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学生は趣味の商品をタオバオで販売する。タオバオネイティブ世代の起業感覚

アリババが運営するEC「淘宝網」(タオバオ)に出店をする「00后」(2000年代生まれ、20代)が100万人に達した。いわゆるZ世代の起業が、会社設立ではなく、タオバオ出店に向かっていると環球網が報じた。

 

物心ついた時にはタオバオがあった世代

00后は大学生の世代で、Z世代の中心世代。その世代で起業を目指す人たちが、会社をつくることよりもタオバオで商品を販売することに向かっている。多くが大学生であり、学業と起業を兼業で行なっている。あるいは、大学卒業後、知り合いのタオバオ販売業者の仕事を手伝ったり、親がタオバオで成功をしているのでそのまま手伝ったりなどという例もある。

00后がタオバオに興味を惹かれる理由は、「ものごころついた頃にはタオバオがあり、タオバオで買い物をするのが自然なことだった」ということだ。タオバオの開業は2003年、今年で20年目となる。タオバオ第2世代が育ってきた。

このタオバオ第2世代には共通した特徴がある。それは儲かるものを売るのではなく、自分が好きなものを売るのだ。趣味と実益を両立させようという意識が高い。

 

お年玉で商品を仕入れて、タオバオで売る

00后の張子軼さんは、大学3年生の時にタオバオに「華海体育」という店舗を開いた。張子軼さんはバスケットとバスケットシューズのマニアで、特にシューズに関しては素人とは思えないほど詳しくなった。そのため、張子軼さんの店舗を利用する顧客からも信頼され、そのようなお得意さんに向けて大幅割引の団体購入などを行うようになっている。一人で商品を仕入れ、一人で宣伝をし、一人で顧客に対応をしている“店主”だ。

「お店を開いた時は、今まで貯めてきたお年玉で商品を仕入れました。それで毎月6、7000元の利益が出るようになり、生活費もここから得られるようになりました」と言う。00后が創業する目的ははっきりしている。お金持ちになりたいとかIPOをして会社を大きくしたいということではない。自分の好きなものに携わって生きていきたいということだ。

▲自分の好きなバスケシューズの販売をする張子軼さん。利益を出すことよりも、好きなことに関わって暮らしていけることの方が重要。顧客もほとんどが同世代だ。

 

利益よりも好きなことをして生きていきたい

00后というと、世間からはまだ世間知らずの子どもに見えるかもしれない。しかし、00后は意外にしっかりとした考え方を持っている。記者が「利益率は20%を超えることができますか?」と尋ねると、「あり得ません」という答えが返ってきた。「仕入れ代金、人件費、家賃などがあり、20%の利益率などありえません。10%いければ上出来です。商売を大きくすることに興味はありません。自分の好きなことをしながら暮らしていけるかが重要なのです。それには10%の利益率で必要じゅうぶんです」。

顧客も8割が00后であるという。顧客が商品につけてくれるコメントは、販売側と消費者側という対立的なものではなく、マニアとそのファンというコミュニケーションになっている。張子軼さんは、顧客のコメントを読み、それに返信を書いているのが楽しいのだと言う。

▲張子軼さんが借りている倉庫。売れるものではなく、マニアが好むものを中心に仕入れ、販売をしている。

 

店主も00后、お客も00后

広東省広州市の華立学院の3年生の李暁琳さんは、学生寮の同室の2人の友人とタオバオライブでの販売を始めた。自分たちが好きなスマホ関連グッズ、化粧品、スナックなどを販売する「寝室三姉妹」だ。大学も経営学などを学んだ成果を実践する場として、タオバオでの販売に挑戦することを勧め、ノウハウなどの支援をしてくれる。

寝室三姉妹のライブコマースは評判となり、1回あたり2万人が視聴し、5万元前後(約97万円)の売上があがるようになっている。評判の理由は、寝室三姉妹が自分たちの好きなものを見つけてきて販売をすることで、同世代の00后の顧客に歓迎されている。小売ビジネスというよりは、教室の中で大学生たちが自分の好きなものを教え合っているような感覚だ。

▲評判になっている寝室三姉妹。仲良しの大学生3人で起業し、ライブコマースを行い、1回あたり5万元前後の売り上げがある。

 

ECネイティブ世代の10の特徴

タオバオと天猫(ティエンマオ、Tmall)プラットフォームは、昨年2022年の11月11日の独身の日セールの時に合わせて、00后創業者の10の特徴を発表している。

1)タオバオネイティブ世代:生まれた時にはECがあったECネイティブ世代である。

2)仏系:自分が満足することが重要で、必要以上の欲望を持たない

3)趣味をビジネスに変える

4)スモールスタート

5)仕入れ先を固定せず、新たな仕入れ先を発掘することが好き

6)新商品に強い興味がある

7)ライブコマースに軸足を置く

8)ブランド構築に熱心

9)知的所有権の意識が高い:自社オリジナルのIPは登録をして権利を確保する

10)一人で運営するのが好き

 

アリババ、大学で協働して00后起業を促している

タオバオ、Tmallでも00后=大学生の起業が増えていることは意識をしており、20以上もの00后起業支援プログラムを行なっている。大学とも協働して、タオバオを大学で学んだ知識を実践する場所として活用してもらおうという提携も進めている。すでに河北大学、黒竜江大学、江蘇大学など80の大学、専門学校がこの提携をしている。

00后がタオバオで自分の好きなものを販売し、00后が自分の好きなものを購入する。タオバオは創業20年を迎え、世代交代をしようとしている。