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今回は、「人貨場」の考え方についてご紹介します。
ECというと、多くの人がアマゾンや楽天市場を思い浮かべると思います。あるいは、ヨドバシ.comやZOZOTOWNを思い浮かべる方もいらっしゃるかと思います。その他、ユニクロやデルといったメーカー直販(D2C)もあります。しかし、このような日本のECには共通した特徴があります。それは中国では「貨架EC」(商品棚EC)と呼ばれる方式であるということです。ウェブページやアプリを開くと、そこに商品が並んでいて、目的の商品を検索して見つけて購入するというものです。
「あたりまえじゃないか、この人は何を言っているのだ?」と思う方もいるかと思います。中国でなぜ、この、あたりまえのECのスタイルにわざわざ名前がついているのかというと、商品棚ECではないECが存在するからです。
ひとつは、SNSをうまく活用してまとめ買いをさせる「社交EC」(ソーシャルEC)です。ピンドードーが最も有名です。さらに、インスタグラムのようなコンテンツに商品タグがついていて、そこから購入ができる「内容EC」(コンテンツEC)もあります。SNS「小紅書」(シャオホンシュー)が代表格です。
さらに、ショートムービーで欲求を刺激し商品タグから購入するという「興味EC」もあります。ショートムービー「抖音」(ドウイン、中国版TikTok)が代表格です。さらに、すっかり有名になりましたがライブ配信でテレビショッピングのように商品を紹介し、購入をするという「ライブEC」(ライブコマース)もあります。
つまり、中国には、大別して5種類のECが存在するということです。このような国は、他にはあまりありません。
中国のECでは、基本中の基本として「人貨場」の定義がうるさく言われます。どんな人に、どんな商品を、どこで売るのかをきちんと定義しろというわけです。例えば、コンビニで「単身者に、夕食を、店舗で」販売すると定義をすれば、自ずとどんな商品を開発すべきかが見えてきます。あるいは「独居高齢者に、食事のおかずを、店舗で」と定義をすれば、やはりどんな商品を開発すべきかが見えてきます。
そして、ここが最も重要ですが、適切に「人」「貨」「場」を一致させることで、商品は売れるということです。お腹が空いてパンを食べたい人を、パンという商品のある場にうまく誘導することで、パンという商品が売れるという考え方です。つまり、小売業のマーケティングとは、この人貨場を一致させる技術だと考えられています。
多くの店舗小売は、この人貨場の一致の難易度が高くなっています。なぜなら、店舗という「場」が動かせず固定されてしまっているため、人を動かすしか人貨場を一致させる方法がありません。そのために、店舗小売では「集客」ということが非常に重要になってきて、マーケティング=集客技術と考えられるようになっています。
一方で、ECは、仮想的に商品を動かして、場を移動させることができます。例えば、自宅でお腹が空いている人に、飲食店が「うちに食べにきませんか?」と伝えても、きてくれるかどうかは微妙です。店舗という場にまで移動をしなければならないため、自宅にあるものを食べようかと考える人もいるでしょう。しかし、フードデリバリーであれば、商品を動かして人のいる自宅に届けることができます。この場合、場も自宅に移動させることができるわけです。
ECでは、人貨場のそれぞれを動かすことができるため、さまざまな手法が生まれてきます。まるで天文学の三体問題のように複雑な方程式を解いて、売れる小売の仕組みを考えることが可能になっています。
これにより、中国ではさまざまなタイプのECが登場してきています。
次の表は、中国の主要なECプラットフォームと、それによく似た構造の日本で利用できるプラットフォームを比較したものです。
▲中国と日本のEC系アプリの比較。中国では、インスタグラム、LINE、TikTokに相当するサービスでもEC機能が実装されているが、日本ではまだ行われていない。
インスタグラム、LINE、TikTokは、中国人の目から見たら、「めちゃくちゃ商品が売れそうな場」に見えているのですが、なぜか日本ではEC機能が実装されません。インスタグラムやLINEにもショッピング機能はありますが、インスタグラムの場合、コンテンツの商品から外部のECサイトに遷移できるという数ステップかかるものになっていて、LINEの場合は普通の商品棚ECがLINE内に併設されているだけのことになっています。中国のように、コンテンツから商品購入までがダイレクトにできるものにはなっていません。
というわけで、中国のこの5タイプのECがどのような理由で生まれてきたのかを今回はご紹介をしたいと思います。すでに中国のEC事情に詳しい方にとっては、復習回になってしまうかもしれませんが、ご自身の頭の中を整理するつもりでお読みください。
ECのビジネスモデルをただ紹介するのではなく、人貨場をどのように操作をしているのかという視点でご紹介をしていきたいと思っています。
今回は、人貨場の視点から見たECの進化をご紹介します。
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