運営はキーワードとして「利他」という言葉をよく使います。利他的なコンテンツ=どこかの誰かの役に立つコンテンツこそが小紅書の本流なのだということをずっと言い続けています。

例えば、一般的なSNSだと、話題の商品を買ったというコンテンツの多くが、実はその商品がコンテンツの中心ではなく、「話題の商品を購入した私」がコンテンツの中心になっています。いわゆる承認欲求がベースになっています。小紅書にもそのようなコンテンツはないわけではありませんが、ほとんど閲覧されることなく、検索結果の下位に沈んでしまいます。

小紅書の基本的なコンテンツの形は「図文」(ノート)と呼ばれるものです。複数枚の写真+解説テキスト+コメントという構成が基本になっています。複数枚の写真がノートのページのような使い勝手であることからノートと呼ばれています。その下に、テキストを置くことができ、さらに投稿主と閲覧者が交流できるコメント欄がついています。

▲小紅書のノートの構造。写真は何枚でも投稿することができ、スワイプでめくりながら見ることができる。その下に長いテキスト(文章)を書くことができる。さらにその下に交流ができるコメント欄がつく。

 

小紅書では、「私」を見て欲しいだけのコンテンツには、読者のコメントがつきません。一方、利他的なコンテンツには「役に立ちました、ありがとう」「追加情報があります」などのコメントが積極的につきます。小紅書運営は、単なる閲覧数だけでなく、このようなコメント数も見て、検索順位を決めています。そのため、自然に利他的なコンテンツが多くなるというわけです。

 

では、次のような疑問が出てきます。

・なぜ、小紅書はこのような利他的なコンテンツが集まる場所になれたのか?

・利他的なコンテンツでどうやってEC販売に結びつけているのか?

ということです。

また、企業やブランドは小紅書に注目をし、公式アカウントをつくり活用しています。中国の消費者向けブランドは、さまざまなプラットフォームを使って、消費者とのタッチポイントを構築するというのはあたりまえのことになっていますが、すべてのプラットフォームを利用するわけではありません。そのブランドや商品によって、抖音とウェイボーだとか、WeChatと快手だとか選択をしてきます。しかし、消費者向けブランド、特に女性を中心にしたブランドで、小紅書を外すということはまずありません。ブランドにとって、小紅書は外すことができないSNSになっているのです。これはなぜでしょうか。なぜ、小紅書が重要なのでしょうか。

今回は、このような疑問に対する答えをご紹介しながら、小紅書で人気のある6つのノートのパターンをご紹介します。小紅書は一般的なSNSとは雰囲気が異なるため、そのまま応用することは難しいかもしれませんが、他のSNSで発信をする時のヒントになるはずです。

今回は、小紅書で人気のある6つの黄金パターンについてご紹介します。

 

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先月、発行したのは、以下のメルマガです。

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vol.180:5種類のECの「人貨場」。消費者、商品、場を一致させることで商品は売れる

vol.181:アップルと小米はどこに差があるのか。ハイエンド市場に進出するのに足らない点とは何か

vol.182:中国のデジタル科学研究は米国にどこまで迫っているのか。論文、人材、特許の量と質から考える