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2022年のスマホの低調ぶりの原因は買換え期間の長期化。2023年後半には改善に向かうか?

2022年の世界のスマホ出荷台数が前年比18%減と大きく落ち込んだ。買換え期間が過去ないほど長期化していることが要因だ。しかし、各調査会社は2023年後半から買換え期間が短縮化に転じるとの予測を出していると中国電子報が報じた。

 

買い替え周期が過去最高でスマホ売上減

スマートフォンが売れていない。2022年Q4の世界のスマホ出荷台数は18%減の2.969億台となった。中国でも14%減の7440万台となった。中国市場では年間出荷台数も14%減少し2.87億台となり、2014年とほぼ同じレベルになってしまった。

スマホが売れなくなっている理由は、スマホを使う人が減っているわけではもちろんない。買い替えの周期が伸びているのだ。Strategy Analyticsによると、米国の平均買い換え周期は41ヶ月、中国の平均買い換え周期は28ヶ月となった。世界でも2022年には44ヶ月となり、これは最も短かった2013年の28ヶ月の1.5倍以上になる。かつてなかったほどの長い周期になる。

買い換え周期が1.5倍になったということは、利用者数が同じであれば、販売台数は0.66倍になる理屈だ。

▲Canalysによるスマートフォン出荷台数の統計。2022年は、2014年とほぼ同じ水準という低調ぶりだった。

 

スマホ買換えの5つの行動パターン

同報告によると、スマホを新機種に買い替える利用者には5つの行動パターンがあるという。

1:ブランドのファン(12%)。そのブランドの新機種が出ると購入する

2:低価格志向(16%)。なるべく長く使い、買い替える時は低価格のものを購入する

3:地位志向(23%)。話題になっている機種を購入する

4:テック志向(24%)。新しい機能が搭載されると購入する

5:コスパ志向(25%)。なるべく長く使い、買い替える時はコスパの優れているものを購入する。

▲中国のスマートフォン出荷台数は、2017年から下落基調が続いている。スマホそのものが成熟をしたため、中古を求める人も増えている。

 

周期を伸ばした原因の3つの仮説

なぜ、周期が伸びているのかについては、さまざまな仮説が提出されている。

1)進化がハードウェアからソフトウェアに

ハードウェアが成熟をし、進化はソフトウェアの領域で起こるようになっている。例えば、カメラの高解像度競争というのは一段落をし、現在はAIを使って補正をし、夜景がきれいに撮れる、肌がきれいに撮れる、後からフォーカスを変えられるなどの機能競争になっている。ソフトウェアの進化になると、最新機種だけではなく、旧機種にも恩恵があるため、買い換え需要が生まれてきづらくなっている。

2)キラーアプリの不足

新たなキラーアプリが登場すると、非対応の旧機種を使っている利用者たちの買い換えを促すことができる。新しいアプリは5年ほど前の機種以降の対応が多いため、人気のアプリを使いたいがために買い換えが起こる。しかし、アプリの世界もほぼ成熟をし、買い換えを促すほどのキラーアプリが登場していない。

3)コロナ禍の影響

コロナ禍により、外出の機会が少なく、自宅にいる時間が増えた。そのため、小さな画面で外に持っていけるスマホよりも、画面が大きなタブレットやPCに対する需要が強くなった。

 

買換え周期は、2023年後半から改善?

しかし、世界各国で新型コロナの感染拡大に対する不安が減少し、状況は変わりつつある。コロナ禍期間、PCの出荷台数は伸び続け、2021年Q1には四半期としては過去最高の9000万台に達したが、その後は急速に出荷台数が減少をしている。PCの買い換え需要の先食いと、それまでPCを使わなかった層が新規購入をした結果、その反動が2022年に現れている。

Strategy Analyticsでは、スマホは、2023年のも減少基調が続くが、その下落幅は5%程度にまで縮小されると予測している。特に2023年上半期は低調な状態が続くが、下半期から回復が始まるとしている。

Counterpointでは、やはり2023年下半期から回復基調となり、2023年は2%程度の増加に転じると予測している。

▲PCの出荷台数は、コロナ禍期間に急増し、2022年に急落をしている。コロナ禍に需要の先食いをしてしまった。

 

それでも伸びているハイエンド市場

一方で、600ドル以上のハイエンド市場は堅調だ。中国市場では、ハイエンド市場は全体の13.3%に達し、2022年は1.0%増加をした。

中国のハイエンド市場は、従来は、アップル、ファーウェイ、サムスンの3社が競い合っていたが、サムスンは中国市場から撤退をし、ファーウェイは米国の規制により製造に大きな制約がかかるようになり、アップルの独壇場になっている。

このようなことから、小米(シャオミ)を始めとする中国メーカーが、ハイエンド市場に参入しようとしているが、なかなかアップルに対抗できる製品を提供できない状況が続いている。

スマホの回復が見えてきた今、各社はハイエンドに行くのか、コスパの優れたミッドレンジに行くのか、あるいは低価格エントリーに行くのか、非常に戦略が難しくなっている。スマホは企画をしても、それが製品になるまで、どんなに早くても1年はかかる。つまり、スマホメーカー各社は今、2024年上半期の仕込みをしている最中だ。各社は非常に難しい選択を迫られている。