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シャオミがスマホ世界市場で第2位に躍進。勝因は1年前の大胆な決断

シャオミがアップルを抜いて、スマホ世界市場で第2位に躍進をした。その理由は新興国市場での成長にある。しかし、Canalysモバイル業務のニコラ・ポン副総裁は、シャオミが1年前に下した大胆な決断が勝因になっていると分析したと雷峰網が報じた。

 

シャオミが世界市場で第2位に躍進

市場調査会社Canalysによると、2021年Q2の世界の携帯電話の出荷台数シェアは、1位がサムスンだったが、2位に小米(シャオミ)がランクインした。世界のスマートフォンは、サムスン、小米、アップルの3強がリードをし、それをOPPOvivoが追いかけるという展開になり、この上位5社で、世界のスマートフォンの7割を占めている。

小米は誰の目から見てもダークホースであり、米中貿易摩擦の影響で、ランキング上位から脱落した華為(ファーウェイ)の空隙を誰が埋めるかが注目されていたが、それはサムスンでもなく、アップルでもなく、小米だった。

小米の雷軍(レイ・ジュン)CEOは、この調査結果の発表の翌日、社内メールで「夢のような業績だ。小米発展の最大のマイルストーンになる」と語った。

なぜ、小米は、躍進することができたのか。雷峰網では、Canalysのモバイル業務のニコラ・ポン副総裁に取材をした。

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▲Canalysの2020Q2のスマートフォン世界市場シェアで、シャオミが初めて第2位になった。

https://canalys.com/newsroom/worldwide-smartphone-market-q2-2021

 

新興国市場で躍進した小米

小米の成長のほとんどは新興国市場です。ラテンアメリカ、中東、アフリカなどで躍進した一方、先進国の成熟した市場での成長は限定的です。

昨年のコロナ禍による影響が、多くの海外市場では2021年Q2に出て、出荷量が落ち込んでいます。しかし、中国ではこの影響が2021Q1に出ました。中国市場ではQ2には以前と変わらない需要が生まれました。また、新興国市場では、コロナ禍以降、スマホに対するニーズが大きく上昇しています。小米は、中国市場、新興市場のニーズに素早く対応をし、スマホを供給しました。これがQ2に大きく伸びた要因になっています。

さらに、ラテンアメリカ、中東、アフリカ、東南アジア市場などでは、多くのスマホメーカーが半導体不足などの部品供給問題から出荷量を絞らざるをえなくなりましたが、小米はこれを成長の機会として活かすことができました。

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▲2019年からのスマホシェアの推移。アップルは新製品が発売となるQ4に1位になり、その他の期間はファーウェイの下になるという動きがパターン化していた。ファーウェイが圏外になった途端、シャオミが第2位の座を奪った。OPPOvivoは上位5社から外れることもあり、グラフが途切れている。

 

小米の成長は、低価格モデルが中心?

中国は、実際は、世界最大のハイエンド市場です。米国よりもハイエンド市場の規模は大きくなっています。そのため、中国市場から見ると、海外で販売されているほとんどのスマホはローエンドに映るでしょう。

中国市場は成熟をしていて、2021年上半期のASP(平均購入額)は400ドル以上になり、欧米と同じレベルになっています。

ただし、小米はハイエンドモデルを大衆市場に適合できる価格にして販売をしています。同じ手法をとっているのはサムスンだけです。なので、価格だけを見ると低価格モデルに見え、新興国市場で成功していますが、実態はハイエンドモデルと言っていいのではないでしょうか。

 

外市場での小米の現地化能力は

私個人の考えですが、小米にはまだ成長空間が多く残されています。サムスンと比べると、中国メーカーが海外進出をするのはだいぶ後になってからです。サムスンはすでに海外でサプライチェーン、物流などを地元企業と提携して確立しています。中国企業はこのような現地態勢を今整えている最中です。ですから、サムスンと同じように、これから海外市場での長期の発展が始まるでしょう。

 

小米がサムスンを超えるのに必要なことは

小米がサムスンを超えるのは簡単なことではありません。サムスン、小米、アップルのトップ3は、差別化がされていて、それぞれに強みを持っているからです。

サムスンは、強固なサプライチェーンを確立しており、小米はまだまだ追いつけていません。ピーク時のファーウェイもサムスンを超えることはなかなかできませんでした。サムスンはチップ、ディスプレイ、組み立てなどの機能を自社で持っているため、外的要因の影響を受けづらい体制になっています。

もちろん、サムスンにも苦手としている市場があります。そういう市場では小米が優勢になっています。特に小米は販売手法でのイノベーションを起こしていて、ラテンアメリカ、中東、アフリカなどでは、小米が始めたオンライン販売が主流になりつつあります。このような特定の市場では、小米がサムスンを凌駕することはあり得ると思いますが、ワールドワイドの市場で凌駕するのは、かなり難易度の高い目標になると思います。

 

小米のハイエンド志向は破滅の道なのか

部品供給などが制限されている現在の状況では、小米は現在の顧客を大切にし、足元を固めるべきでしょう。それからハイエンドの研究開発を行い、今とは異なる顧客層を獲得しに行くべきです。サムスンのラインナップは非常に豊富で、ローエンドからハイエンドまでの顧客をカバーしています。しかし、今の小米にサムスンと同じことをするのはまだ難しいのではないでしょうか。

アップルやサムスンと差別化をするというのは、OPPOvivoと差別化をするのとは次元が異なります。小米はすべての面で、能力をあげる必要があります。それができて、初めてハイエンド市場に入っていくことができます。

 

OPPOvivoをどう見るか

OPPOvivoは、小米と比べると中国市場への依存度が高くなっています。両社とも海外市場は50%程度ですが、小米の場合は70%が海外市場になります。ただし、注意しなければならないのはrealmeとOnePlusは独立したブランドとして統計が取られていて、OPPOの統計には算入されていないということです。OPPOはOnePlusでハイエンド市場に戦略的に進出をしていて、一定の足場を確保していています。

 

ファーウェイ、オナーをどう見るか

ファーウェイは、今でも4Gスマホのラインナップを維持し、さらにIoT関連の新製品を発売し、ハーモニーOSを発表していることから、スマホ市場から撤退をするということはありえないと感じています。特に、ハーモニーOSは短い時間でビジネス的な価値を確立すると見ています。ビジネス価値を確立すれば、他のメーカーとの提携も可能になってきます。

ファーウェイから分離独立したオナーも強みを持っています。ファーウェイから独立するときに、貴重な資源を持って外に出たわけで、新規に起業したメーカーでは短期に学び取ることができないものです。新しい企業が試行錯誤の中で学び取っていくことを、オナーはすでに理解し、身につけています。

 

半導体不足の影響は

半導体不足の影響は、今後1年間続くことになります。なぜなら、今発注をかけたスマホは出荷されるのは1年後だからです。

ですので、この一年の市場の変化をどう読むかが、スマホメーカーにとってきわめて重要になります。

小米が2021Q2で大きく成長したというのは、コロナ禍が厳しかった2020Q2に、エントリーモデルを伸ばし、海外の新興市場に進出するという大胆な決定をし、それがうまく現在の市場の要求とマッチしたということが大きいのです。このような大胆で大きな決断は、なかなか他のスマホメーカーにはできないことです。

スマホメーカーが1年後の市場を読んで、適切な決断を今できるかどうか。それが今後のスマホ市場を決めることになります。