TikTok ECが英国、米国、インドネシアで本格化をしている。特にインドネシアは好調で、中国の製造業者はインドネシアを起点に東南アジアに中国製品を売れるのではないかと期待を膨らませている。しかし、東南アジアアジアは英語が基本であり、なおかつライブコマースが中国以外で浸透しないという問題がある。この2つの課題を乗り越えられるかどうかが鍵になると派代網が報じた。
急成長する抖音EC、TikTok ECも本格化
中国のショートムービープラットフォーム「抖音」(ドウイン)のECが躍進をしている。ショートムービーの中に商品紹介のムービーが流れてきて、画面をタップすると購入ページがポップアップされるというものだ。2021年の抖音の流通総額は8500億元(約16.5兆円)となり、小売チャンネルとしても無視ができない存在感を示すようになっている。
抖音の国際版であるTikTokもすでに英国とインドネシアでTikTok ECを展開し、流通総額は60億元(約1170億円)と見られている。7割はインドネシアによるものだ。
海外ビジネスを強化するバイトダンス
中国で抖音のECが成功をしていること、TikTokが2021年9月にグローバル月間アクティブユーザー数(MAU)が10億人を突破し、世界でMAUが10億人を超える「10億人クラブ」7サービスのひとつになったことから、TikTok ECが本格始動すると、各国のECの勢力図を大きく変えることになるのではないかと見られている。
2020年から、TikTokは海外市場の広告(TikTok for Business)とEC(TikTok Shopping)の強化を進めており、2020年初めにはスタッフが4000名足らずだったが、現在は2万人まで増えている。広告はすでにクリック数ではグーグルを超え、40億ドル(約4900億円)の収入を得るようにり、2022年は120億ドルを目標にしている。
英国、インドネシア、米国でEC機能を強化
ECに関しては、TikTok Shopping機能を2021年から英国とインドネシアでスタートさせ、物流機能などを整えてきた。
また、米国ではTikTok Storefrontという機能をスタートさせている。これはShopifyなどで販売されている商品の紹介ムービーを販売業者が制作し、TikTokで配信をすると、画面タップで購入できるという仕組みで、TikTokは送客手数料を受け取るというものだ。
中国の抖音でも、淘宝網(タオバオ)や京東、拼多多などに出品している販売業者が、抖音に商品紹介のショートムービーを流し、そこから購入ができる。また、バイトダンスが独自に仕入れた商品も販売される。この2本立てのECの仕組みが、TikTokでもそのまま使われている。
英国、米国では苦戦中。インドネシアが順調
しかし、英国や米国では苦労もあるようだ。中国やアジアとは好まれる商品や消費習慣も異なるため、それを把握するのに時間がかかっているようだ。
一方、アジア圏は中国とも文化的な親和性もあり、特にインドネシアは国民の平均年齢が30歳という驚異的に若い国であることから、TikTok ECが順調に浸透をしている。インドネシア、シンガポールを中心にし、さらにタイ、ベトナム、マレーシアなどに広げていく計画だ。一部の報道では、2022年のTikTok ECの目標額を昨年の2倍の120億元に設定しているとも言われる。
中国の業者にとって、英語がひとつの壁になる
特に、中国の販売業者はTIkTok ECに注目をしている。アジア圏であれば中国製品は売りやすく、なおかつ2021年にはアマゾンがレビューなどの規約違反で多くの中国販売業者のアカウントを抹消した。行き場をなくした販売業者たちが、TikTok ECでアジア圏に商品を売ろうと参入を始めている。
ただし、問題になっているのは、TikTokは公用語が英語であるということだ。中国語のショートムービーに英語字幕をつけるよりも、英語でショートムービーをつくった方が訴求しやすい。また、ムービーの展開の仕方も、中国の抖音と英語のTikTokでは感覚的な違いもある。さらに、ライブコマースを行うにはどうしても英語ネイティブのMCが必要になる。
商品は中国のものを売るとしても、現地に英語を主体とするチームを置く必要がある。
ライブコマースは海外でも定着をするか
もうひとつの問題は、ライブコマースが中国ではすでにあたりまえの小売チャンネルになっているのに、海外ではそうではないということだ。2020年、中国のライブコマースGMVは1.2兆元(約23.3兆円)になっているが、米国では60億ドル(約0.74兆円)でしかない。調査機関Coresight Researchの予測では2023年には250億ドル(約3.01兆円)になるとされているが、それでも中国から比べると桁違いに小さい。
2019年にはアマゾンがライブコマース機能「Amazon Live」をスタートさせたが、多くのライブ配信の視聴者は1000人程度で、商品が動き出すところまでたどりつけていない。このライブコマースに対する熱の中国と米国での違いについて、誰も明確に説明することはできないが、ライブコマースは中国独特のものとなっており、TikTok ECがどの程度海外で受け入れられるかはまだまだ不明なところも大きい。
あるいは、海外消費者はまだライブコマースの魅力に気づいていないだけで、TikTokによりライブコマースの魅力を知り、一気に海外に広がるということもあり得る。
2022年は、TikTokにとっても、ECビジネスにとっても、試される1年になる。